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サイエンス若者の可能性

「生命科学」と「短歌」を両立する《おもろい》の追求

  • 総合生命科学部
    永田 和宏教授

本学で教鞭をとる永田教授は、細胞生物学者である一方、歌人としても活躍している。永田教授がうみだすのは、学生たちの可能性を伸ばす場。理系だから、文系だから、と自分の実力や限界を決めつけず、一歩踏み出す勇気を持つことこそが興味と学びをむすびつけ、世界を広げる第一歩になるのである。

研究者として

細胞生物学者としては、どのような活動をされているのですか?

私が行っているのは、生命の一番大切な分子であるタンパク質の品質管理の研究です。研究の中で新しいタンパク質を発見したり、働き方を見い出したりしています。これらの研究は、タンパク質が適切に処理されないことで起こる、アルツハイマー病など神経変性疾患病の解決策にもなり得るものなんですね。
こう聞くと、とても難しいことをしているように感じると思います。実際多くの学生は、「最先端の仕事は選ばれた人にしかできない」「自分とは別世界の人間だ」と思っている。けれども決してそんなことはなく、可能性は誰にでもあるものなんです。まず疑問持つこと。そしてそれを解いてやろう、と思うこと。それだけで可能性はいくらでも広がるものです。若い人達にそういう場を与えることが、私の仕事だと思っています。学生の皆さんは、大学に入るまでは「一つの決まった答え」に向かって勉強してきたはずです。大学入試も答えは一つしかない。しかし、社会に出ると決まった答えのない問題ばかりですよね。先生のような、答えを知っている人も必ずしもいるとは限らない。そんな中で自分なりの答えを見つけなくてはならないのだということを大学で感じてほしいです。大学での4年間は社会に出てから、自分自身で答えを探し、見つけていくための準備期間なのです。
私自身も分からないことはまだまだたくさんありますが、そういったものに触れることが楽しいと感じます。遅くまで学生と一緒になってディスカッションすることもしばしば。科学の醍醐味は議論ですからね。話し合いの場を持たせて、いろんな可能性や方向性を示し、研究を生きたものに導くのが私たち教員の役割だと思っています。

歌人として

歌人としても広く活躍されていますが、そのきっかけは?

初めて詠んだのは高校のころ。国語の時間に読んだ2首がたまたま賞を獲ってしまったんです。その時はそれで満足してしまった。簡単だ、と思ってしまったんですね。その後大学に入って短歌会というものを見つけて。経験も実績もあったし、またやってみようと思ったのがきっかけです。歌人である恋人に出会ったこともあり、とことんのめりこみました。それからはずっと歌を詠み続けています。

科学と歌という全く違う2つのものを両立するというのはいかがでしたか?

科学との「両立」はとても難しかったですね。研究はゴールがないものですし、どこまでやっても終わりがない。その中で別のことをやっているというのは後ろめたい部分もはじめはありました。50代半ばになって、ようやくそれで良かったんだと思えるようになりました。一人の人間が、全く違う2つのことを同時にやっている。それが私にとっては良かったのだと今になって思います。全然違うことですが、どちらに対しても全力で取り組めました。
自分の分かっていないこと、未踏の領域を目指すという繊細さは、歌の世界にも科学にも共通することではないかと思います。サイエンスはロジック、詰め方が大事ですが、それだけではなく、どこかで「おもろい」と思う、興味を持てるポイントがあるはずなんです。これは歌にも共通していて、例えば景色を見ていても「あ、これおもろいな」と思うと、それはロジックを越えて惹きつけられてしまいますよね。そういうものが私の中ではつながっているのかもしれないですね。ここでいう「おもろい」は「面白い」ではないんです。京都弁でいう「おもろい」に近いニュアンス。もっと感性やひらめきに近い、直感的に感じるものなのだと思います。

むすぶ人として

永田先生がこれまで「むすんだ」という経験はなんですか?

やはり学生たちを科学に目覚めさせる、科学の世界に引き込むことですね。いかに面白い世界なのかということを伝え、触れてもらうことで、彼ら自身が自分の可能性に気付いてほしいと思っています。
歌集を出版しているのですが、これらの本は、歌を詠んだことのない人々に「ことばにはこんなにも力があるんだ」ということを発信していますし、「タンパク質の一生」という本も出しています。こちらはサイエンスを、もっと一般の人にも知ってもらいたいと思って著しました。こういった活動を通して、一般の人々にも世界を広げるきっかけを与えていきたいと思っています。学生に限らず、まだ面白さに気づいていない若者たちの世界を広げ、自分の可能性に気付いてもらうことが、私にとっての「むすぶ」経験ですね。

1月から始まる特別対談シリーズ「マイ・チャレンジ」への意気込みをお聞かせください。

今回お話しいただくゲストの方々は、一般から見れば超人に近い、雲の上の人のように思ってしまう人たちばかり。しかし彼らも決してもともと特別な人間として生まれてきたわけではない。彼らが違うのは、どこかで「一歩踏み出した」ということだけなんです。対談では、そういった「踏み出した」経験であったり、挫折体験や悩んだこと・不安だったことなどをクローズアップして話していただく予定です。これらの話を通して、彼らも自分と同じなのだということ、一歩踏み出しさえすれば世界が始まるのだということを感じてもらいたいと思っています。これから新たな世界に飛び込んでいく高校生の方にもたくさん来てほしいですね。

では、高校生の皆さんへメッセージをお願いいたします。

先程も言いましたが、自分の限界を決めつけず、挑戦してみることが一番大切です。誰にでも大きな可能性はあるのだと、大学に来て実感してほしいと思います。数字で測れるような、偏差値のようなものはちっぽけなものでしかないのだと。「自分はこの程度だ」と、自分自身で狭く規定してしまわないこと。思い込んでしまわないこと。高校までの成績が悪くたって、これから生きていく自分の人生の中では何の関係もない。高校までの評価は、一般性のなかで客観的に測れるものについてだけしか評価していない。実は数字で測れないものの中にこそ、その人の一番大切な能力があるのです。自分の限界を決めつけずに、いろんな世界に飛び込んでみることで、世界も広がるし、成長もできます。そういった意識を持って大学に来てほしいと思います。

※掲載内容は取材当時のものです。

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