コンピュータ理工学部インテリジェントシステム学科 岡田 憲志 教授

パソコンや携帯電話の使いやすさを追求。
誰もが情報共有できるバリアフリーのWebページ構築。
ユーザビリティとアクセシビリティの研究で、人にやさしい社会に貢献。

パソコンやインターネットの普及に伴ってユーザビリティとアクセシビリティの重要性が益々高まっています。

コンピュータ理工学部インテリジェントシステム学科 岡田 憲志 教授

 そもそも「使いやすさ」とは、どういうものでしょうか。例えば、使いやすいパソコン、使いやすい携帯電話、使いやすいソフト等といいます。この使いやすさが、ユーザビリティです。機器やシステムの使いやすさを客観的に評価して、使いにくいという問題点を解決していく。では、使いやすさをどうやって評価して、より使いやすくするにはどうすればよいのか、というのが私の研究テーマです。ただ、使いやすさとは非常に主観的なもので、個人によって使い方や使いやすさの評価が分かれます。同じものを使っていても、使いやすいという人と使いにくいという人に分かれた場合、できるだけ使いにくいと感じる人を少なくするように、開発段階から機器やシステムの改良を行うと効果的です。ユーザビリティを考えた場合、個人に偏らない評価方法をつくり出す必要があります。もちろん、今までにも多くの評価方法が登場していますが、携帯電話で見るインターネットのWebページ等は、ここ数年で急速に普及してきたために、新しい評価方法が必要となっています。ユーザビリティでは新しく普及してきた機器やシステム、携帯電話やペンで入力できるパソコン、PDAといわれる手のひらサイズの端末機器などを対象にした研究を行っています。
 一方、アクセシビリティはバリアフリーと言い換えることもできます。例えば、目の見えない方でもインターネットのWebページがわかるように、音声で読み上げたり、ディスプレイではなく点字装置で表示したりすること等です。これらをバリアフリーやアクセシビリティの向上と呼んでいます。
 私の研究の一つに、Webページが音声での読み上げに適したつくり方になっているかどうかを自動的に評価する方法の開発があります。Webページを読み上げるソフトは種々ありますが、ページのつくり方によっては読み上げる部分の順番が不適切になり、読み上げを聴いてページの内容を把握することが難しくなってしまいます。これに対して、ページのつくり方がバリアフリーに沿った形になっているかどうかをプログラムで自動的にチェックするアプリケーションをつくりました。このようなチェックソフトは他にも開発されていますが、私の研究では、まだ自動化ができていない部分に注目して、自動チェックするための方法を開発しています。今やアクセシビリティはWebページを評価する一つの指針にもなっており、全ての人が楽しめるWebページが増えることを期待しています。

インターネットの利用端末は携帯電話等の移動端末がパソコンを上回りました。これからの研究の方向性を教えてください。

 今までWebページはパソコンの画面で見ることが前提でつくられてきました。ところが、これらのWebページを携帯電話でも見ることが可能になってきました。携帯電話とパソコンでは画面の大きさが違います。パソコン用につくられたものを携帯電話で見た場合、同じように閲覧できたり、間違わずに操作できるとは限りません。そこで、パソコン用のWebページを携帯電話で見た場合のユーザビリティの評価を行いました。すると、例えばパソコンではリンクを見つけにくい箇所がページ全体の右下付近であったものが、携帯電話では真ん中辺りになってしまうことがわかりました。携帯電話の場合、画面に表示される範囲が狭くなり、縦にも横にも多くスクロールしていると、ページ全体で今表示している場所がわかりにくくなるためでした。やはり、同じWebページを携帯電話でも見せようとすると、従来のつくり方やレイアウトを見直す必要があります。
 社会がさらに進化して、ユビキタスという概念が発展してくると、いつでもどこでもコンピュータが身近なものとなります。機器やシステムももっと小型化されて、腕時計に組み込まれたり、メガネに組み込まれたりするようになります。そうすると、また新たなユーザビリティやアクセシビリティが必要になってきます。既に、エレクトロニクス製品にしても、携帯電話にしても、メーカー間の技術的な商品格差というのはほとんどなくなりつつあります。それだけ技術が発展し、技術的なレベルが向上してきています。では、次に何で差別化をはかるのかというと、冒頭で申し上げたように使いやすさ、つまりユーザビリティです。この分野の研究開発は非常に地味なのですが、これからの産業にとって、不可欠であり、重要な要素だと思っています。確実に10年前よりも、そのニーズは高まっています。これまでは市販されている商品やインターネットで公開されているWebページの評価を中心に行ってきましたが、これからは産業界との連携を拡大して、今までにないような新しいユーザインタフェースを備えた機器やシステムの試作段階での評価等も行っていきたいと考えています。Webページのアクセシビリティは、検索エンジンでの検索結果の上位ランキングをめざすSEOといわれる技術にも共通します。つまり、構造がわかりやすいWebページは検索エンジンでも評価されやすく、バリアフリーでもあるということです。ユーザビリティやアクセシビリティの評価法の分野で、人にやさしい環境をつくりだす社会に貢献できたらと思っています。

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