Pick up 研究室

先端生命科学科

生命の仕組みを明らかにする構造生物学

津下 英明 研究室

タンパク質の複合体の形を⾒る研究

⾁眼で⾒えない分⼦の世界を覗いてみると無限の世界が広がっていて、まだまだ⼈間が発⾒できていない⽣命の構造・仕組みがあります。私の研究室では、タンパク質同⼠がどのように結びつき、さまざま
なシグナルを伝達しているかを明らかにするために、⾼輝度X線発⽣装置やクライオ電⼦顕微鏡という⾼度な機器などを使⽤して「タンパク質の複合体の形を⾒る」研究をしています。
例えば、近年初めて構造を明らかにしたものに、シリンジ(注射器)型のタンパク質分⼦があります。
それは、細菌が毒素を本体の細胞内に送り込むための装置でした。⼈間が注射器を作ったように、微生物はすでにナノサイズの注射器を⽣み出していたわけです。このナノシリンジの構造は、病原菌に侵された特定の細胞に薬となるタンパク質を届けたい時に応⽤できるのではないかと考えています。
また、我々が行ってきた20年にわたる「細菌ADPリボシル化酵素の基質認識機構とその細胞膜透過に関する研究」は、ビタミン学の進歩発展への功績が認められ「2023年度ビタミン学会賞」を受賞しました。このように学⽣の皆さんにも、世界的な⼤発⾒をするチャンスがあります。研究は孤独な取り組みの連続ですが、研究室は学⽣同⼠や先輩との交流、意⾒交換も盛んです。⽇本屈指の「タンパク質」の研究者がそろう京都産業⼤学で、⼀緒に未知の世界を解明しましょう。
 

境微生物と植物の相互作用 システムに関する研究

金子 貴一 研究室

植物と微生物、共生を可能にするDNAの正体は?

クマノミとイソギンチャク、人間と腸内細菌など、異なる生物が同じ環境の中で互いに利益をもたらして生きることを共生関係と呼びます。
この研究室では、主に植物と微生物の共生の仕組みをDNAのゲノム解析から解き明かしていきたいと思っています。例えば植物との共生において最もメジャーな根粒菌は、ある遺伝子を獲得することで共生可能な菌になることが、ゲノム研究で明らかになっています。これを遺伝子の「水平伝播」と言いますが、私の研究で特に注目しているのは、獲得したDNAのうちどれが共生に関わるのかという点。
世界的にもまだ謎が多い「共生を可能にする遺伝子」を追い求め、日々実験を重ねています。

実験では根粒菌を使って共生関係が成立する条件を整え、植物の成長を観察。

“タンパク質の一生”を見守る 品質管理のしくみ

潮田 亮 研究室

タンパク質の「一生」を追えば病気の治療法が見えてくる

人間の体はタンパク質でできています。約30兆個もの細胞の中で10万種を超えるタンパク質が常に生まれ(合成)、成熟し、死んでいく(分解)。このタンパク質の「一生」が正しく循環しないと、人は病気になる場合があります。例えば、がん、糖尿病、アル ツハイマー病。これらはタンパク質の「不良品」が細胞に蓄積されることで引き起こされる病気です。ただし、細胞は不良品のタンパク質を分解する仕組みを持っていて、そのおかげで多くの場合、発病が妨げられます。では、タンパク質が不良品であるかどうかを、細胞はどうやって見分け、分解しているのか。
私の研究ではその点にフォーカスして、ヒトやマウスの細胞、線虫などを使った実験でタンパク質の一生を再現・観察しています。タンパク質の「死」=「分解過程のメカニズム」を研究することが、関連する病気の治療法の開発につながるものと考えています。

培養液の中にある細胞を観察し、“タンパク質の一生”を探る。

生命がRNAを制御する 原理の解明

三嶋 雄一郎 研究室

世界が注目する遺伝物質「RNA」のメカニズムを解き明かす

RNA(リボ核酸)はDNA(デオキシリボ核酸)と同じく、遺伝情報を伝達する物質です。DNAを生命の設計図とすると、それを基に体を機能させるタンパク質がつくられますが、実はその間に、DNAからRNAに必要な遺伝情報だけをコピーするステップが存在します。いわば、タンパク質という生命の部品をつくるための発注書の役割を担うのがRNAです。
私の研究では「RNAの扱い方」に注目。RNAは単にコピーするだけでなく、適切な細胞に適切なタイミングで発注し、不要になったコピーを廃棄するメカニズムがあります。このメカニズムが狂うと生体に何が起こるのか。研究室ではゼブラフィッシュをモデルに、次世代シークエンスやゲノム編集といった最先端の手法や技術を用いて実験を行っています。まだ解明されていない新たな生物学の知見を広げるとともに、病気の治療や原因解明につなげることも期待されます。

遺伝学、発生生物学の優れたモデルであるゼブラフィッシュ。

人類と深い関わりを持つミツバチ 保全活動のため、全国各地を飛び回る

高橋 純一研究室

一般的に「ミツバチ」というと、ハチミツを連想する人が多いと思います。そのミツバチが世界各地で減少していることをご存じでしょうか。古来、農作業や人の営みにも深い関わりがあったミツバチ。特にその仲間であるマルハナバチは、トマトの受粉にも使われており、国内のトマト農家には特に必要とされるものです。私はミツバチやマルハナバチの保全、さらに産業との関わりをテーマに研究をしています。
ハチミツの分析や品質の評価に加え、最近では、発酵ハチミツの開発にも取り組んでいます。昔はハチミツを発酵させて漢方薬のようにして食べていたのですが、もう一度、おいしい発酵ハチミツを作るために、日々研究しています。
ハチを求めて、北海道から沖縄、東南アジアに行くこともあり、学生には全国各地一緒に来てもらったり、ミツバチの世話をお願いすることもあります。貴重なハチミツの国内サンプルはほぼ研究室にそろっていますので、ハチミツが好きな学生にもぜひ来てほしいですね。

研究室に保管されているハチミツのサンプル。

腸の正常な運動を解明することで 新たな治療法の確立を目指す

棚橋 靖行 研究室

緊張するとおなかが痛くなる、という人は多いのではないでしょうか。それは、過敏性腸症候群という病気かもしれません。精神的ストレスなどにより、腸の運動がおかしくなり下痢や便秘、腹痛を引き起こしてしまいます。しかし、なぜストレスが腸の異常を引き起こすのか、その原因は明らかになっていません。これを解明するには、正常(健康)な状態をきちんと理解することが必要不可欠です。多くの神経細胞があることから「第二の脳」と呼ばれる腸。その運動は複雑に調節されており、そのメカニズムを解明することが私の研究テーマです。将来的に我々の研究は、異常(病気)の理解に必ずつながり、病気の原因解明や治療薬の開発などに必要な情報源になると考えています。
実験や研究は一人ではできません。4年次生は3年次生を指導する役割もあり、コミュニケーション能力が大切です。専門性はもちろんですが、社会人として必要となる基礎力も、研究活動を通して身に付けてほしいと考えています。

研究室は研究のための設備が充実。

ミトコンドリアのしくみを解明し、生命と健康の根元に迫る

遠藤 斗志也 研究室

遠藤教授の研究室で構造を解析したタンパク質が通る孔(左)と脂質を運ぶ輸送タンパク質(右)

私たち生物の基本単位は細胞です。元気な細胞をつくることが健康に重要であり、そのためにはエネルギーを作り出す元気なミトコンドリアが維持されることが重要です。当研究室では、外部の研究機関にも拠点を置き、ミトコンドリアの主要材料であるタンパク質がミトコンドリアの外で作られてから、どのようにミトコンドリア内に運ばれ、機能を発現していくのか、その仕組みを研究しています。この原理を解明することで、健康に長生きする方法の獲得につながるのではないかと考えています。

DNA変異の仕組みを辿り、生物が進化してきた過程を解明する

河邊 昭 研究室

開花期のハクサンハタザオ

生物はこれまで、性質や形を変えながら進化を遂げてきました。では、どのように形を変え、多様性を育んできたかというと、実はまだ解明されていないことが多くあります。当研究室では、進化の過程を解明するという大きなテーマのもと、進化の原因となるDNAの変異がどのように出現し、維持されるのかについて、アブラナ科の植物を材料に研究しています。原因のさらに原因を解くことで、身の回りの生物の多様性の不思議に迫るとともに、植物の保全や品種改良に貢献できると考えています。

産業生命科学科

防災・減災に役立つ雨庭の効果を実証

西田 貴明 研究室

グリーンインフラで、環境・社会問題を解決に導く

生命科学や生態学という理系分野と経済・政策学の要素を掛け合わせたフィールドワークを頻繁に取り入れているのが、この研究室の特長です。産官学連携のプロジェクトに参加する機会が多いのも、他の研究室と大きく異なる点でしょう。所属の学生たちは研究室を飛び出して、自ら調査し、自然共生の観点から環境・社会課題の解決策を探ります。実際に自分が経験して生み出したアイデアを企業に向けてプレゼンテーションしたり、研究成果を学会で発表したりと、学生の主体性と行動力には目を見張るものがあります。
研究室として特に力を入れているのが、グリーンインフラ政策の実践です。グリーンインフラとは、自然環境が持つ多様な機能を活用して持続可能な地域づくりを推進する取り組みで、防災や減災、自然環境の保全といった社会問題の解決を図れるとして、日本でも注目され始めています。しかし、まだまだ実践例が少ないのが現状です。
例えば、様々なプロジェクトがありますが、現在は、滋賀県野洲市にある近江富士花緑公園で行われているグリーンインフラの社会実験に参画。連携先の企業と連携して開発した雨庭(雨水浸透貯留装置)を定期的にモニタリングし、同じ樹木を植えた成分の異なる複数の土壌の雨水貯留量を調査するのが役割です。この雨庭の浸透貯留効果を実証できれば、街の景観と災害対策の確保だけでなく、さらには、生物多様性の確保も期待できるでしょう。自然や生態系の持つ力を災害対策に役立てる仕組みを確立させ、自然共生型社会の実現に少しでも貢献できればと考えています。
皆さんも私たちと一緒に、自然と共存できる豊かな未来を創っていきましょう。

動物にも人にも感染する 細菌の生態と病原性

染谷 梓 研究室

細菌の生態と病原性を調査し人々の安全に寄与する

細菌学や獣医微生物学が専門で、主にマダニを媒介とした感染症の研究をしています。自然界では人がダニにかまれることで発生する病気があり、かつて歌手のジャスティン・ビーバーがかかったことで知られる「ライム病」も、その1つです。
中でも私が研究しているのは、リケッチアとバルトネラという細菌の仲間による病気の発生。具体的には、山の中に行ってマダニを採集し、それをすりつぶしてDNAを取り出し、機械で増幅させて検査していきます。そうやって地道にどんな病原体を持っているのかを記録し調査していくのです。
例えば、これまで前例のない動物の中からマダニの病原菌が発見された場合。人々がより安全に暮らせるように、病気がどう広まっていくか、どういう原因があるかを世間に広めていく。感染症にかからないためには、身近にどんな病原体が存在しているかを知ることが大事です。きちんとした情報を蓄積して周知する。産業と生命科学を結び付けることによって、広く世の中に役立てることを目指します。

生命科学と社会をむすぶ サイエンスコミュニケーションの研究

川上 雅弘 研究室

先端技術を分かりやすく伝え、一般社会に議論を促す

生命科学のサイエンスコミュニケーションについての研究をしています。これは、生命科学や先端技術を分かりやすく伝える手段を模索すること。現代ではゲノム編集やiPS細胞といった最先端の技術が進んでいます。先端技術が一般的になっていくにつれて、理論や研究内容をよく理解して、議論してもらう必要が出てきています。
例えば、難病や不妊の治療で生殖細胞や受精卵の作成を認められるのか。こういった課題が一般的になってきたからこそ、社会に暮らす一人一人がシビアな判断をしなければなりません。
具体的には、生命科学について議論しやすいカードを作成し、病院や地域でワークショップを開き、議論したり考えたりできる場をつくる活動をしています。
生命科学は、知って使うのと知らずに使うのとでは全く違います。最先端の知識を伝える役割はこれまで以上に重要になっており、食品業界や医療業界など、ライフサイエンスに関わる産業で活躍できる人材を育成していきます。

地域の視点から社会問題を改善

三瓶 由紀 研究室

私は農業政策、農業経済の分野を扱っており、生物資源を使って、いかに地域を良くしていくか、生物資源をどう保全するかをテーマにしています。
例えば、地産地消などにより持続可能な社会構築を目指す「地域内資源循環」という考え方があります。給食で出た生ごみを堆肥化し、その堆肥を使って野菜を育て、地域で消費してもらう。これにより食・農を通じた資源の地域循環につながりますが、その実現には、技術だけでなく、地域の人々のつながりを踏まえた仕組みづくりが必要になってきます。
また、京都では伝統的な京野菜が有名ですが、生産者の減少が課題となっています。京野菜を守るためには、どういったアプローチがあるのか。もちろん遺伝資源として残していくための生命科学の技術は欠かせません。そして、流通の知識を生かして政策を確立していく。
そこで大切になるのが、地域の視点に立って考える素養です。生命科学を基礎とした技術、専門知識を生かした政策、地域の視点で考える素養、この三つでどうアプローチしていくか。皆さんとともに研究していきたいですね。

生命の誕生と死の双方に作用する分子機構の研究を通し再生医療の未来をさまざまな形で拓く人材を育てたい

佐藤 賢一 研究室

アフリカツメガエル(雌)体内の卵巣に蓄えられている卵母細胞

現在私は2つの研究に取り組んでいます。1つは受精卵が発生段階で体を形成するメカニズムの、もう1つはがん細胞が持つ生物学的機能の研究です。いわば生命の誕生と死に関わる研究であり、これらは一見無関係に思えるかもしれませんが、実は正常細胞のがん化を引き起こす「がん遺伝子」の、機能変異前の姿「原がん遺伝子」は、受精卵の発生メカニズムにも関与することがわかっています。このような分子機構の研究を通して、例えば再生医療分野で注目されているiPS細胞やES細胞をより安全に、かつ効果的に活用するための重要な発見、知識を得られることでしょう。これらの成果をさまざまな形で社会に還元できる、「職業人」たる生命科学のスペシャリストを、みなさんには目指してほしいと思います。

最新機器を用いて植物の形が持つ多様性の神秘に迫る

木村 成介 研究室

環境によって姿を変えるロリッパの葉
(左)空気中25°C、(中央)空気中20°C、(右)水中

植物の葉の形に注目した研究を進めています。たとえば、生育環境に応じて葉の形が変化する植物「ロリッパ」。陸上では効率良く光合成を行うために丸い葉が、水中では水の抵抗を弱めるために針状の形の葉が発生します。このような変化には、DNAのはたらきが関係しています。研究室では、今まで10年以上かかっていたDNA解析をたった2、3日で遂行する「次世代シーケンサー」などを用いて実験を進め、変化が生まれる原因を追究。植物の品種改良などにつながる研究を進めています。研究過程においては企業や他大学と連携をとる機会も多く、実社会ではどのような能力が求められるのかを肌で学ぶことができます。生命科学の専門知識とともに社会への意識を育むことで、研究職や教育現場など、あらゆるステージで活躍できる人材を育成します。

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