むすびわざ講座 教養コース家族をめぐる法的諸問題」開講

2016.06.18

6月11日・18日に、むすびわざ館で、生涯学習むすびわざ講座 教養コース「家族をめぐる法的諸問題」を開講しました。

民法・家族法を専門とする法学部 山口 亮子 教授が講師となり、近年問題となっている児童虐待・ネグレクトやドメスティックバイオレンスといった、「家庭」という親密圏に潜在する弱者と強者などの家族の問題を「家族法」の視点から考察しました。

1日目の講義では、「親族法」が規定されている「民法」について、戦前・戦後の改正点や明治から改正のない規定も残る現行法が、現代においてどのように解釈されているのかを考察していきました。
現行法における、離婚後の女性の再婚を6カ月間禁止する規定の違憲性や、再婚禁止期間短縮の法改正について解説され、また、離婚後の単身世帯の貧困率について、日本は国際的にみると子供の貧困率が平均よりも低く、母子家庭の子どもの貧困率についてはワースト1位であると、実情を解説しました。
山口教授は、単身世帯の子どもの貧困率の高さには、日本独自の制度である「協議離婚」の際に、養育費や財産分与、面会交流といった重要事項についての十分な取り決めがなされていないことが背景にあると、指摘されました。

2日目の講義では、諸外国の家族法と日本の家族法を比較し、児童虐待・ネグレクトの現状や離婚に伴う「子」の奪い合いなどについて、実際の判例をあげ解説されました。
近年、増加傾向にある国際結婚・離婚に伴う国際的な「子」の奪取事案に関する条約である「ハーグ条約」について、基本的な考え方が「子にとっての利益・安定性」であることや、あくまでも民事的取扱いでしかない「ハーグ条約」の問題点などが解説されました。
また、児童虐待・ネグレクトの裁判において、フロリダ州では州福祉事務所のケースワーカーなどの専門家が多数参加するケースや、当事者である子供が出廷するようなケースもあると話されました。子供、親、州福祉事務所それぞれに代理人がつくなど、日本とは違った裁判の様子も紹介されました。

参加者からは「弱者である子供の現代の現状がわかった」「法律は学生時代に学んだ以来だが、今回受講して、人生経験を経た今、やっと身近なものだと実感した」「日本国内だけでなく、法の解釈には国際的な状況も影響することが意外だった」などの感想が寄せられました。
 
≪1日目≫ 
「日本の家族法」
① 日本の親族法  ② 離婚と子ども
≪2日目≫ 
「世界の家族法」
① ハーグ子奪取条約  ② 日米の児童虐待対応の法制度
実際の事件の経過を説明する山口 亮子 教授(法学部)
国際結婚・離婚による子の奪取について解説されました
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