理学部物理科学科 談話会「ソフトマターの世界」を開催しました

2019.05.29

2019年5月29日(水)に物理科学科談話会(※)として、本学の理学部物理科学科の岩下 靖孝 准教授によるセミナー「ソフトマターの世界」がおこなわれました。

セミナーの中で岩下准教授は、ソフトマターが身近な物質であり、いろいろなところで役立っていることを分かりやすくお話しいただきました。ソフトマターとはゼリーやチーズのような食品、スマホやパソコンに使われている液晶、プラスチックの材料である高分子などの柔らかい物質の総称です。その物質としての特徴を、カッテージチーズを例に説明されました:牛乳の中には、脂肪やタンパク質の柔らかい粒が漂っています。この粒はマイクロメートル(1mmの千分の一)と小さいため肉眼では全く見えませんが、原子や分子よりは遥かに大きいという「中間的(メソスケール)」のサイズを持っています。牛乳に酢などの酸を加えるとこのつぶつぶの間の相互作用が変化し、くっついて柔らかい塊となります。それがカッテージチーズです。その柔らかさや白さは、メソスケールのつぶつぶから構成されていることに由来します。上述のように世の中には様々なソフトマターがありますが、その内部にあるメソスケールの構造が柔らかさや色などの特徴(物性)を決めているのです。
またメソスケールの粒は原子や分子よりはるかに大きいため、複数の物体を組み合わせた様々な形を自由に作ることもできます。これを上手く利用すると、微生物のように自身の力で運動する(「泳ぐ」)粒を作ることができます。このような粒やその集団はアクティブマターと呼ばれ、ソフトマターや非平衡物理学の最先端の研究テーマとなっています。岩下准教授は棒状の粒子が寝たまま泳いだり、立って泳いだりといった面白い運動を見せることを紹介されていました。

このように、ソフトマターは非常に身近な物質であると同時に、物理学の最先端のテーマの一つにもなっていることから、談話会には教員・大学院生・学部生が数多く参加し、質疑応答や様々な議論がなされました。

(※)談話会は、学内教員や研究実績のある研究者を招聘して定期的に講演会を行うことで、理学の最先端の研究内容に触れ、研究意欲の促進、教育・研究の質的向上を図ることを目的として実施しています。参加は、教員だけでなく、学部生、大学院生、その他一般の方々も可能です。
セミナーの様子
アクティブマターの例:自ら泳ぐ棒状粒子が立ち上がる様子
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