山田 剛士さん(ニース/ニース・ソフィア=アンティポリス大学)

フランス留学体験記

美しい街ニース

ニースの海岸沿いを歩きながら、左を向けば美しい海が広がり、右を向けば美しい建物が軒を連ね、上を向けば青々とした大きな空に燦々と太陽が輝く。いつかこんな街に住んでみたい。数年前に旅行で訪れたこのニースの地で、ふとそんなことを考えていました。自分のフランス語をよりレベルアップさせるためにフランス留学を決意した際、迷うことなくニースを留学先に決めました。提携校ではないニース大学への留学のため、ヴィザの申請から住居の契約、大学の登録など様々な手続きを全て自分一人でせねばならず、渡航前はそれらに追われかなり大変でしたが、それでもあの美しい街で生活できるとなるとわくわくして心が躍るようでした。

フランス人になる

「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますが、これは海外で生活する上で非常に大事なことだと私は考えています。それはつまり、その国の文化、習慣を理解し、尊重するということです。私はフランス人になる、(といっても実際には無理なので)なりきろうと考えました。自分は外国人ではない、この国で生きているのだからフランス人なのだと。そうすることで、「自分は外国人だから」などという甘えはなくなり、「フランス人なのだから」フランス語を話さねばならないし、フランスの文化、習慣を知らねばならないと思うようになりました。フランス語の勉強の為に見ていたテレビで、新聞で、あるいは学校で、レストランで、道端で、至るところで次々とフランスの文化、習慣を発見しては、勘違いながらも自分がフランス人に近づいているような気がしていました。また、外見からフランス人になってやろうと思った私は、髪型をフランスの若者の間で流行っているアラブ刈り(アラブ系フランス人がこぞってしている髪型)にしてみました。思い切って美容室に飛び込んでアラブ刈りにしてくれと頼むと、カリスマ美容師のカデルさんは「大丈夫か !?ほんまにええんか !?」とかなり驚きながらも、上機嫌でカットしてくれました。気を良くした彼は「俺がカットする客の中でお前が一番似合ってるわ !!」と見え透いたお世辞を言ってくれました。また、友達のフランス人たちにも大好評で、友達に会うたびに「カッコええやん !!」とほめてくれました。フランス人は自分たちの言葉、文化にとても誇りを持っています。そのため、それに興味を持ち、受け入れてくれる外国人を見るとたまらなく嬉しくなるのです。

一見さんは客、常連は友達

フランス人は見ず知らずの初めて来たお客さんに対しては冷たいところがあるのですが、何度も何度も足繁く通ってくる常連客にはまるで友達のように接してくれます。というか、常連客は友達なのです。私の行きつけだった居酒屋の店長は、行くと毎回「元気か 、友達よ!!」と歓迎してくれ、そこらじゅうの客に「日本から来た友達だ 」と紹介してくれるのです。お酒をサービスしてくれたり、パーティーに招待してくれることもよくありました。「日本に帰る」と言うとまるで息子の旅立ちのように悲しげな顔で、「いつ帰ってくるんだ」と聞いてきます。「来週また来るよ」という僕のジョークを彼は半ば本気で待っているのです。これからフランスで生活してみようかと考えている人には、行きつけの店を作って常連になることを勧めます。

C’est la vie !!

異国の地フランスで生活するということは決して簡単なことではありません。必ずと言っていいほど何かしらのトラブルが起こるし、自分の国とは全く違う習慣に戸惑ってしまうことだってあります。そもそも日本ほど便利な国は他にないのです。海や空、建物、金髪美女など、この国の美しいものに目を奪われていると犬の汚物を踏んでいるとか、自動販売機に2ユーロ入れて1.5ユーロのジュースを買えばお釣りが0.2ユーロしか返ってこない、試験の為に隣町まで電車で行けばストのせいで着いた頃には試験が終わっている、レストランに入って会計をしようと思ったらカバンが開いてて財布がない、道端でおじさんとおじさんがキスしているのを目撃すれば「何見てんねん !!」と追いかけられる、などなど日常生活でのトラブルは後を絶ちません。それでもフランスには日本での何気ない生活の何倍ものおもしろさがあるように思います。誰かが落ち込んでる時、失敗した時、フランス人はみな口を揃えて「C’est la vie !!」といいます。「それが人生さ。くよくよしてたって仕方ない」という意味です。人生にはいいことだけではないのです。いいことがあればよくないことだってある。だからこそ人生はおもしろいのです。フランスにはそれがあるのです。

外国語学部 フランス語学科 山田 剛士
 

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