留学が自分を知るきっかけに(辰巳 脩人さん)

私は2017年9月から2018年7月まで、南イタリアのレッチェという街に語学留学をしていました。レッチェには日本人がほとんどいないため、初めは苦労したこともたくさんありました。洗濯機の使い方、鍵の開け方、役所とのやりとり…など、今思い出しても本当に多くの苦労がありました。日本とイタリアは文化が180度違うといっても過言ではないくらい違うことだらけです。そんな体験も、今となってはいい思い出です。日本にいては決して経験できないことでしたから。

私は現地で主に言語学やイタリア語文法を学んでいました。言語学はイタリア人と一緒に、文法はヨーロッパやアフリカを中心に世界各国からの留学生と一緒に受講しました。言語学の方は先生が板書をしないので、内容を聞き取る力が身に付きました。最初はもちろん話すスピードについていけませんでしたが、半年後には何を話しているのかは理解できるようになりました。文法の方では世界中の人と友達になれました。帰国した後も頻繁に連絡を取り合っている人もいます。授業ではテキストを用いて正しいイタリア語を学ぶという点に重きが置かれていました。

家はイタリア人の男性1人とシェアをしていました。彼とは生活のリズムが違ったので食事はそれぞれでしていましたが、共用スペースで話をしたり、日本食をつくってあげたり、仲良く生活していました。日本では実家暮らしだったため、自炊も初めはなかなかうまくいきませんでしたが、だんだんレパートリーも増え、パスタを麺から打ったりもしました。

平日は朝から夜まで授業が詰まっていて、帰ってから復習や課題をして寝る、という生活が続いていました。しかしその合間に、友達の家に遊びに行ったり、ホームパーティーに招待してもらったりと、イタリア人と多くの時間を過ごしました。日本ではあまりしなかったこととして、夜によく友達と散歩をしました。課題が少ない日や外食したいなあと思ったときなどは、自分から誘うこともありました。生活リズムや文化の違いに最初は戸惑いもありましたが、ここでしかできないことをしっかり楽しもうと思い、積極的に活動していました。

京都産業大学の同級生は、イタリアの文化や歴史、料理やサッカーなど、何かしらに興味をもって入学した人が多かったのに対し、私は大学に入学するまでイタリアについて何の知識も持っていませんでした。「ローマがすごい」くらいのことしか話せませんでした。しかし、イタリア語を学んでいくうちに、自分の語学力を試したい、イタリアという国を自分の目で見てみたいという気持ちが大きくなりました。また、高校生の時から「留学したい」という漠然とした気持ちだけは持っていましたので、自然と長期留学を考えるようになりました。私のようなケースは珍しいと思います。同じ時期に留学していた同級生や、過去に留学された先輩方は、はじめからイタリアが好き、イタリアの○○が好き、というのがありました。とはいえ、留学する前に必ずしも明確な目標を持っている必要はないと私は思います。その理由を少し説明したいと思います。

私は小さいころから旅行が好きでした。両親がいろいろな所に連れて行ってくれていたからです。そして今は写真を撮ることも好きです。休みの日にはイタリア中を旅して回りました。そうして旅行を続けるうち、自分の好きなことが分かってきました。イタリアの街並み、特に世界遺産を見て回るのが好きなのだ、ということに気が付きました。イタリアには2018年現在、コロッセオやピサの斜塔などをはじめ、53か所の世界遺産が登録されています。私はそのうち、31か所実際に自分の目で見ることができました。歴史が深いイタリアにはさまざまな種類の遺産が残されています。街によって風景が全く違います。そういったものを肌で感じられたのは、自分にとって大きな財産となりました。また、そういった旅行を通して、これからの就職活動で目指していく方向性も見つけられました。現在具体的な就職活動はまだ行っていませんが、旅行会社などに就職したいと考えています。

この留学を通して、人と積極的に関われるようになりました。人前で話すのは苦手ではありませんが、個人との関わりを持つのが上手ではありませんでした。しかし、多くの国の人と出会い、友達をつくっていく中で、対人面において成長することができました。

留学によって得るものは、人それぞれ違います。語学力が著しく伸びる人、歴史や文化に詳しくなる人、さまざまな人がいると思います。そのような中で、私は社交性というものを手に入れました。

留学は本当に人を成長させてくれます。きっかけは何でもいいんです。その国のことに詳しくなくたっていいんです。迷っている方はぜひ、一歩を踏み出してみてください。
PAGE TOP