系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見!謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進

2019.11.08

理学部天文台
    京都産業大学理学部 米原 厚憲 教授らの研究グループは、大きな質量の系外惑星(ホット・ジュピター)において、生まれて間もない恒星の近傍をほぼ円軌道で公転するという新たな特徴を示す「KELT-24b」を新たに発見しました。 今回発見した「KELT-24b」を持つ恒星「KELT-24」は、この種のホット・ジュピターを持つ恒星の中で最も明るく、これまで十分に解明されていないホット・ジュピターの形成過程の謎に迫ることが期待されます。

本件のポイント

  • 本学神山天文台の荒木望遠鏡などによる観測から、「トランジット現象(*1、図1)」が観測される新たな系外惑星の存在と、その系外惑星の物理的性質が明らかになりました。
  • 新たに発見された系外惑星は、若い恒星の非常に近くを公転しているにも関わらず、その軌道がほぼ円軌道になっている。ホット・ジュピター(*2)は恒星近傍での形成が難しいが、遠方で形成して近傍まで移動する場合はその軌道が長い時間をかけて円軌道に変化すると考えられていることから、ホット・ジュピター形成過程の解明につながる重要な発見です。
  • この系外惑星をもつ恒星は、この種のホット・ジュピターを持つ恒星の中では最も明るいため、トランジット現象のより詳細な観測が可能である。トランジット現象の際には、恒星からの光の一部が惑星の大気を透過して地球に届くため、今後のより詳細な観測から、ホット・ジュピターの大気構造などがより詳しく解明されると期待されます。
*1 恒星の周りを公転している惑星が、ちょうど恒星と我々の間を通過する場合、恒星からの光の一部を惑星が一時的に遮る(蝕を起こす)ことで、恒星がわずかに、そして一時的に暗くなって観測される現象。通常惑星は、恒星の周りの同じ場所を公転しつづけるので、この現象が観測される天体は公転周期で繰り返しこの現象を示す。
*2 系外惑星の一種で、太陽系の木星(ジュピター)に匹敵する、あるいはそれ以上の質量を持つ惑星のうち、恒星の非常に近く(太陽系に置き換えると、一番太陽に近い惑星である水星よりもはるかに近く)を公転しているものをさす。恒星の非常に近くにいることから、恒星からの光によって強く温められ、惑星の表面温度は高温になっていると考えられる。

図1 「トランジット現象」の概念図。恒星(大きな青色の丸)の前を惑星(小さなオレンジ色の丸)が左から右に横切っていくと、横切り初めの時刻(1)から惑星が恒星からの光を遮ることで、恒星が暗く見え始める。惑星の姿が恒星の中におさまった時刻(2)以降は、惑星によって隠されている領域の面積が変化しないため、恒星は同じような暗さのままでいるが、惑星の姿が恒星の中から出始める時刻(3)以降は、恒星からの光を遮る量が徐々に減るため恒星は徐々に明るく見えるようになる。そして、惑星の姿が恒星から完全に出ていく時刻(4)になると、恒星はもともとの明るさに見える。

内容

1.背景

 2019年のノーベル物理学賞は、1995年に恒星まわりの太陽系以外に初めて惑星(以下、系外惑星)を発見したMichel MayorとDidier Quelozに贈られることが決まりました。系外惑星の初めての発見から20年以上経った現在までに、4000個を越える系外惑星が発見されてきました。系外惑星はまさに多種多様で、宇宙には太陽系とは全く異なる惑星の世界が広がっていることが明らかになり、発見された系外惑星の存在を理論的に説明することで、惑星の形成・進化(生い立ち)について新たな知見が得られるようになりました。  その中でも、最初に発見された系外惑星のように、恒星の非常に近くを公転する巨大なガス惑星(通称:ホット・ジュピター)は、その形成・進化の過程が太陽系とは明らかに異なると考えられています。ホット・ジュピターは、何らかの形成メカニズムによって恒星近傍で誕生したか、あるいは、遠方で形成された後に何らかの力学的メカニズムによって恒星近傍まで移動してきたか、実際にどのような過程を経て現在の場所に存在しているのかが、明らかにされていませんでした。

2.研究手法・成果

 本研究ではまず、新たな系外惑星を探すための観測プロジェクト「KELTサーベイ」において系外惑星候補を選び出しました。その後、京都産業大学神山天文台の荒木望遠鏡を用いた観測(図2、図3)などによるトランジット現象の詳細な測光観測(*3)、ならびに、研究グループの分光観測(*4)から、系外惑星KELT-24 bという新たなホット・ジュピターを発見しました。更には、この系外惑星(KELT-24 b)と系外惑星が公転している恒星(KELT-24)について、以下のような物理的性質を明らかにしました。

  • 系外惑星KELT-24 bは、恒星KELT-24の手前を横切るため「トランジット現象」が観測される
  • 系外惑星KELT-24 bの質量は木星の5.18倍、半径は木星の1.272倍を示す
  • 系外惑星KELT-24 bの公転周期は5.55日と短く(軌道半径は0.07天文単位)、軌道の離心率は0.077(ほぼ円軌道)を示す。また、公転軸と恒星KELT-24の自転軸はほぼそろっている
  • 恒星KELT-24は、Vバンドでの見かけの等級が8.3等級と非常に明るい
  • 恒星KELT-24の年齢は7億8000万年程度とF型星(*5)としては若く、質量は太陽の1.460倍、半径は太陽の1.506倍を示す
特に重要なことは、KELT-24 bがまだ若い恒星の近傍にあるホット・ジュピターであるにも関わらず、特異な公転軌道を示していないこと、そしてKELT-24がこの種のホット・ジュピターを持つ恒星の中で最も明るいことにあります。

恒星の近くでは、固体の水(すなわち氷)が存在せず、恒星近傍の惑星は岩石を主な材料として形成されるため、あまり大きな質量の惑星を形成することが困難と考えられています。そこでホット・ジュピター形成過程として、恒星から離れた場所で形成された後、力学的メカニズムで恒星近傍まで移動してくることで説明できるのではないか、という考え方があります。ただし、その場合は一旦、離心率の大きな軌道になるなど特異な公転軌道を示した後、長い時間をかけて円軌道に移っていく必要があります。今回発見されたKELT-24 bの場合、円軌道に移り変わるまでにかかる時間は127億年程度かかると推定されることから、遠方で形成された巨大ガス惑星を若い恒星の近傍に移動させ、ほぼ円軌道にするための時間が十分にありません。つまり、今回の発見は、ホット・ジュピターの形成の過程を解明するうえで、重要な意味をもつ研究成果であると言えます。

さらに、今回発見したホット・ジュピターを持つ恒星KELT-24は、近傍に同種のホット・ジュピターをもつ恒星の中では最も明るく、より詳細な観測が可能となる恒星です。これはすなわち、トランジット現象の際に手前を横切っている系外惑星の大気を透過して我々に届いた光を最も詳しく調べられることから、KELT-24 bは同種のホット・ジュピターの中で、大気構造などの詳細は解明することが可能な系外惑星であるとも言えます。
図2 天体から届く光の色の成分を正確に分析するための観測のこと。実際に神山天文台・荒木望遠鏡による「トランジット現象」の観測で得られた、恒星KELT-24とその周辺の天体の画像。デフォーカスと呼ばれる、わざと像をぼやかす特殊な観測方法でデータを取得したため、恒星の像はどれもドーナツ状の形状をしている。図中のターゲットの右下などにある暗い恒星の像などで、ドーナツ状の形状がよく分かる。
図3 系外惑星KELT-24 bによる恒星KELT-24の「トランジット現象」の際に、神山天文台・荒木望遠鏡によって観測された明るさの変化。上段(赤色の点)には、今回の観測ターゲットであるKELT-24の明るさの変化が、下段(青色の点)には「トランジット現象」が起きない比較星(通常の恒星)の明るさの変化がそれぞれ示されている。なお、それぞれの明るさの変化については、参照星(比較星とは別の通常の恒星)を基準として変化量を求めている。約0.25日(6時間)の観測時間の間で、比較星はほとんど明るさが変化していないのに対し、KELT-24は横軸が0.02付近から暗くなり始め(系外惑星が恒星の手前を横切り始め)、横軸が0.20付近で元の明るさに戻っている(系外惑星が恒星の手前を横切り終わる)。

3.今後の展望

 ホット・ジュピターは惑星ですが、質量がほんのわずか大きくなると褐色矮星と呼ばれ惑星とは区別される、いわば惑星と恒星の境目にある天体でもあります。この2つの天体の境目はどこにあるのかなど、2つの天体の本質的な違いについては諸説あります。今後、トランジット現象時における様々な観測によって、惑星と褐色矮星の違いについて観測から新たな知見が得られるのではないかと期待されます。 

4.論文について

タイトル:
“KELT-24 b: A 5 MJ Planet on a 5.6 day Well-aligned Orbit around the Young V=8.3 F-star HD 93148”,
(KELT-24 b: 若くてV等級が8.3等級のF型星 HD93148の周りで、5.6日周期のよくそろった公転軌道をもつ5倍の木星質量の惑星)
著 者:
米原 厚憲(京都産業大学)
西海 拓(京都産業大学・国立天文台)
Joseph E. Rodriguez (ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)ほか
掲載誌:
Astronomical Journal (2019), 158号, 197(2019年10月23日発行)
お問い合わせ先
内容については:京都産業大学 理学部 米原 厚憲 教授
〒603‐8555 京都市北区上賀茂本山
E-Mail: yonehara@cc.kyoto-su.ac.jp

取材については:京都産業大学 広報部
Tel.075-705-1411
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