世界問題研究所所長の東郷 和彦教授による最終講義開催

2020.01.30

「日本発の『世界』思想~『和(やわらぎ)の外交』に向けて」

1月15日(水)に京都産業大学世界問題研究所※の所長を務める、東郷和彦教授の退職に伴い、一般公開型で最終講義を開催しました。講義には、学生、卒業生、教職員を中心に約200名が参加しました。学生・卒業生の中には、東郷先生の少人数科目で薫陶を受けた学生も多数含まれ、熱心にメモを取り、講演終了後には昼休みまで活発な質疑応答が行われました。また、教職員、学生及び卒業生のそれぞれから花束贈呈がされ、東郷先生の人柄を伺うことができました。

※京都産業大学世界問題研究所とは、本学が設置する6つの研究所のうちの1つで、国際政治、哲学、日本思想、経済、産業、社会等を包摂する学際的、総合的な共同研究調査を推進し、地域活性化に貢献するとともに、学術の進歩発展に寄与することを目的としています。

講演内容

東郷先生は外務省退官後、外国の大学での研究生活を経て2009年4月に京都産業大学に着任し、この3月に退職となります。東郷先生はここに至るまで様々な方々との「人の縁」に恵まれたと仰っていました。その上で、「母港」としての京都産業大学に何かを残したいと考えて、世界問題研究所長として、様々な専門の先生方と共同研究を行ってきました。
哲学分野の森哲郎先生からは禅の世界における「十牛図」を紹介され、その図が絶対無や無からの包摂ということを示していると痛感し、哲学的な観点から政治を見る視点を得たそうです。和(やわらぎ)の外交という概念もそこから来ていると仰っていました。
外交関係に目を向けると、「中国は敵ではない」という考え方がアメリカで少数派になるほど、昨今では米中対決が世界情勢を特徴付けています。
そうした環境下では「不寛容が良くないといって不寛容になってはいけない」という日本の「やわらぎ」の精神が重要となってくると考えています。ただし、「やわらぎ」は英語ではモデレーションであり、ハーモニー(予定調和)とは異なります。したがって、何のために戦うのか分からないと和らげることはできません。戦うことと和らぐことの関係を学生の皆さんは重視してほしい。それに加えて、人間関係における一期一会の重要性や、夢を持つことの素晴らしさを強調しておきたいと仰っていました。

受講生の感想

  • その国の歴史・文化・アイデンティティーがその国の外交において重要な役割を果たし、影響を及ぼすということが印象に残りました。
  • 外交という、国を代表して世界の未来を左右しかねない交渉に臨むには、国家の威信だけではどうにもならないことがあり、国益を守りつつ互いを認め合い譲歩する姿勢が大切だと知ることができました。
  • 今まで外交にあまり興味がありませんでしたが、現在に至るまでの日本の外交がどのように行われて、どのような結果になったのかといったことに関心を持ちました。
  • 大学での学びをこれから就職して仕事で生かすことも大切であるが、就職してからも学ぶことは多くその学ぶ姿勢を忘れてはいけないのであると知りました。
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