WINEREDが南天へ!—ヨーロッパ南天天文台と神山天文台の間で研究協力に関する覚書—

2017.01.18

南半球から見る星空(南天)は、日本からは見ることが困難な、魅力的な天体にあふれています。南天には南十字星といった有名な星座があるだけでなく、大・小マゼラン雲、そして天の川のもっとも星が密集した銀河中心方向の星々など、天文学的に非常に重要な天体が数多く存在しているのです。このたび、神山天文台は、ヨーロッパ諸国が運営するヨーロッパ南天天文台ESOの La Silla天文台(チリ共和国)と国際的な研究協力に関する覚書を交わしました。この覚書により、神山天文台が独自に開発した世界に誇る高性能・近赤外線高分散分光器WINEREDが海を渡り、ESO La Silla天文台に設置された口径3.6mのNTT望遠鏡に取り付けて研究観測を行う事となりました。NTT望遠鏡では日本から見ることができない上述のような南天の天体が観測できるだけでなく、神山天文台の荒木望遠鏡の約8倍の集光力を持つNTT望遠鏡を用いることで、より遠く・より暗い天体を観測できるようになります。

神山天文台では、高い装置開発技術を背景に独自の高性能天体観測装置を開発しています。その独自性を活かし、京都市内に設置した口径1.3mという(天文学研究目的ではけっして大きいとは言えない)荒木望遠鏡でも、様々な成果を上げてきました。なかでもWINEREDと名付けた高性能・近赤外線高分散分光器では、宇宙空間に存在する正体不明の複雑な有機分子の発見など、世界の大望遠鏡を相手に目覚ましい成果を上げています。この高性能な装置を、より観測に適した(晴天率が高く湿度が低い)場所に設置された大型の望遠鏡に取り付ければ、いまだ世界のどの研究者も見たことがない、新しい宇宙の姿を明らかにできると期待されます。
こうした構想のもと、神山天文台・赤外線高分散ラボ(文科省・私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の採択課題)では、海外適地に設置された大型望遠鏡による観測実現への道を模索してきましたが、このたび、ヨーロッパ諸国が運営する「ヨーロッパ南天天文台(ESO)」の持つ観測所のひとつLa Silla 天文台(チリ)にある口径3.6mのNTT (New Technology Telescope)望遠鏡にWINEREDを取り付けて観測を実施するという機器設置・研究協力に関する覚書を、京都産業大学とESO La Silla天文台との間で交わしました。
WINEREDは2016年11月には分解・梱包されて、一路、飛行機でチリに輸送され、神山天文台スタッフによる現地での組立て・調整を経て、2017年1月10日、11日にテスト観測に成功しました。WINEREDが想定通りの性能を発揮できていることを確認しています。今後、研究チームは2017年2月に本格的な観測を実施する予定となっており、セファイド型変光星と呼ばれる変光星を多数、観測して、私たちの太陽系が含まれる銀河系の成り立ちに迫ります。このセファイド型変光星は、京都産業大学の創立者である荒木俊馬博士が詳しく研究を行っていた特殊な天体です。創設者の夢を神山天文台が引き継ぎ、世界へと躍進します。
NTT望遠鏡ナスミス焦点に設置されたWINERED
テスト観測中の観測室の様子(2017年1月11日)
La Silla天文台から見た天の川(新井研究員撮影)
口径3.6mのNTT望遠鏡。建物手前に写った人の大きさからも、望遠鏡の巨大さが分かる。この望遠鏡にWINEREDを取り付けて観測が実施される。(写真:ESO/C. Madsen)
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