オルガネラ(細胞小器官)間相互作用の可視化に成功~細胞内構造のこれまでの概念を一新~

2018.04.19

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メディア掲載研究総合生命科学部プレスリリース

本件のポイント

  • オルガネラ(※1)同士の相互作用部位(コンタクトサイト)を、生きた細胞内で可視化することに成功した。
  • 本研究によって、1つのオルガネラが複数の異種オルガネラと同時に相互作用する可能性が世界で初めて示された。
  • 本研究の利用により、オルガネラ間の相互作用自体の解明はもちろん、アルツハイマー病などオルガネラ間の相互作用異常が報告されている神経変性疾患の病態解明の進展が期待される。
私たちの体を構成する細胞の中には、オルガネラと呼ばれる脂質の膜で囲まれた細胞小器官が発達しています。オルガネラは膜内に特定の酵素群を隔離、濃縮することで独自の機能を効率よく安定的に発揮するので、互いに混ざり合わないように、独立して存在するとこれまで考えられてきました。しかしながら最近の研究により、オルガネラ同士が結合し、物質をやり取りしながら機能する可能性が指摘され始めました。
山形大学(学長:小山 清人)の田村 康准教授、京都産業大学(学長:大城 光正)の遠藤 斗志也教授らの研究グループは、スプリットGFP(※2)と呼ばれる分断された蛍光タンパク質を利用することで、複数の異種オルガネラ間の相互作用部位(コンタクトサイト)を、生きた細胞内で可視化することに世界で初めて成功しました。現在オルガネラ間の結合因子は、ほとんど実態がわかっていません。この実験系の確立により、その因子の解明が進むと期待されます。またオルガネラ間相互作用の生理的意義(役割)の解明や、オルガネラ間の相互作用異常が報告されている神経変性疾患の病態解明への応用が期待されます。本研究の成果は2018年4月18日付「Scientific Reports」誌にオンライン掲載されました。

背景

近年の研究により、これまで独立に存在すると考えられてきたオルガネラが互いに相互作用し、 2つのオルガネラ間で物質をやり取りしながら機能することが、オルガネラの機能発現に重要であることが明らかになってきました。しかし異種オルガネラ同士がどのような組み合わせで相互作用するのか、その全容は不明でした。

研究手法・成果

スプリットGFP(※3)分子を、異なる2つのオルガネラ膜表面に集まるように工夫した人工タンパク質を設計しました。この2つの人工タンパク質を強制的に作り出す細胞を作製し、蛍光顕微鏡下で観察したところ、複数のオルガネラ(ミトコンドリア・小胞体(核)、液胞、ペルオキシソーム、脂肪滴)のいずれの組み合わせにおいても粒状のGFP蛍光が検出されました。このスプリットGFPに由来する蛍光が、異なる2つのオルガネラ上に観察されたこと(図1)、また既知のオルガネラ結合因子と同じ場所に観察されたこと(図2)などから、スプリットGFPによってオルガネラ間コンタクトサイトが可視化されたことが分かりました。

今後の展開

オルガネラ間相互作用の研究は、ごく最近分かってきた非常に新しい研究分野で、まだ分かっていないことがほとんどです。今回の研究によって、これまでに報告されている以上に異種オルガネラ間でコンタクトサイトが形成されることが示唆されました。今後、オルガネラ間を結合させる因子の実態や、オルガネラ間コンタクトサイトがどのような役割を果すのかなどを明らかにしていく必要があります。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSと言った神経変性疾患の細胞では、ミトコンドリアと小胞体間のコンタクトサイト形成に異常が生じている(亢進している)ことも報告されており、オルガネラ間相互作用の研究はヒトの疾患の病態解明及び治療法開発に大きな意味を持つ重要なトピックになります。

備考

本研究は、JSPS科研費 新学術領域研究「細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読」(研究代表:清水 重臣 教授(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 病態細胞生物学))および特別推進研究(15H05705 代表・遠藤 斗志也)の一環として行われました。

用語・事項の解説

1.オルガネラ

核、小胞体、ミトコンドリア、液胞、葉緑体などに代表される真核細胞内に発達した膜構造の総称で細胞小器官とも呼ばれる。エネルギー生産や、タンパク質合成、タンパク質分解、光合成などを行うオルガネラが存在する。

2.GFP

Green Fluorescent Proteinの略でオワンクラゲから単離された緑色蛍光タンパク質。

3.スプリットGFP

GFPタンパク質を2つに分断し、蛍光を出せなくした2つのタンパク質断片。これらのタンパク質断片が十分に近い距離に近づいた時にGFP分子が再構成され、蛍光を発するようになる(顕微鏡で観察できるようになる)。これまではタンパク質間相互作用の検出などに利用されてきた。

掲載雑誌

雑誌名: Scientific Reports
著者: 柿元 百合子1、田代 晋也1、 小島 理恵子1、 両角 勇紀1、 遠藤 斗志也2、 田村 康1
題名: Visualizing multiple inter-organelle contact sites using the organelle-targeted split-GFP system
所属: 1. 山形大学理学部 2. 京都産業大学総合生命科学部

お問い合わせ先

(研究内容について)
山形大学学術研究院 准教授(分子細胞生物学)田村 康
TEL  023-628-4604  メール tamura@sci.kj.yamagata-u.ac.jp
京都産業大学総合生命科学部 教授 遠藤 斗志也
TEL  075-705-1508  メール tendo@cc.kyoto-su.ac.jp
(報道について)
山形大学総務部広報室   TEL  023-628-4008  メール koho@jm.kj.yamagata-u.ac.jp
京都産業大学広報部    TEL  075-705-1411  メール kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp
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