理学部物理科学科4年生「いて座新星」の迅速な確認観測に成功

図1:新星の位置

図1:新星の位置

 日本時間3月28日未明にアマチュア天文家である西山氏と椛島氏によって、いて座(本学の学章であるサギタリウスです)の方向に、これまでには見つかっていなかった星が発見されました(図1および図2参照)。これは、もともと暗かった星が、爆発によって急激に明るくなる現象(新星爆発)ではないかと考えられますが、その確認には分光観測と呼ばれる「光を虹に分ける」観測が必要です。

 この知らせを受けた本学神山天文台では、新井彰(あらい・あきら)特定研究員および理学部物理科学科4年生、長島雅佳(ながしま・まさよし)くん、梶川智代(かじかわ・ともよ)さん、仲千春(なか・ちはる)さんの3名が、急遽、荒木望遠鏡を用いた分光観測を実施し、この天体が1秒間に約900キロメートルという高速度でガスを噴出する爆発天体であることを確認、世界に先駆けて新星爆発であることを突き止めました(図3参照)。この知らせはただちに国際天文学連合(IAU)に報告され、同日中にIAUより世界中の研究者に情報発信されています。

 現在、こうした新星候補の発見はアマチュアの天文家によるところが大きく、天文学者とアマチュア天文家の連携が極めて重要となっています。今回、こうした連携を地道に育んできた新井研究員の努力と、本学理学部の学生たちの協力が、成功につながったと言えます。観測を行った長島雅佳くんは「自分たちで観測した天体を解析して結果が出たときは嬉しかった」と語っています。

 今回発見された新星は、ふたつの星が互いの周りをまわりあう連星と呼ばれる星のうちの片方が、急激な爆発を起こしたものだと考えられています。新星爆発の専門家である新井研究員によれば、これは「古典新星」と呼ばれる部類の爆発現象であり、私たちの銀河系内にあるチリやガスによって赤くなって見えていることも分かりました(夕日が赤く見えるのと基本原理は同じです、夕日の場合は地球の空気中にあるチリなどによって赤くなってしまいます)。

 神山天文台では昨年度のオープンより望遠鏡ならびに観測装置の整備を続けつつ、学生の専門教育にも力を入れてきました。今回、こうした取り組みがようやく実を結んだといえます。今後、爆発現象の変化についても継続的に観測を行い、その様子を明らかにすることが課題です。今回の一連の観測・研究については、文科省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された研究課題の一環でもあり、日本天文学会などでの発表を予定しています。

図2:画像中央の星が、今回分光観測した新星

図2:画像中央の星が、今回分光観測した新星

図3:スペクトル

図3:スペクトル(星の光を虹の七色に分けたもの。左から右にむかって、青・緑・黄色・オレンジ・赤色の光に相当する)。中央付近に飛び出た「とげ」のようなパターンが、爆発で飛び散る水素のガスが発する光。この「とげ」の横幅から、爆発するガスの速度がわかる。こうした観測でのみ、爆発現象であることが確認できるため、本学のような分光観測を実施できる天文台が重要な拠点となっている。

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