平成30年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

本年度の学部重点テーマは、「事前事後学習の強化をもたらす新しい授業形態の導入」であり、学ぶべき知識の習得と定着に必要な自主学習を促進することに力を入れた。平成27年度から30年度にかけて事前事後学習に費やした時間の学部平均は、春学期では2.06、2.26、2.37、2.56、秋学期では2.26、2.38、2.59、2.75と着実に増加している。ただし、30年度の秋学期は調査対象とする科目を英語、実習および演習にまで広げたために大幅に自習時間数が増えている可能性があり、正確な分析は来年度以降の推移を見て行う必要がある。この数年、授業の形態として質問駆動型授業、反転授業、グループ対戦型授業を用いる試みがあることに加え、レポートの提出や毎回の授業に小テストを導入する教員が増えていることが事前事後学習時間の増加につながっているものと思われる。しかし、科目履修後の学生の「興味」、「成長度」、「満足度」については、必ずしも増加しているわけではなく、また学習達成度について改善されているかは不明である。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:12月25日(火):生命科学演習Ⅰ(川根 公樹 准教授)参加教員19名
  2. 「ワークショップ」:12月25日(火)開催:参加教員13名

(2)ワークショップでの意見交換内容

学習は、個々の学生が一定の忍耐力を持ちながら進めていくことが基本で、その過程で興味や楽しみが伴うものだが、本学部の学生のレベルは様々で、かなりの割合の学生は努力して勉強をする習慣が身についていないのが現状である。その中で、連携科目の知識の定着を目的とした演習の授業形態をいかにするのが良いのか、というのが今回のテーマで、川根先生の新たな試みとして、対戦形式のグループワークを導入した授業が行われた。
教員が全ての学生に対して一対一で指導できれば教育効果は大きいが、それができない点をグループワークにより克服しようとする試みで、そのための仕掛け(予習、教えることにより学ぶ)が企図されていた。授業内容は良く練られており、学生が自主的に予習に取り組み、授業に参加したくなる工夫が配されていた。一方、グループの構成メンバーの資質の違いによりグループ間での達成度に違いが生じる、計算問題の学習には必ずしも適してはいない、教員の負担が大きいのでは、という意見も寄せられた。
個人の営みとしての学習の習慣がないまま発達期を過ごしてきた若者を変えるためには、1年次から天地がひっくり返るようなショックを与えるか、落第させることも必要だが、いかに新しいことを学ぶことに興味を持たせ自発的に勉強してもらうかという超難問にさらに向き合う必要がある。対戦形式のグループワークはその問題解決の一つの方策となり得る授業形態であると考えられる。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

近年、本学部の教員の間で学習効果を上げるための様々な試みが行われてきている。例えば、新たな授業形態として、質問駆動型授業、反転授業、グループ対戦型授業が導入され、また、moodleを通した学生から教員への質問、レポート、授業時の小テストなどが実践されている。さらに、全体の教育方針として基礎重視を打ち出しており、演習科目に力を入れる等により基礎知識の定着を図ることの重要性が教員間で共有されつつある。

(2)1と2において確認された改善すべき点

学生が自ら興味を持ち、その興味を継続的に発展させ自主的学習につなげることが重要である。そのためには、授業内外での学生の意識を変革させるためのシステムの構築と「熱」が必要であろう。

4. 次年度に向けての取り組み

次年度は、いよいよ生命科学部がスタートする。生命科学部では、総合生命科学部の3学科体制から後述する2学科体制となり、4年間を通じたカリキュラムも、先端生命科学科は実験科目を重視、産業生命科学科は社会科学系の科目に加え、PBL科目やインターンシップ科目の修得を推奨するなど、生命科学へのアプローチの違いに応じて異なるものとなっている。
しかしながら、両学科とも、学士(生命科学)の取得をゴールとしており、生命科学の基礎知識と技術をしっかりと身につけることの必要性は総合生命科学部のときと変わらない。入学定員が増加した分(115名から150名)、むしろ種々の授業科目で学生の学力を伸ばす重要性は増すと考えている。
その中で生命科学部では、次年度の新しい試みとして、新入生に向けた学部共通科目、「フレッシャーズセミナー」を開講する。この科目は、学部の全教員が担当し、学科ごとに学生を少人数グループに分け、学生はローテーションで多数の教員の授業を受講する。この科目は、例えば、自己管理ができるようになる(マネジメント能力)、他者との交流が円滑にできるようになる(コミュニケーション能力)、自分の考えをまとめ、わかりやすく発表する力を養う(アカデミックスキル)、レポートのまとめ方を学ぶ(アカデミックスキル)など、大学で学ぶために必要な能力を身につけさせることを目標としており、自分の将来や自分の興味と社会のつながりについて考える機会を提供することを狙っている。また、この科目では、学部で初めて統一した教科書を使用する、教える内容を事前に全教員間で打ち合わせているなど、教員にとっても新しい教授方法が試されている。次年度は、この科目の振り返りを中心にFD活動を実施し、この科目の教育効果や実際に授業を行ったうえで気づいた問題点など、討議する予定である。
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