理学部数理科学科の東谷章弘准教授が「ダイマー模型とその変形理論」に関する共著論文を執筆

2019.03.11

研究成果

理学部数理科学科の東谷章弘准教授は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の中嶋祐介氏と共同研究を行い、ダイマー模型における局所変形である"deformation"を導入しました。そして、ダイマー模型における変形の理論に関する諸性質について述べた共著論文を執筆しました。

掲載論文

題目:Deformations of dimer models
著者:Akihiro Higashitani and Yusuke Nakajima

プレプリントはhttps://arxiv.org/abs/1903.01636でご覧いただけます。

研究を開始して2年、細かい議論をつめるのに非常に時間がかかりました。数学の論文としては比較的長編の40ページの論文が完成しました。

背景

ダイマー模型とは、2次元トーラス上に埋め込まれた二部グラフのことを指しますが、ダイマー模型は統計物理学から端を発した対象ですが、数理物理のみならず、表現論・代数幾何・ミラー対称性などの数学分野においても重要な数学的対象として、近年盛んに研究されています。ダイマー模型から、整凸多角形(頂点が整数点の凸多角形)を構成することができることが知られています。一方で、クラスター代数の理論が誕生して以来、“変異”(mutation)と呼ばれる操作が様々な分野と関連してしばしば登場し、特にFano多様体のミラー対称性の文脈において重要な操作としてFano多様体の変異が研究されています。そんな折、イギリス人研究者グループにより、整凸多面体における変異の理論が確立されました。これは、Fano凸多面体と呼ばれる特別な整凸多面体の変異とそれに対応するFano多様体の変異が対応する、ということを示唆した研究で、革新的な結果でした。

研究概要

今回の研究では、さらにダイマー模型の理論と変異の理論を関連付けるため、ダイマー模型における“変形”の概念を新たに導入しました。そして、その変形は、「ダイマー模型から整凸多角形を構成してそれを変異させたものと、ダイマー模型を変形させてそれに対応する整凸多角形を考えると、両者が一致する」という性質を満たすことが証明されました。ダイマー模型の理論も、変異の理論も、様々な分野において近年非常に注目されており、盛んに研究されています。この共同研究により、その両者をつなぐ理論が完成したので、今後様々な応用が期待されます。
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