ドイツに留学した柿田 洋平さんより留学の帰国報告が届きました

留学の帰国報告

観光保養地のシュトラールズントへの旅行の途次、クラスメートと
2015年度のグライフスヴァルトはとても治安の良い街でした。田舎ですが、多くの外国人が住んでおり、ドイツ人も外国人も良い人が多く他の町と比べて理想的な環境に恵まれました。

しかし、外国人に職業を提供する求人が少ないため、学生の身分の外国人が多かったように思います。最近の日本ではドイツのように地方でも経済や文化の面で、活力が出てきていますが、この町はその理想に合致しているともいえるでしょう。勿論、日本に比べてここの町だけでなく他のドイツの都市やヨーロッパの地域でも、日本と比べると歴史的な地区があり、自然に恵まれ、農村部は土地も広く田舎だと感じました。

このグライフスヴァルトの町でも毎月町のイヴェント雑誌が出版されているぐらいですから、毎日様々なイヴェントを町の人たちは自分たちで行なっています。ここの町は学生の町で、大学が強い力を持っていて大学主催のイヴェントが多かったです。京都も学生の町と言われるので京産大の主催のイヴェントが開催される場合には、学生だけでなく、一般の日本人も外国人も多く参加して欲しいと感じました。また外国人でも現地語であるドイツ語でコミュニケーションをとり、努力して現地にとけこめ、いろんな人のためになるような活動をされている人が多くいました。この町で素晴らしいと呼べる行事はロシア人が毎週金曜日の夜に行なっていた茶会でした。日本では飲み会といって酒を飲むことが多いですが、ここではマテ茶や日本茶のようにお茶は重要で、この会で最も重要な「怒ってはいけない」という理念は日本だけでなく世界中の人間がそうであるべきだと感じました。この会に沢山いたロシア人やドイツ人が日本ではあまりいませんが、この町ではかなり親日家の人も多く、特にロシア語の通用範囲は大きく、現在日本でグローバルな共通外国語として認知され始めている英語よりもロシア語の方がより多く共通語として使われていたので、その重要性を知りました。今後北、西、中央アジア、東欧といったところへ日本が進出し、日本にもこれらの国の人が来た時のことを考えてもロシア語はかなり重要だと考えます。また、その他ポーランド語などもスラヴ語圏のスラヴという結束感を持てることに貢献しており、この茶会や他の催しで感じとれるスラヴ文化圏の地域に対してもっと日本でも知られて欲しいなど、様々なことを考えました。勿論、ドイツにはその他にアラビア語やトルコ語、ヴェトナム語などといった日本ではあまりメジャーでない言語もよく話されていて、日本人でも今後これらの言語を学習する人が増えるのではないかと感じました。日本では、外国人と話すときは英語で話さないといけないと考える人が多いですが、ドイツではいろんな国からの移住者も多いため、まずは現地語であるドイツ語で話してみるということが大事です。同様に、日本でもどんどん外国人が日本語を使うようになり、逆に日本人が彼らの諸言語についても知るように努力して、日本語の価値を上げ、日本語が世界で最も重要な共通語になってほしいと感じました。ドイツに来ている外国人の多くの人が思うことですが、世界共通語は英語だけではなく、ドイツ語、さらには他の言語や人工言語(エスペラント)、そして手話、音楽などもまた共通コミュニケーションツールであるのです。

日本のことを宣伝するためには、前提として「相手の文化や背景を知っているのか?」と問われるかと思いますが、「このように日本人は外国のことを沢山知っているのだよ」と博識になれば、外国の人は日本文化をより良く理解してくれるでしょう。


グライフスヴァルトでの茶会
ドイツ人もロシア人も、さらには他の国の人もそうですが、茶、コーヒー、酒、タバコなどの嗜好品に興味がある人は多いと思います。中でも茶の文化、茶会の重要性を感じているロシア人やドイツ人は多かったです。日本では、あまり茶会をすることはなく興味のない人が多いですが、海外では逆に日本の方が茶の文化が高いと思われているようでした。彼らは世界中の茶や音楽、文化について探求心があり、その中でも日本の文化には特に興味があるようでしたが、残念ながら日本よりもドイツの方が文化を追い越しているものもたくさんありました。例えば、豆腐、ヴェジタリアン食品、グルテンフリー食品、自然食品など、ドイツにいる人々は日本の方が文化の面で高いと思っていても、私はスーパーの充実具合から断然ドイツの方が食料品ではより細かく取り揃えていると感じました。寿司にしてもヴェトナム人がやっている寿司屋がドイツには多くその他の国でも一般的ですが揚げた寿司など美味しくて新しいものが一般的で驚かされました。ただし値段はかなり高かったです。また音楽の国ということもあり、言語以外に世界中の様々な音楽ジャンル、楽器などを知っていることもドイツでは重要で、日本では篳篥のように日本の伝統楽器が一般的でないなど、日本人なのに日本のことを知っていない人が多いのではないかと、こちらで感じました。多くの地域ではその地域の特色として、それぞれの地方独特の楽器や郷土料理をあげますが、日本ではまだまだこの点でも遅れていると感じました。他国の文化を知る上で日本の文化や更に別の地域の文化を知ることが私たちにとって重要なのは、似ているものを見つけやすいからということで、説明がつくでしょう。ほかの国の料理や楽器と日本のものがかなり似ていると感じることが沢山ありました。それは似た環境であるためや起源が同じだからという理由があるからです。ですから、留学中は古代から存在する似たものを見出すこと重要となってきます。そして、逆に各地域毎の違いも見ることが大事です。食材で言うと例えば餃子などがそうですが広範囲にあって、各地域毎に微妙に違うので、ドイツ人やドイツにいる外国人たちは日本のものにも興味を持ってくれました。

この町の中で日本人の比率は他の外国人に比べて極めて少なく、本当に日本が大国なのかと思えるほどでした。私が留学中にこの町の日本人居住者に会ったのは2回だけでした。また、この街だけでなく他のドイツの都市でも例えば欧州最大の日本人街があるといわれるデュッセルドルフですら、他の外国人の方が圧倒的に目立ち、日本について知らない人も多くいました。したがって、これからは日本人同士で争っているようではいけない、日本の知名度のためにもっと団結して移住や、企業進出、ネットを活用した呼びかけやコミュニケーション行為、日本に外国人を呼びこみ彼らが日本の素晴らしさを感じ取ってくれて口コミで広げていってくれるように配慮しないといけないと感じました。そのためには日本語以外の言語やその特徴、さらには日本の各地域の方言などとも親しむことが重要で、この面では日本語話者は言語能力が高いと留学中に経験しました。今まで私もあまり意識していなかったのですが、日本語には様々な外来語や方言からでてきた単語、様々な世代や地域による言葉の違い、文字の種類、他のあらゆる言語との様々な面からの類似、学ばなくとも中国語の漢字がわかったりすることを外国人に指摘されたりし、自分でも確信することができました。また、日本人は英語ができないと言われていますが、義務教育で習うことと、英語からの外来語を多く取り入れているので、学習していなくとも日本人には英語が分ることもあることなどは、英語学習を一切したことのない人々から高く評価されていました。今後、日本人が更に言語分野で博識になって欲しいと感じました。

グライフスヴァルトに留学している外国人はほとんどの人が医学部などに入るためにドイツ語学んでいる人で、自分の研究分野を学ぶために当初まったくできなかったドイツ語を三ヶ月から九ヶ月で習得している人も沢山いました。しかも彼らはシリアなどのアラビア語圏の人でした。彼らの言語はドイツ語に似ていないにも関わらず、彼らがドイツ語をマスターできるようになっていたのには考えさせられました。一説には幼少期にコーラン暗記で暗記力を鍛えられているようようですが、他の宗教を信仰していて、暗記をしない人も多かったです。また、ポーランド人もドイツ語や他の言語、例えば日本語の知識が豊富でドイツに留学で来ていましたが、これはポーランド語がかなり複雑で日本人のように、小学校で何度もポーランド語の単語を間違ったら書いて覚えていくなどの練習、文法構造が難解なのでそれを理解しようとする熱意が出来上がっているということで説明がつくのではないかと思います。

彼らを含め外国人は、日本のことを他の国よりも知っている人が多く、その理由はアニメやIT技術、電子ゲームなどにありました。現在、日本ではこれらを基礎にした日本の主力輸出品が終わったという人も多いので、終わらせてはいけない、他の伝統的なビジネスプランを援用して、新しい商品を開発し続けていくべきであると感じました。特に日本では他の国と同じように古典的なものをどう扱っていくか、小さい会社と大きな会社での経営方針や商品開発の違いなどの問題があるとドイツで感じました。

海外に留学すれば、日本にいる時にはなかなかできないことですが、沢山発見できます。それらの発見物を回りの人に伝え、ドイツのこれは日本ではできない、日本ではあたりまえのこの製品が外国では売ってないので買っておくべきだなどと言うことができ、助言もできます。しかし、多くの人はそれを実感できないし、重要だと思わないので、具体的にアドバイスに従って動いてくれないでしょう。これはなにも物理的なものだけではなく、精神的なものも多く含まれます。日本では例えば就活や学歴をつけることでは頑張りますが、それらは他の世界にいけば意外にもそれらが無くても生きていけるし、周りからの目なども気にしなくて良いと考えられるようになります。或いは逆に、今まではそうしていなかったが、自分の心の目で見てみるとそのほうが重要だと思えることがあります。ドイツにいて日本ではなかなか時間など取れなくて読めなかった書籍などを読むこともできました。物理的な位置からいうとドイツと日本は遠く隔たっていますが、ドイツにいる時も日本にいるときも精神的なことであれば、同じ位置に立てることもできるし、自分の精神とは一切関係のない感情であれば、ドイツ以上にそれは自分よりも離れたものであるといえるでしょう。

このように、精神的な距離を計測して、例えドイツに行くことができなくてもドイツ以上に離れた距離のものを日本でも手にすることができます。しかし、それはかなり難しく日本にいては実は身近なものであっても、ドイツに行くことがあってはじめて、それが凄いものだとわかり熱中してしまうことになることが多いでしょう。ですので、今海外に居る人が日本にいてもできるようなことをしていても、それは本人にとっては大発見であり海外にいるからこそできるものであるという、こちら側の理解も必要です。また、日本にいて実は遠い距離にあるものを発見して日本でそれを応用し、適用できるようにするには、彼らが海外で何をしているかという情報によってわかる場合が多いと判断します。ですから、日本にいる人もこれらのことを含め、日本ではなかなかできないが、実は遠い距離にあるのだが、非常に身近なこともあることを知っておいてもらいたいと思います。公共の施設や京産大を利用するなど、限定された中でも楽しめること、触れることができることも多いと思います。特に京産大の歴史、荒木俊馬学長の人生、校歌などを京都産業大学から入った学生は知っている人が少ないです。現在留学している人、していない人も京都産業大学が宝の山であること知り、それを自分のものにするために沢山これらのことを学ぶべきです。私は京都産業大学附属中学校から京都産業大学の系列に在籍していますが、中学や高校ではよく校歌を歌い、その込められた意味にある愛校心、理念を学びました。グライフスヴァルトでも愛国心、郷土愛、グライフスヴァルト大学への愛校心をよく知り、更にそこから受け取った愛をさまざまの人たちに受け渡していく、寛容な愛に溢れた人を私は沢山知ることができました。実際に行ってみることで、私の言っていることはわかるでしょう。是非、これからもグライフスヴァルト大学と京産大の関係が良好のままで、多くの日本人がグライフスヴァルトや同地の学生の出身地や国に行き、また多くのグライフスヴァルト学生が国籍や民族に関わらず日本の京都産業大学に来て欲しいと感じました。

京都産業大学が抱えている問題の中にはドイツが抱えている問題と類似しているものがまれにあります。私もそうですが京都産業大学には内部生というのが非常に少数ですが、在籍しておりそれらに付随する問題がドイツ国内でもたまに問題にされる少数民族問題や移民問題に似ていると思うこともあります。京都産業大学の学生は身の回りの人間問題を知れば、ドイツが抱えている大きな問題も自分にとって遠い存在ではないということがわかると思います。まずは、茶会などで様々な問題をよくよく見てみれば良いでしょう。そして、この「報告」を読まれた方が、京都産業大学が発展し世界の様々な地域や国に貢献できるようにと努められ、楽しい日々を過ごされることを望みます。私もできれば、グライフスヴァルトのように金曜日の茶会を開くようにロシア人主催者から頼まれており、是非とも京産大のため、世界のためにそれを主催したいと思います。

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