生命科学部 本橋 健 教授がPCRクローニングを効率的に行うための新しいベクターを開発しました

2019.04.24

TAG:

ニュース研究総合生命科学部生命科学部

生命科学部 先端生命科学科の本橋 健 教授は、PCRクローニングを効率的に行うための新しいベクターを開発し、成果を発表しました。本研究の成果は、英国科学誌Scientific Reports (Springer Nature社)に2019 年4月23日付で掲載されました。

本研究のポイント

  • TA-クローニング、平滑末端クローニングという2つのPCRクローニングを効率的に行うベクターを新しく開発した
  • これらのベクターを使用すると、切断していない環状ベクターを用いてPCR産物を効率良く直接クローニングできる
  • これらのベクターは米国のプラスミドレポジトリーであるAddgeneに寄託され、世界中の研究者が自由に入手できる体制を整えた

研究背景

遺伝子工学技術は、現代の生命科学分野の研究で使われる技術です。遺伝子工学技術のひとつであるポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction, PCR)は、特定の遺伝子を増幅する遺伝子工学技術の基本であり、生命科学の研究を進めるために必要な技術です。一般に、PCRにより増幅した遺伝子はベクターと呼ばれるDNAに組み込み、様々な研究に用いられます。そのため、PCR増幅した遺伝子を効率的にベクターへ組み込むことは、生命科学の研究を進めるうえで重要であり、効率の良いクローニングベクターの開発は、遺伝子工学技術の進展に寄与します。

研究概要

本研究では、PCRクローニングを効率的に行うための3種類のクローニングベクターを新たに開発しました。

PCRにより増幅した遺伝子の組み込みには、大きく分けてTA-クローニング、平滑末端クローニングという2つの方法があります。遺伝子を増幅したDNAポリメラーゼの性質により増幅遺伝子が突出端の断片を生じる場合と、平滑末端の断片を生じる場合に対応するため、これら2つの方法が使われます。通常、これらの遺伝子をベクターに組み込む際には、その形状に合わせて、適切なクローニングベクターを選択し、組み込む必要があります(図1)。今回作成された3種類のクローニングベクターのうち2つは、この2種類の遺伝子断片を効率よくクローニングできるTA-クローニング用ベクター(pCRT)と平滑末端クローニング用ベクター(pCRZero)です(図2)。TA-クローニング用ベクターでは、Type IISと呼ばれる制限酵素を用いることで簡単にTA-クローニング用ベクターを調製できます。また、Type IIS制限酵素の他に、指示された制限酵素を加えて処理することで、目的遺伝子のクローニング効率を上げる工夫もなされています。平滑末端用のクローニングベクターには大腸菌致死遺伝子を利用しているため、クローニングの過程で行うスクリーニング作業を簡素化できます。これらに加えて、3つめのクローニングベクターとして、TA-クローニング、平滑末端クローニングという形状の異なる遺伝子断片のクローニングにひとつのベクターで対応可能なベクター(pCRZeroT)も開発しました(図2)。

これらの3種類のベクターを作成するとともに、今回開発されたクローニングベクターを用いて、PCRクローニングを簡便に行うためのプロトコールも開発しました。通常、遺伝子クローニングでは、ベクターと呼ばれる環状DNAのままではPCR増幅遺伝子断片を組み込むことはできません。増幅した遺伝子を組み込む場合には、環状DNAベクターの特異的な箇所を制限酵素により切断し、あらかじめ直鎖化しておく必要があります。今回開発したpCRZero、pCRZeroTでは、これらの環状DNAを事前に直鎖化することなく、環状DNAベクターとPCR増幅した遺伝子を混合し、環状DNAベクターの切断反応とPCR遺伝子断片との結合反応を同時に行うことにより、PCRクローニングできます。これは、3つのベクターのうちpCRZero、pCRZeroTでは大腸菌致死遺伝子を利用し、遺伝子断片が組み込まれていない空ベクターをもつ大腸菌は生育できないためです。

今回開発された3種類のクローニングベクターは、米国のプラスミドレポジトリーであるAddgeneに、ID:120274 (pCRT)、ID: 120275 (pCRZero)、 ID: 120276(pCRZeroT)として寄託され、世界中の研究者が自由に入手できる体制を整えました。

図1.PCRにより増幅した遺伝子断片のクローニング法
図2.開発した3種類のクローニングベクターの概要

謝辞

本研究は、文部科学省科学研究費 基盤研究C「葉緑体活性酸素種消去システムにおけるペルオキシレドキシンの役割」、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「植物における生態進化発生学研究拠点の形成 −統合オミックス解析による展開−」、および発酵研究所(一般研究助成)「微生物のもつシームレスクローニング活性を利用した新規シームレスDNAクローニングシステムの開発」の支援を受けました。

掲載論文

論文タイトル:A novel series of high-efficiency vectors for TA cloning and blunt-end cloning of PCR products.
掲載誌:Scientific Reports 9, 6417 (2019)
DOI: 10.1038/s41598-019-42868-6
和文タイトル:「TA-クローニングと平滑末端クローニングのための効率の高い新規ベクターシリーズ」
著者:Ken Motohashi(本橋 健、責任著者)
PAGE TOP