准教授 増井 敦(マスイ アツシ)

担当する領域科目名 刑法
研究テーマ 犯罪論における集合的行為の責任原理
取得学位 京都大学修士(法学)
研究分野を表すキーワード 刑法、共犯、集合的責任
研究室電話番号 075-705-2942
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研究の概要

 従来の近代犯罪論体系がアトミックな個人観を基礎に「個別行為」を対象とする理論体系を構築してきたことに対し、そこで採用されてきた責任原理が「集合的行為」に対しては有効に機能していないという認識を出発点として、集合的行為において諸個人の刑事責任を適切に定めうるような責任原理とはどのようなものかを考察しています。具体的には、共同正犯や集団犯(騒乱罪等)など複数の者が協働して犯罪を遂行した場合に、個々の関与者が自ら直接実現したものを超えて他の関与者が惹き起こした事態にまで刑事責任を問われるのはなぜか、また、どの範囲で責任を問われるのかという問題に、関係的な個人観に基づく責任原理によって説得的な解答を与えることを目指しています。
 研究全体は以下のように構成しています。 (1)規範論の事実的基礎として、経験諸科学の成果を参照しつつ、集合的行為の構造理解を深める。 (2)より一層事実に即したかたちで諸個人の責任を定めるような責任原理として関係的責任論の考え方に注目する。 (3)集合的行為に関わるいくつかの刑法解釈論上の問題について、関係的責任論が有効な解決策となり得ることを具体的に示す。

主な論文、著書など

「騒乱罪の構成要件について―いわゆる「共同意思」要件を中心に(1)・未完」産大法学40巻2号1−20頁、2008年。(概要:騒乱罪の法的構造について、本文構成要件行為説、各号構成要件行為説、本文各号構成要件行為説を比較検討し、本文各号構成要件行為説が妥当であることを示したうえで、いわゆる「共同意思」要件について、判例・学説を批判的に検討し、騒乱罪における個人帰責は明示的な意思連絡のない状況下で一部実行全体責任の法理がいかにして基礎づけうるのかという原理的問題を説明しなければならないことを指摘した。)

「暴行罪における暴行概念と傷害致死罪」産大法学40巻3号1−32頁、2007年。(概要:暴行の概念を、人の「身体的領域の物理的侵害」と定義しつつ、暴行罪に含まれる暴行には、結果的加重犯の基本犯となりうるものと、なりえないものが存在するとの分析を示した。従来の判例・通説に反対して、暴行の故意でなされた暴行の結果、重い死傷結果が生じても、それが結果的加重犯の基本犯とはなりえない暴行から生じた場合には、結果的加重犯ではなく、暴行罪と重過失致死傷罪の観念的競合として扱うべきであると論じた。)

「暴力団組長である被告人が自己のボディーガードらの拳銃等の所持につき直接指示を下さなくても共謀共同正犯の罪責を負うとされた事例について」産大法学40巻2号94−119頁、2006年。(概要:表題の最高裁平成15年5月1日決定について、直接手を下さない者の共同正犯成立根拠とその要件を検討した。特に、従来の判例を再検討した結果、共同正犯成立要件の一つとされてきた「共謀」は、共謀形成行為ではなく、共謀状態すなわち集団の一体性の存在を意味していたことを前提として、本事案において「共謀」要件の充足を認めうるかを詳細に検討した。)

「集合的行為の刑事責任に関する予備的考察(1)〜(2・完)」法学論叢157巻1号55−84頁、2005年、法学論叢157巻2号、48− 73頁、2005年。(概要:集合的行為は、集団自体あるいは集団を構成する個人には還元し尽くせない社会的事象であること、その刑事責任は、集団と個人の関係、とりわけ、集合的行為における自己概念の変容という事実的基礎をもとに論じられるべきことを明らかにした。)

教員および院生の活動記録(学会および研究会などでの発表)

2010年12月「未必の故意による共謀共同正犯」京都刑事法研究会(於:京都大学)
2008年7月共同研究「集団犯罪・組織犯罪と共犯理論の再構築―集団犯罪における共同現象」日本刑法学会関西部会(於:大阪市大)
2008年6月「組織犯罪処罰法をめぐる諸問題―第3条1項を中心に」京都刑事法研究会(於:京都大学)
2006年9月「人の身体に直接接触しない行為と致死結果」京都刑事法研究会(於:京都大学)
2005年1月「集合的行為の刑事責任に関する予備的考察」日本刑法学会関西部会(於:京大会館)
2004年7月「暴力団組長である被告人が自己のボディーガードらの拳銃等の所持につき直接指示を下さなくても共謀共同正犯の罪責を負うとされた事例について」刑事判例研究会(於:同志社大学)

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