リエゾンオフィス主催 シンポジウム「脳は不思議だ −世界は脳でつくられる−」

多くのお申込みを頂き、誠にありがとうございました。
お申込みが定員を超えたため、受付を終了とさせて頂きます。

 21世紀は「脳」の世紀と言われています。私たち人間の脳は宇宙の中で最も複雑なシステムの一つであり、その一千億個もの神経細胞が織りなす機能の多様性と調和から、それ自体が小さな宇宙であると言えます。

 この複雑なシステムを持つ「脳」は、私たちの感情や心を作り出す身近な器官でありながら、その働き方は未だ謎と神秘に満ちています。また、脳研究により精神疾患のメカニズムも少しずつ解明されつつあります。うつ病が与える世界的経済損失は、今後数十年で10数兆USドルにもなるとの予測もあり、現在、予防や治療法の開発のために「脳」の研究に期待が寄せられています。

 今回のシンポジウムでは、最新の知見で紐解く「脳」の不思議を分かり易く紹介します。

 聴講無料でご参加いただけます。是非、お申込みください。

日時 2015年10月31日(土)
開場13:00 開演13:30 終演(予定)16:20
会場 京都産業大学 壬生校地 むすびわざ館 2階ホール
京都市下京区中堂寺命婦町1-10(京都市下京区壬生川通松原下る)
交通アクセス
定員 350名(参加無料)
申込 インターネット 申し込みフォームからお申込み下さい。
往復はがき 郵便番号・住所・氏名・電話番号・年齢・参加人数・質問内容等をご記載の上、以下の宛先にご郵送ください。
〒603-8555 京都市北区上賀茂本山 京都産業大学 リエゾンオフィス宛
FAX 本ページにリンクしているチラシ裏面の参加申込FAX用紙に必要事項記入の上、以下のFAX番号宛にご送信ください。
FAX:075-705-1966
京都産業大学 リエゾンオフィス
※ご提供頂いた個人情報は、本学開催行事の案内以外には一切使用いたしません。
申込期限 平成27年10月19日(月)(往復はがき:当日消印有効。参加証は10月21日頃発送予定。)
※インターネットからのお申込みは定員になるまで可能です。

申し込みは終了しました。

プログラム

講演 「心と世界、それは脳が作る幻想だ」

浜 千尋(京都産業大学 総合生命科学部)

 ヒトの脳は宇宙の中で最も複雑なシステムであるともいわれています。その脳は、1千億個もの天文学的な数の神経細胞からつくられており、それ自体が小さな宇宙として機能しています。
 私たちは、毎日、脳を通して世界を見たり感じたりしているため、目の前に見える世界はあたりまえのことで、そこに何の不思議も感じません。しかし、私たちが感じることができるのは、世界の一部の情報であり、その限られた情報から脳が脳の中に世界を組み立てているのです。さらに、喜怒哀楽といった感情や「意識」を含む内的世界 -心- も物質である脳から生まれてきます。このように、脳はわれわれの「全世界」を日常的に作り出していますが、その機構は未だ謎と神秘に満ちています。
 今回のシンポジウムでは、心と世界は脳が作る幻想であること、そして後半に、ヒトの脳とはちがったタイプであるショウジョウバエの脳を用いた研究についてお話ししたいと思います。

講演 「環境と脳 -音とチョコレート-」

加藤 啓子(京都産業大学 総合生命科学部)

 「脳」の病気として知られる「てんかん」。てんかんは人間だけではなく、動物にも発症する精神疾患です。その発症率はヒトやネコで1%、イヌで平均2〜3%です。情動(心の動き)を司る脳の領域の中でも特に、扁桃体を含む側頭葉の部分が情動中枢として働きます。この側頭葉が原因でおこるてんかんが薬の効かない「難治てんかん」になり易く、また、うつ・不安障害・統合失調症といった精神疾患の併存率も高まることが知られています。
 最新の私の研究から、食事に含まれる油脂が情動記憶に影響を与えることがわかってきました。チョコレートや肉などに多く含まれる飽和脂肪酸。一般的に飽和脂肪酸は「悪玉コレステロールの元凶」と考えられていますが、マウスによる実験により、恐怖の記憶を和らげることを世界で初めて証明しました。
 私の講演では、マウスによる実験で明らかにして来た、てんかんやうつ・不安症が発症するメカニズムや、食べ物に含まれる油脂が脳の情動に影響する最新の知見も紹介します。

① 情動 感情の動きのことを「情動」と言います。「情動」には、快・不快、怒り、恐怖、喜びといった感情が含まれますが、より本能に近い、生存に関わる敵味方や、食欲、性欲に関わる動物が共通に持つ感情のことです。
② 扁桃体 情動を支配する「中枢」が、「扁桃体」です。期待通りに実現しないのではと「不安」になり、その期待が裏切られると「怒り」がわいてきます。さらに期待していることを完全に失ってしまうと、「悲しみ」が起こります。扁桃体は、「喜び」にも反応しますが、特に、この「不安」「怒り」「悲しみ」に強く反応します。そして扁桃体を損傷した人は、驚きや恐怖を感じることができなくなります。
③ 側頭葉 大脳皮質は、大まかに四つの領域に分けられます(前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉)。その一つである「側頭葉」は、言語、記憶、聴覚に関わっており、記憶中枢の海馬や、情動中枢の扁桃体と接しています。うれしい出来事や悲しい出来事は、扁桃体を介することで、より多くの情報が海馬に伝わります。そして海馬で一時的に蓄えられた記憶は、側頭葉をはじめとする大脳皮質に蓄えられることで、長い間覚えていられる「長期記憶」となります。
④ 情動記憶 良く覚えている出来事とすぐ忘れてしまう出来事があります。誕生日に大切な人と、とてもきれいなレストランでおいしい食事をしたとき、1ヶ月後でも何を食べたか詳細に覚えているでしょう。それは、視覚情報(新鮮な色)、味覚情報(こく深い)、嗅覚情報(良い香り)が、楽しい、おいしいといった扁桃体を経由した情動を伴う情報と一緒に海馬に入ってくると、記憶に残りやすいことを示しています。この情動を伴う記憶のことを、「情動記憶」と呼びます。
⑤ 飽和脂肪酸と
多価不飽和脂肪酸
油脂は、サラダ油のような液体油とラードやココナッツ油のような固体油に大別されますが、化学的に見ると、3つの脂肪酸が結合した構造をもっています。油脂に含まれる脂肪酸は二重結合を有するか否かで飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別され、二重結合が1個のものを一価不飽和脂肪酸(例:オレイン酸)、多くの二重結合を持つ脂肪酸を多価不飽和脂肪酸(例:ドコサヘキサエン酸)と呼びます。不飽和脂肪酸をほとんど含まない油脂は、固体油となります。

講演者プロフィール

浜 千尋(京都産業大学 総合生命科学部)

 神奈川県の私立栄光学園出身。生物学のもつ雰囲気に魅かれ、東京大学理科II類から理学部生物化学科に進み、同大大学院で博士号取得。大学院では、細菌を用いた研究をしていたが、遺伝学の使えるショウジョウバエに興味を持ち、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部生物物理化学科で博士研究員として発生の研究を行う。帰国後、国立精神神経センター神経研究所・室長、理化学研究所・発生再生科学総合研究センター・チームリーダーを経て2010年より現職。その間、ショウジョウバエを用いた神経発生とシナプス分化の分子機構について研究してきた。ここで、もうひと踏ん張りして面白いことをしたい。

研究分野

シナプスの分化機構

加藤 啓子(京都産業大学 総合生命科学部)

 大阪府立富田林高校出身。中学の時に見た「野生の王国」に魅せられ、獣医を志し、大阪府立大学農学部獣医学科に入学したものの、体力不足から早々と脱落。その後入室した研究室で研究に目覚め、大学院は大阪大学医学研究科に進学。遺伝子導入法を駆使してB型肝炎のモデルを作って博士号取得。その後神経科学に興味を持ち、まずはカリフォルニア工科大学で博士研究員として神経発生の研究を行い、帰国後は、てんかんや不安症といった精神疾患モデルを軸に疾患発症の原因を追求している。その間、奈良先端科学技術大学院大学 助手、大阪府立大学生命環境科学研究科 准教授を経て2010年より現職。学生と一緒に実験している時がとっても幸せ。

お問い合わせ
京都産業大学リエゾンオフィス
〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
Tel.075−705-1778
Fax.075−705-1966
E-mail:liaison-office@star.kyoto-su.ac.jp
PAGE TOP