理学研究科大学院生 西海 拓さん、理学部 米原教授らの研究グループが、若い恒星のまわりにある新たな系外惑星を発見

2019.11.11

内容

西海 拓さん(本学大学院 理学研究科 物理学専攻 博士前期課程2年)、米原 厚憲教授(本学理学部 宇宙物理・気象学科)と、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのJoseph E. Rodriguez博士らの研究グループは、若い恒星KELT-24の非常に近くに、大きな質量の系外惑星(ホット・ジュピター、*1)KELT-24 bを新たに発見しました。
この系外惑星のトランジット現象(*2、図1)を本学神山天文台の荒木望遠鏡などで観測(図2、図3)、この惑星系について様々な特徴が明らかになりました。

今年のノーベル物理学賞は、1995年にMichel MayorとDidier Quelozによる恒星まわりのホット・ジュピターを初めて発見したことに対して贈られます。ただこのホット・ジュピターがある場所は、惑星形成の材料となる固体成分が少なく、その場で巨大な惑星を作ることは難しいと考えられています。この困難を克服するため、一旦恒星から離れた場所で巨大な惑星を作り、後に恒星近くに移動したとする形成過程が考えられています。この場合、力学的メカニズムによって、ホット・ジュピターは恒星近くに移動した後、長い時間をかけ円軌道に近づくと考えられています。
しかし今回見つかったKELT-24 bの場合、若い恒星のまわりにあることから円軌道になるために十分な時間が無いにも関わらず、ほぼ円軌道にあります。この研究成果は、ホット・ジュピターの形成過程解明につながる重要な発見と言えます。

またKELT-24は、この種のホット・ジュピターを持つ恒星の中では最も明るいことから、これまでにない精度で大気の構造を調べることが可能です。ホット・ジュピターは惑星ですが、ほんのわずか質量が大きいと褐色矮星と呼ばれる天体になります。惑星と褐色矮星の本質的な違いについては諸説ありますが、今後の観測で大気構造の詳細に明らかにされることで、その違いについて新たな知見が得られるのではないかと期待されます。

西海さんは「2018年4月にTESSと呼ばれる新たな系外惑星を発見するための衛星が打ち上げられました。この衛星によって多くの新たな系外惑星候補が見つかると期待されるので、今後も神山天文台などを用いて新たな系外惑星の発見に貢献できればと考えています。」と、
また米原教授は「観測当日、西海さん製作のプログラムでトランジット現象による非常にわずかな減光がリアルタイムで見えてきた時には、とても興奮しました。元号が令和に移ってから初めての神山天文台での観測が、このような重要な発見に繋がったことを非常に嬉しく思います。」と語ってくれました。

本研究の詳しい内容については、以下の本学プレスリリースをご覧ください。

注釈

*1

太陽系の木星(ジュピター)に匹敵する、あるいはそれ以上の質量を持つ惑星のうち、恒星の非常に近く(太陽系に置き換えると、一番太陽に近い惑星である水星よりもはるかに近く)を公転しているものをさす。恒星の非常に近くにいることから、恒星からの光によって強く温められ、惑星の表面温度は高温になっていると考えられる。

*2

恒星の周りを公転している惑星が、ちょうど恒星と我々の間を通過する場合、恒星からの光の一部を惑星が一時的に遮る(蝕を起こす)ことで、恒星がわずかに、そして一時的に暗くなって観測される現象。通常惑星は、恒星の周りの同じ場所を公転しつづけるので、この現象が観測される天体は公転周期で繰り返しこの現象を示す。

図、その注釈

図1

「トランジット現象」の概念図。恒星(大きな青色の丸)の前を惑星(小さなオレンジ色の丸)が左から右に横切っていくと、横切り初めの時刻(1)から惑星が恒星からの光を遮ることで、恒星が暗く見え始める。惑星の姿が恒星の中におさまった時刻(2)以降は、惑星によって隠されている領域の面積が変化しないため、恒星は同じような暗さのままでいるが、惑星の姿が恒星の中から出始める時刻(3)以降は、恒星からの光を遮る量が徐々に減るため恒星は徐々に明るく見えるようになる。そして、惑星の姿が恒星から完全に出ていく時刻(4)になると、恒星はもともとの明るさに見える。

図2

天体から届く光の色の成分を正確に分析するための観測のこと。実際に神山天文台・荒木望遠鏡による「トランジット現象」の観測で得られた、恒星KELT-24とその周辺の天体の画像。デフォーカスと呼ばれる、わざと像をぼやかす特殊な観測方法でデータを取得したため、恒星の像はどれもドーナツ状の形状をしている。図中のターゲットの右下などにある暗い恒星の像などで、ドーナツ状の形状がよく分かる。

図3

系外惑星KELT-24 bによる恒星KELT-24の「トランジット現象」の際に、神山天文台・荒木望遠鏡によって観測された明るさの変化。上段(赤色の点)には、今回の観測ターゲットであるKELT-24の明るさの変化が、下段(青色の点)には「トランジット現象」が起きない比較星(通常の恒星)の明るさの変化がそれぞれ示されている。なお、それぞれの明るさの変化については、参照星(比較星とは別の通常の恒星)を基準として変化量を求めている。約0.25日(6時間)の観測時間の間で、比較星はほとんど明るさが変化していないのに対し、KELT-24は横軸が0.02付近から暗くなり始め(系外惑星が恒星の手前を横切り始め)、横軸が0.20付近で元の明るさに戻っている(系外惑星が恒星の手前を横切り終わる)。
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