令和元年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

春学期は、1年次配当の「プレップセミナー」およびその他の「AL科目」を中心に調査を行い、実施率は94.59%と予定していたほとんどの科目で実施できたといえるが、100%の実施率となるよう努力したい。 調査を実施した全ての科目において、出席率は80%以上出席した者が80%を超えており、「この科目で主体的に学習した」(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、70%を超えている。全体と80%以上の出席者とで差はほとんど見られなかった。「その他」の科目(講義科目)においては、主体的に学習した(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、30%にとどまったものの、「この科目で学びの面白さを感じた」(強くそう思う+そう思う)と回答した者は60%を超え、「この科目の学習を通じて、知識を得たり、スキルを伸ばしたりするなど、自らの成長を実感することができた」(強くそう思う+そう思う)と回答する者が40%を超えていた。法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革は主体的な学習態度の形成を促すことを目的としてきたが、そのような学習態度が定着しつつあると評価できるのではないか。
「プレップセミナー」において、「学びの面白さを感じた」「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」「総合的に満足している」「法学部の学びについてイメージをもつことができた」「自分の将来について考える機会をもつことができた」の各項目について、「(強く)そう思う」とする回答者の割合は、昨年度とほぼ同程度である。初年次教育(導入教育)として主体的な学習態度の形成を促すこの科目の役割が定着してきたとも評価できる。1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者は、昨年度50%を割り込んだが、今年度は50%以上に回復した。今後も継続的に観測していく必要があろう。 なお、自由記述において、「プレップセミナー」では、クラスによって課題の量や内容にばらつきがある。」との指摘があった。全てのクラスで完全に同じ内容にすることは難しいが、学生はクラスを選ぶことができないので、著しい不公平が生じないような配慮を検討する必要があろう。
また、今年度から導入した「コース制」についての理解を問う設問について、「(強く)そう思う」とする回答者が60%を下回った。今年度からプレップセミナーの授業内でコースの登録を行わせたにもかかわらず、十分な理解ができていないように思われる。今後もプレップセミナーでの指導等を通じて周知させる方策の検討が必要であろう。  「AL科目」においては、「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」の項目で「(強く)そう思う」とする回答者の割合が70%を超えており、総合的な満足度も80%を超えている。引き続き、主体的に学習することができるようにAL科目の内容をさらに充実させていくべきであろう。
秋学期調査では「講義科目」のほとんどの項目で昨年度と同様の傾向が見られた。「学びの面白さを感じた」という項目について「強くそう思う」+「そう思う」と回答した受講生が昨年度の67%→69%に、出席率80%以上では72%→74%にそれぞれ微増し一昨年度の水準に回復した(これに対して「その他」科目では81%→75%に、出席率80%以上でも83%→81%に減少)。もっとも主体的に学習したか、自らの成長を実感することができたかといった項目の数値は、「その他」科目では大きな差は見られないのに対して、「講義科目」では、いずれも面白さを感じたという項目より15~25ポイント程度低いことにかんがみると、学生の考える学びの面白さが必ずしも主体的な学習や成長の実感に結びついているわけではないことがわかる。それゆえ、学びの面白さを高めることは大切であるが、それと同時に受け身ではなく、主体的な学習や成長の実感につながるような学びの面白さを感じさせる工夫がより重要であるように思われる。
また、法学部独自設問としてコース制に関する理解を問う設問では、およそ80%が理解しており、科目選択において重視したことについて「評価基準」と「授業内容」の選択肢を分けたところ、「授業内容」という回答が最も高く、「評価基準」という回答は少数であった。このことから、自ら選択したコースの選択必修科目を把握した上で、授業内容を確認して科目を選択する傾向がある程度確認できる。もっとも、「時間割」を重視して選択したという回答の割合も高いことから、今後も継続的に観測していきたい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業について

(2)研修会について

2019年11月20日に、法学部FD委員会および地域政策研究会の合同開催で、進路・就職支援センターからスタッフを招き、スタッフセミナーを実施した。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

前年度に引き続き、授業改善活動に関する組織的な情報共有にも重点をおいて活動をおこなった。本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。これらの点について組織的な情報共有を進めることができたと考えている。
学習成果実感調査等においても、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、あらためて確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

上述のとおり、少人数のAL科目については、学生に主体的な学習態度を身につけさせる点で成果が上がっているが、他方で「講義科目」における授業改善活動については、十分に組織的な情報共有ができていない。準備学習や事後学習の指示の仕方を工夫するなどして、講義を受け身で聞くだけでなく、主体的に取り組むことで学生自身に学習成果を実感させることができるような方策が検討されるべきであろう。
また、将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、また「プレップセミナー」などの初年次教育において多様な学生が共通して修得すべき基礎的能力はどのようなものであるのかが、検討すべき課題であることが確認された。

4. 次年度に向けての取り組み

今年度は、AL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムが本格化した。引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していくとともに、カリキュラム改革の趣旨に沿った成果が出せるよう授業改善に関する組織的な情報共有を強化する。具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。
また、次年度は、「貸出ノートパソコン」の運用を開始する。BYODを見据えたICTを活用した授業の開発・情報共有にも取り組みたい。
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