総合生命科学部 板野 直樹教授らの国際共同研究チームが、 乳がん幹細胞抑制の鍵を握る糖代謝リプログラミングの機構を解明

2016.11.15

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メディア掲載プレスリリース
総合生命科学部のChanmee Theerawut研究員、板野直樹教授らを含む京都産業大学の研究チームは、チェンマイ大学医学部、藤田保健衛生大学、弘前大学医学部、理化学研究所との共同研究により、糖代謝リプログラミングを起点とした細胞内シグナルが、がん幹細胞性の獲得・維持に中心的な役割を果たすという新たな機構を解明しました。 本研究成果は2016年11月11日付で、米国科学雑誌Journal of Biological Chemistryにて公開されました。

研究の背景

がんの部位別統計(2012年統計)によると、乳がんはがんのなかでも日本人女性の罹患率トップであり、1975年以降増加傾向が続いています。また、乳がんで死亡する女性の数も年々増加する傾向にあり、2015年統計では年間約13,000人が亡くなっています。今では診断技術や抗がん剤の開発が進み、寛解するケースも増えています。しかし一方で、進行性乳がんの根治は今なお困難とされ、再発・転移率は高く、予後は不良です。 近年、多くの癌腫において、「がん幹細胞(がん源細胞ともいう)」の存在が報告されています。このがん幹細胞は、従来の化学療法や放射線治療に抵抗性を示すことから、転移や再発を引き起こす最大の要因と考えられ、根治的治療の標的として重要視されています(図1)。つまり、『がん幹細胞を完全にコントロールすることができれば、がんを根治することも可能』と考えられるのです。しかしながら、がん幹細胞を制御する機構については、十分な解明に至っていません。
図1.がん幹細胞の抗がん剤抵抗性とがん再発の概念図
化学療法や放射線治療に耐性をもつがん幹細胞は、治療後も残存し、自己の複製とがん細胞への分化によってがんの再発を引き起こす。再発後のがん組織では、がん幹細胞が高頻度で存在することで治療抵抗性となると考えられる。

研究内容と展望

今回研究チームは、乳がん幹細胞に着目し、糖代謝プログラムの変化について質量分析による解析を実施しました。その結果、糖代謝の中心プログラムであるヘキソサミン合成経路において、その代謝流束が著しく加速していることを見出しました。さらに、この糖代謝プログラムを正常化すると、がん幹細胞性が減弱することも明らかにしました。
進行性乳がんの臨床病理研究では、ヘキソサミン合成経路に関連する酵素の発現と予後不良との相関が示されていましたが、がん幹細胞におけるヘキソサミン合成経路の役割は解明されていませんでした。今回の研究により、がん幹細胞の維持に重要なHIF-1シグナルの発信に、ヘキソサミン合成経路が深く関与していることがはじめて明らかになりました(図2)。このことは、がん治療の観点からとても重要な発見です。 本研究の成果は、将来、がん幹細胞制圧技術の開発につながる可能性があり、その技術をがんの根治的治療法として展開するための基盤となりえます。
本研究は、日本学術振興会科学研究費と東京生化学研究会国際共同研究助成金の支援を受けて行われました。
図2.乳がん細胞における糖代謝リプログラミングが、がん幹細胞性の獲得・維持に働く機構の概念図
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