水嶋 貴子さん(アルゼンチン/ブラスパスカル大学)

私は2012年1月末から、アルゼンチンのコルドバにある、ブラスパスカル大学で1年間、認定留学として勉強しています。ここでの留学を決意する前は、アルゼンチンどころか中南米はわたしにとって全く未知の世界で、留学が決まってからも日本でコルドバの街の情報は少なく、出発前はいろいろ不安でしたが、初めて生活した南米の街は、都会のわりに自然も多く、人々もどこかのんびりしていてとても住みやすいところでした。また日本人も少なく、語学を習得するにおいてすごくいい環境でもありました。

高校時代に一年間、英語圏に留学していた経験もあり、海外で生活するにおいて当時の自分には何が欠けているのか、どのようにしてそれを改善していかなければならないのか、理解していたとはいえ、同時にそのことが大きな不安にもなっていました。その一つがコミュニケーションをとる力で、思っていた通りこの国でも、自分を主張することはとても大切なことでした。大学で日本人4人を除くと、留学生のほとんどがアメリカ人で、当時スペイン語の会話レベルでいえば彼らはわたしたちよりも断然上でした。最初の一か月間のスペイン語集中講義では、こっちの生活にも慣れないし、授業も全くついていけず、またアメリカ人の威圧感にも圧倒されるばかりで、落ち込むこともたくさんありました。しかしその経験は私にとって、残りの10か月を過ごすための大きなバネになりました。
「できる他の留学生に対して壁を作るのではなく、下手なスペイン語でも同じ言語を学ぶ仲間として接して行こう。」そう考えられるようになってから、ここでの生活も少しずつ変わっていきました。留学生用のクラスは全て少人数制で、そこで自分の国や人々について発表したり、また他の留学生からそれぞれの国のことを学んだりしながらアルゼンチンについて勉強することはとてもいい経験となりました。今では一緒に遊びに行ったり、旅行をしたり、国は違えど、留学でしか味わえることのできないアルゼンチンの文化を一緒に体験していける仲間となっています。

また、わたしの留学にとってすごく大きなものなったのが、来たばかりで全く理解もできないのに、思い切って選択した観光学の授業で出会った現地の学生たちでした。みんな明るく優しく接してくれて、珍しい日本人の私にすごく興味をもってくれました。授業の一環で街のシティーツアーに行ったり、プレゼンをしたり、たくさんのことを経験する中で、自分の課題となっていた自己主張も次第にできるようになっていきました。そして彼らのおかげで新しい人々との出会いが、いかに素晴らしく、自分に影響を与えてくれるのか知ることができ、そのことがきっかけで自然と「もっと人と話したい。自分のことをもっと知ってほしいし、相手のことを知りたい。」と思うようにもなりました。そうしてたくさんの出会いがある生活の中で、私が来る前に抱いていた不安もいつしかなくなっていました。後半のsemestreではanimacionの授業を選択し、毎日大量の絵に追われていますが、それもまた新しい経験で、留学のいい思い出となっています。

また、コルドバに住む日系人の人々との出会いは、新しい見方で日本について考えるいいきっかけとなりました。家族を大切にするこの国の文化で育った彼らの絆はとても強く、日本人以上に日本の文化を大切にし、それを受け継いでいこうとしています。彼らと関わっていく中で、本来の日本文化の美しさや礼儀正しさを改めて学ぶことができました。

こうして充実した留学生活をおくれているのも、ここで一緒に勉強している日本人の友達の支えあってのことです。最初は、語学習得のためにもあまり一緒にいないでいようと思ったり、いろいろと考えすぎて焦ったりもしていました。しかし今では同じ悩みを唯一分かち合える仲間として、彼らは私にとって本当に力強い大切な存在です。 同じ日本人でも一人一人が自分らしさを持っていて、聞き取りが得意だったり、単語をよく知っていたり、勉強熱心だったり、お互いにお互いの良さを認め合い、分かち合い、高めあっていくことで、私たちそれぞれが自分にしかできない留学スタイルを見つけることができたと思います。性格も興味もバラバラで、今では授業でもほとんど会うことはありませんが、たまにみんなで集まって近況報告しあうことは、「明日からまた頑張ろう」と思えるエネルギーになっています。

日記を読み返してみても、今までの10か月間で、たくさんの出会いと体験を重ねるたびに、それまで自分が持っていなかった新しい考え方と文化を学ぶことができていました。そのことは私のこれからの人生にとっても大きな自信に繋がっていくと思います。まだまだ私のスペイン語力は思い描いていたものには全然届いていませんが、それでもこうして、もっと話せるようになりたい、と思えるのは、ここコルドバでの生活がわたしにとって本当に特別なものとなったからだと思います。

アルゼンチン/ブラスパスカル大学 水嶋 貴子

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