平成30年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

春学期調査では、「この科目で主体的に学習した」(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、60%を超えている。とくに80%以上の出席者においては、いずれも70%以上である。また、「その他」の科目(講義科目)においても、主体的に学習した(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、40%を超えた。法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革は主体的な学習態度の形成を促すことを目的としてきたが、そのような学習態度が定着しつつあると評価できるのではないか。
「プレップセミナー」において、「学びの面白さを感じた」「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」「総合的に満足している」「法学部の学びについてイメージをもつことができた」「自分の将来について考える機会をもつことができた」の各項目について、「(強く)そう思う」とする回答者の割合は、昨年度とほぼ同程度である。初年次教育(導入教育)として主体的な学習態度の形成を促すこの科目の役割が定着してきたとも評価できるが、1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者が、昨年度までと異なり、50%を割り込んだ点はやや気がかりである。今後も継続的に観測していく必要があろう。
「AL科目」においては、昨年度の調査において「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」の項目で「(強く)そう思う」とする回答者の割合が前年度と比較してやや減っていたが、今年度の調査結果ではほぼ回復したといえる。引き続き、主体的に学習することができるようにAL科目の内容を検討していくべきであろう。
秋学期調査では「講義科目」のほとんどの項目で昨年度と同様の傾向が見られた。ただし、「学びの面白さを感じた」という項目について「強くそう思う」+「そう思う」と回答した受講生が69%→67%に、出席率80%以上でも75→72%にそれぞれ微減した(ちなみに「その他」科目では87%→81%に、出席率80%以上でも89→83%に減少)。もっとも主体的に学習したか、自らの成長を実感することができたかといった項目の数値は昨年度とそれほど変化がなく、いずれも面白さを感じたという項目より16~25ポイントも低いことにかんがみると、学生の考える学びの面白さが必ずしも主体的な学習や成長の実感に結びついているわけではないことがわかる。それゆえ、学びの面白さを高めることは大切であるが、それと同時に主体的な学習や成長の実感につながるような学びの面白さを感じさせる工夫がより重要であるように思われる。今後も継続的に観測していきたい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業について

(2)研修会について

日時 平成30年6月20日(水)16時~17時15分
テーマ SA協働型授業等についての情報共有
趣旨 法学部では、「プレップセミナー」「法政策基礎リサーチ」「法教育演習Ⅰ~Ⅲ」などのSA協働型授業を設けて、近年進めてきたAL科目重点化に向けたカリキュラム改革の重要な柱のひとつとしている。これらの科目での取り組み及びカリキュラム改革のねらいや経緯について、近年の新規採用教員も含めて学部内で情報共有をはかるため、研修および意見交換のための会をおこなった。
参加者 法学部教員28名

内容

中井歩教授を講師にむかえ、「プレップセミナー」(初年次ゼミ)および「法教育演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の事例をもとに、法学部においてSA(Student Assistant)協働型授業を設置し改編してきた過程について情報共有した。
その要約は次のとおり。「プレップセミナー」には、担当教員ごとに内容にばらつきがあるなどの課題があったが、法学部での学習に必要な基礎的能力を学生に修得させるために、内容を厳選して(論理的な文章を読む・書く、論理的に話す・聞く、現実の社会問題への関心、および議論によってより良い答えに向かおうとする態度)パッケージ化し、担当教員で共有するとともに、先輩学生であるSAを導入した。また、SAを養成し、実践する科目として「法教育演習」を設け、模範的な先輩学生として下級生をサポートする能力・意欲等を養うこととした。その後、「法教育演習Ⅰ」もSA協働型授業とするべく展開中である。初年次学生およびSA自身にとって、その教育上の効果は上がっていると考えられるが、プレップセミナーでの学習の意義について初年次生にも理解を広げていくことが課題である。
この報告をもとに、意見交換をおこなった。そのまとめは、次のとおり。
「プレップセミナー」「法教育演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」などのSA協働型授業を設け、学生に学習のための基礎的な能力を修得させて、自ら主体的に学習する内容のAL科目に重点を置いて法学部での教育を充実させていくことに、法学部教員の間でおおむねコンセンサスはあると考えられる。
課題としては、学生間の能力・関心のギャップや上級科目との関係に注意して、プレップセミナーにおいて修得すべき基礎的能力について継続的に検討すること、また、プレップセミナーでの学習の意義を受講者に浸透させていくことが挙げられる。

(3)スタッフセミナーについて

日時 平成31年2月12日(火)15時30分~17時15分
テーマ 公務員試験・公務員志願者の現状と課題
趣旨 地域政策研究会・法学部FD委員会が共催して、進路・就職支援センターの水野課長ほかのスタッフを講師にまねき、法学部の教育改善のために、公務員試験と公務員志願者の現状と課題について情報共有することとした。
講師 進路・就職支援センターの職スタッフ5名
参加者 法学部教員23名、事務室4名

内容

進路・就職支援センターのスタッフより、公務員試験の内容や公務員志願者の現状と課題、本学の支援態勢などについて説明いただいて、情報共有をおこない、その後、意見交換をおこなった。
確認できたおもな点を要約すれば、次のとおり。法学部の教育の課題として、公務員の仕事の内容や公務員試験の内容などについて、初年次から学生の視界を広げる形で教育し、各種情報を学生にさまざまな手段で届けていく必要があることが挙げられる。また、法学部における各科目の学習内容(プレップセミナーにおける基礎的能力の訓練、専門講義科目における知識、AL科目でのプレゼン・ディスカッションなど)を積み上げていくことが、公務員を目指す学生にとって有益で、公務員試験にも対応することができることから、学生の将来の選択肢を広げるためにも、着実に各科目の内容を修得できる環境を整えていくべきである。プレップセミナーなどにおけるキャリア教育について、今後とも法学部と進路・就職支援センターで協議していく。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

前年度に、授業改善活動に関する組織的な情報共有に課題があると認識したことから、本年度は、組織的な情報共有にも重点をおいて活動をおこなった。本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。これらの点について組織的な情報共有を多少とも進めることができたと考えている。
学習成果実感調査等においても、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、あらためて確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、また「プレップセミナー」などの初年次教育において多様な学生が共通して修得すべき基礎的能力はどのようなものであるのかが、検討すべき課題であることが確認された。

4. 次年度に向けての取り組み

今年度は、AL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムがスタートした。次年度よりは、学生の科目選択の選択肢も増えて、新カリキュラムが本格化する。そのため、引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していく。具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。また、上記課題などについて、引き続き、組織的な情報共有と意見交換の機会を設けるべく検討していきたい。
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