令和元年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

今年度秋学期学習成果実感調査の学部集計表(総合生命科学部2〜4年次+生命科学部1年次)から読み取ることのできた主な事実は次の通りであった。

  • 1回の授業あたりの準備学習等の平均所要時間数が2.78(全学平均2.43)、同時間数が1時間半を超える学生数の割合は29%で、春学期の同時間数3.10(全学平均2.39)および同割合36%にくらべて1〜2割の減少を示した。その一方で、同時間数が30分未満の学生数の割合は26%で、春学期の同割合19%を大きく上回った。(以上、設問3の分析結果)
  • 3つの尺度、すなわち科目の面白さ、自らの成長、総合的な満足度について、肯定的な回答(強くそう思う+そう思う)の割合は、それぞれ69%、67%、69%で、春学期の同割合71%、70%、73%とくらべて、やや低下していた。一方で、否定的な回答(あまりそう思わない+そう思わない)の割合は、それぞれ8%、9%、8%で、春学期の同割合6%、6%、6%とくらべ、軒並みやや増加していた。(以上、設問4〜6の分析結果)

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    7月17日(水):フレッシャーズセミナー(産業生命科学科)2限、参加教員11名
    (担当教員:川上、木村、佐藤、三瓶、染谷、寺地、西田、野村、浜、前田)
  2. 「ワークショップ」:
    同日以降のメールによる意見聴取、およびその結果共有
       内容:問いづくりの実効性や他の授業での活用に関する意見聴取をおこなった。

(2)ワークショップでの意見交換内容

令和元年度中間報告書にて開示済みのため省略する。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

本学部は過年度までの4年間で学部目標としていた「準備学習(事前事後学習)をうながす授業形態の工夫や導入」が一定の成功を収め現在に至っていることを示すエビデンスがある(具体的には、2015〜2019年度における準備学習時間の増加が全学平均値を上回る形で見られたことを示すデータがある:令和元年度中間報告書にて報告済み)。本学部の授業・カリキュラムの長所としては、前述の状況のもとで新たに本年度はじめに組織された学部教員参加型の各種取り組み(*)によって各授業科目で提供すべき専門知についての共通理解が獲得され、そのことを生かした科目運営が実践されつつある点があげられる。
*生命科学部カリキュラムがスタートしたことを受けて、初年次教育FDの推進(フレッシャーズセミナーなどの専門必修科目の科目内および科目間連携、学習成果の可視化と検証のためのツール開発など)を核にして、学部カリキュラム・マネジメントの実践を具体化させつつある。

(2)1と2において確認された改善すべき点

学習成果実感調査結果の春学期と秋学期の比較から、準備学習時間数の減少や広い意味での学習成果実感の低下が見られている。この理由については現時点では明らかではなく、前年度までのデータも活用した分析(例年、秋は春よりも数値が低くなる傾向があるのか?科目別での年次変化はどうか?など)により検証したい。ともあれ、これらの数値が次年度・次学期でさらに減少・低下することのないよう、特に各科目レベルおよび科目間連携レベルでの科目運営の実態把握(各授業回ごとのモニタリング、対話シートなど)と次善策策定(準備学習のための課題設定と評価の関係の適正化、当該取り組みの学習者に対する可視化など)を引き続き適切なタイミングで実施できるように、教授会、学科主任会議、学科会議それぞれのレベルでの情報共有に努めたい。

4. 次年度に向けての取り組み

本学部は、今年度の重点テーマに「初年次教育FDと学部カリキュラムマネジメントの実践」を掲げ、その目的として学士課程4年間の学びの成果あるいはその評価指標の検討を、そして具体的な実施計画には学部内(学科内および学科間)科目連携、1年時春学期必修科目フレッシャーズセミナーにおける教員FD、新任教員のニーズに基づく学部FD活動の設計と実行の3項目をあげていた(以上、令和元年度学部授業・カリキュラム改善に向けた年間計画書)。これらの内容をおおよそそのまま次年度に継承し、引き続き取り組むこととしたい。
学部内における科目連携については、特に生命科学部1年次における講義科目と演習科目との学科内連携(受講生の立場からみた内容充実と科目連動性強化など)および学科間連携(学部教育としての内容充実と運営方法の妥当性確保など)を秋学期前後(9月および2〜3月)に当該科目担当教員陣および2学科それぞれのレベルで検証し、同結果の共有を学科主任会議と教授会のレベルで実行してきている。今後は、学習成果実感調査から読み取ることのできるデータ(自由記述も含む)を少なくとも科目連携当事者間で共有した上でのディスカッションや科目運営が可能になるように環境整備に臨みたい。
また、学長室IR推進室の協力を得て、産業生命科学科1年次必修科目2つについて、ルーブリック(学習到達度可視化ツール)による学習者による自己診断結果と教員による成績評価結果の分析作業を行いつつある。今後はこれらの結果も活用し、よりよいカリキュラムマネジメントのあり方の模索と実践(学部・学科の教育目標、ディプロマポリシーおよびカリキュラムポリシーと、授業科目における教育内容と方法、ならびに学習成果の連動性の可視化と強化)に臨みたい。
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