理学部物理科学科の新山雅之准教授が他大学との共同研究で大面積で高時間分解能の荷電粒子検出器の開発に成功し、論文出版

2019.03.01

研究成果

理学部物理科学科の新山雅之准教授は京都大学、大阪大学等との共同研究で大面積で高時間分解能の荷電粒子検出器の開発に成功し、Nuclear Inst. and Methods in Physics Research, Aの論文として出版しました。

掲載論文

Title : A compensated multi-gap RPC with 2 m strips for the LEPS2 experiment
Authors: K. Watanabe, S. Tanaka, W.C. Chang, H. Chen, M.L. Chu, J.J. Cuenca-Garcia,
T. Gogami, D. González-Díaz, M. Niiyama, Y. Ohashi, H. Ohnishi, N. Tomida, M. Yosoi

Nuclear Inst. and Methods in Physics Research, A 925 (2019) 188–192

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168900219301895?via%3Dihub

背景

素粒子・原子核実験では陽子やパイ中間子、K中間子などの様々な荷電粒子が生成されます。荷電粒子の速度を測定し、荷電粒子の運動量の情報と合わせて質量を再構成することで、粒子の種類を識別する手法(飛行時間法)が広く使われています。高い時間分解能の検出器を用いることで、粒子の識別能力を向上させることができます。近年、高抵抗板検出器という50ピコ秒から100ピコ秒程度の時間分解能を達成する検出器が用いられてきましたが、信号読み出し電極が数平方センチメートル程度の大きさのものが多く、大面積を覆う検出器は読み出し回路のチャンネル数が膨大になることが問題でした。また、これまでの検出器では時間分解能を向上させるために信号の電荷量の情報を用いるため時間測定の回路に加えて電荷測定用の回路を用意する必要があり、コスト面で問題になっていました。

研究概要

新開発した高抵抗板検出器の全体写真
今回の研究では長さ2メートル、幅2.5センチメートルの長い読み出し電極を持ち、少ないチャンネル数で大面積を覆うことができる高抵抗板検出器を開発しました。実験で必要とされる99 %以上の検出効率と、60ピコ秒の時間分解能を達成しました。これは大面積型の飛行時間検出器としては世界最高性能です。また、信号が長い電極を伝播する際に起こる時間分解能の劣化を抑えるために、電極間の誘電物質を最適化し、電荷量の情報を用いずに80ピコ秒の時間分解能を達成しました。この成果は世界初の結果であり、素粒子・原子核実験やミューオグラフィー(ミュー粒子を用いた透視)などへの応用が期待できます。
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