石本 育美(旧姓 菊田)さん

略歴

2005 新潟県立江南高校 卒業
2010 京都産業大学 外国語学部言語学科イタリア語専修 卒業
2011 国営カタール航空で客室乗務員として乗務を始める
その後、日本のおもてなしやサービスを学ぶために日系航空会社に入社
現在も航空会社で客室乗務員として乗務しています(2020年7月現在)

イタリア語との出会い

京都産業大学でイタリア語を専攻したきっかけは、客室乗務職になる夢を叶えるためでした。親戚がハワイに暮らしていたこともあり、物心ついた頃にはいつか海外で暮らしたい、国際的な仕事に就きたいと海外志向な子供でした。将来の夢が決まらず漠然としていた頃、中学の担任の先生に進路を相談すると、「客室乗務員だったら自分の目で世界を見ることができるんじゃないかな」という言葉をいただき、また客室乗務員が主人公のドラマ「やまとなでしこ」が流行っていたこともあり、キラキラした世界に憧れて夢は客室乗務員の一本となります。夢の客室乗務員になるために、英語以外の言語を習得できたら幅が広がるかもしれないと考え、①希少価値が高くて、②文化が豊かなイタリア語を専攻することに決めました。
 

イタリア語と英語の両立(大学生活)

とにかくイタリア語と英語の両方をマスターできるように、必修科目以外でTOEICの授業や英会話の授業も積極的に取りました。しかし想像していた以上に一から新しい言語を学ぶことは難しく、イタリア語の授業について行くので必死。実際留学に行ったら話せるようになれるだろうと思い、大学3回生で留学することを決めました。

目標を達成するには生半可な気持ちじゃいけない(留学生活)

シエナの街並み
2007年に10ヶ月間、シエナ外国人大学へ留学しました。初めての海外生活で、イタリア人女性4人と共同生活をすることに。イタリア人と住んでいるし、イタリア語もそのうち身に付いてくるだろうと考えていましたが、留学3ヶ月目に担当の先生から、「君は家で勉強しているの? この学期の単位を落としたくなかったら、本気で勉強しないと難しいからね」と言われ、かなりショックを受けました。イタリアでの生活に完全に満足してしまい、「留学したら何とかなる」と楽観的に考えていたことに後悔しました。その日から、授業が終わる14:00くらいから図書館にこもって閉館するまで勉強し、課外授業の美術や教育論の授業を積極的に取り、朝から晩までイタリア語漬けの生活を送りました。留学生活が終わる時には、目標であったイタリア語検定CILSのB2レベルに合格し、イタリア語も自信を持って話せるようになりました。
しかし、留学生活が無事終わり、帰国時のトランジットである香港国際空港でまたショックな出来事が起きます。“Be at the gate 20min. before departure time”のbefore / afterの区別さえつかず、あやうく飛行機に乗り遅れそうになったのです。イタリア語しか話さなかったこの1年で、自分の英語力がかなり落ちていることに気づかされました。「どうにか英語力を戻さないと」と思い、帰国後に1年間休学することを決め、次は英語が学べる国で語学力を鍛え直しました。

Cabin Crew Life

1年間休学をしたので就職活動には不安を感じていましたが、卒業後には何とか念願だった客室乗務員としてカタール航空に入社しました。昨日はニューヨーク、来週はケープタウン、その次はイタリアへ…… ハードなスケジュールの中、約5年間、世界各国を飛び回りました。
勉強してきた語学を使って仕事をしながら、さまざまな驚きに出会いました。例えば、メッカに到着する前にお客様たちが巡礼のお清めのために、機内のトイレの水をシャワーのように浴びてトイレが水浸しになったり、銃を持ったボディーガードと一緒に移動しないと危険な国があったり…… その一方で、資源が豊富で、とっても潤っている国もありました。夢であった客室乗務員になったおかげで、広い世界を自分の目で見ることができました。
 
モルディブ上空
ニューヨークより
休暇で訪れたウユニ塩湖
世界120ヶ国以上から集まる同僚達とグローバルな環境の中で仕事をすることは、想像以上に大変で悩まされました(日本路線以外、基本一便に日本人は一人だけです)。はじめの頃は業務をこなすことに精一杯で、忙しくても、隣でご飯を食べて手伝ってくれない同僚に対して何も言わずに、我慢をしていました。いま思えばどうして「手伝って欲しい」と、自分の状況を伝えられなかったのだろうと思います。ある時上司から、“Ikumi, relax! We work as a team. Let’s enjoy this moment and don’t be stressed out.”と言われ、ハッとします。それまで外国人の同僚に気遣いをし過ぎたり、自分で仕事をした方が早いと考え込んだりしてしまって、色々と見失っていたのです。
グローバルな環境で目的の違う者同士が一緒に働くためには、自分の意見や状況をしっかりと言葉で伝えていくことが大切だと学びました。こうして徐々にカタール航空のカルチャーに馴染んでいきました。 
カタール航空最後の乗務にて
ベネチア線で
モスクワ線にて

在校生の皆様へ

私自身、仕事をする中で良質なコミュニケーションはとても大切だと感じています。日本人同士は感覚が似ているので、言葉にしなくてもある程度状況を察することができます。しかし、外国人に対しては言葉にしないと伝わらないことがたくさんあると思います。
その時に必要なスキルが語学です。海外で働くとなると、共通語として英語が話せて当たり前の世界で仕事をしていくことになります。「じゃあ英語だけで十分じゃない?」と思われるかもしれませんが、イタリア語しか話せないお客様にイタリア語でサービスをして喜んでいただいたり、イタリア語が話せるということでイタリア人の同僚達との間に親近感が湧いて物事が円滑に進んだり、緊急時などの必要な時にイタリア人のお客様に的確に状況を伝えたりすることができます。
イタリア語を勉強していた頃、それをどうやって活かしていけばいいのか分からなくなった時も正直ありました。しかし、学んだものの活かし方は自分次第です。私の場合のように、それを使って働ける環境を探していくこともできます。
大学生活は可能性がたくさん溢れています。いま勉強しているものを無駄と思わず、一生懸命自分のものになるよう頑張ってください。
 
 
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