平成28年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

以下の科目群間の満足度などの内容面に関する評価の大小関係については、従来と変わらない。

これまでは平均値を見ていたが、今回は、より状況を具体的に把握できるように、各回答の割合を示すことにする。

今回、気になったのは、春学期に比べて秋学期の評価が高いという一般的な傾向に反して、必修語学1年次生の評価が下がっている点である。
また、各授業ごとに満足度の平均値を取ったものを、科目群別に箱ひげ図*にした。

各回答の割合の結果と対応する結果が出てきたが、授業間での差もかなりあることが分かる。科目群全体として満足度が低い場合でも、満足度の高い授業を参考にすることによって、改善できる可能性が示唆されている。
特別英語については、春学期の実感調査においてより正確な調査の必要性が出てきたため、秋学期には全ての授業で実感調査を実施した。特別英語には以下の三種類の授業がある。

T 「事前登録クラス」 レベル別の希望の科目に応募して履修するクラス
TT 「指定クラス」 ヨーロッパ・アジア言語学科生1・2年次生、英語・国際関係学科1年次生向け曜日・時限固定のクラス
TTT 「自動登録(特別)クラス」 ヨーロッパ・アジア言語学科生で、4セメスター終了時に特別英語修得単位数が8単位に満たない学生向けクラス

満足度については、選択できない科目が、選択できる科目よりも満足度が低かった。

特別英語についても、各授業ごとに満足度の平均値を取ったものを、科目群別に箱ひげ図*にして、授業間の違いを見てみた。

各回答の割合と対応する結果となっているが、科目群内でも差が見られる。選択できない科目群においても、満足度の改善の余地がある可能性がある。
最後に、今回は、入学年度別に満足度がどのように異なるか見る。

1・2年次生に比べて、3年次生、4年次生と進むにつれて、満足度が上昇している。上述の通り、必修語学は、1年次生に比べ2年次生で満足度の低下が見られるのだが、受講科目を総じて見ると、さして低下が見られない。2年次生になると、新たに受講できる科目が増えて、必修語学での満足度の低下を相殺しているのではないかと推定される。3年次生と4年次生では、上述の通り、研究演習・演習Bの満足度が高いが、それに加えて回答数が減少してくるので、これらの科目の効果がより一層拡大されて数値を押し上げていると思われる。
1・2年次生では、春学期よりも秋学期の方が満足度が上昇しているが、3・4年次生ではそのような傾向が見られない。これは、1・2年次では、多くの必修科目が春学期科目と秋学期科目を通して通年で完成する印象が強いため、年度の最後には達成感により満足度が上昇するのに対して、3・4年次では、学期ごとに独立して履修し、完結している印象が強くなるためではないかと推測される。

*箱ひげ図…データを小さい順に並べて、データの個数を4等分する位置を示す図。左のひげの端が最小値、箱の左端が第1四分位点(小さい方から4分の1に位置する値)、箱の中の線が中央値(中央に位置する値)、箱の右端が第3四分位点(小さい方から4分の3に位置する値)、右のひげの端が最大値。高等学校では2013年実施の指導要領から数学Iに「データの分析」という単元が設けられ、箱ひげ図も導入された。2015年度からセンター試験にも出題されている。更に、次期指導要領では、中学校に移行される。統計教育の低年齢化が進められる中で、箱ひげ図はデータの分布を大まかに掴むための基本的なツールとして位置付けられたと言える。

 

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    • 11月1日 専攻インドネシア語(会話)Ⅱ(エディ教授)教職員6名
    • 11月10日イタリア学入門Ⅱ(小林教授)教職員4名
    • 11月10日ヨーロッパの文学(小林教授)教職員7名
    • 11月15日専攻イタリア語(構造)Ⅱ(小林教授)教職員2名
    • 11月16日専攻イタリア語(構造)Ⅱ(小林教授)教職員7名
  2. 「ワークショップ」:11月16日(教授会後)42名/59名(71.2%)

(2)ワークショップでの意見交換内容

「専攻インドネシア語(会話)II」では、学生がスマートフォンで会話を録音し、メール添付により提出させていた。かつては、LLでカセットテープを使って行われていたが、スマートフォンを用いて、より効率的に行っている事例である。新しいテクノロジーを用いての教育への応用の取り組みであり、これから推進していかなければならないBYODの実践例としても評価できる。
「専攻イタリア語(構造)II」では、学生たちが問題の解答の根拠を説明し合うというグループ活動を取り入れていた。従来、文法の授業ではアクティブ・ラーニングの導入は難しいとの声が多く聞かれたが、それが実は可能であることを示す事例であった。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

学習成果実感調査」についての分析結果を見ると、本学部の授業・カリキュラムは総体的には肯定的な評価を受けている。
「公開授業&ワークショップ」では、新しい技術を授業に活用していく実践例を見ることができた。また、従来、アクティブ・ラーニングに向かないのではないかと言われていたタイプの授業でも、アクティブ・ラーニングを導入できることが分かった。
なお、本年度は、公開授業とワークショップだけでなく、全部で4回のFD研修会を行なってきた。

  • 4月20日(教授会終了後)
    テーマ「研究演習を学生主体のものにするためには」
    3名の事例報告&ワークショプ
  • 5月18日(教授会終了後)
    就職ミニ講演会 テーマ「就職活動中のゼミ生に対して、我々教員は何ができるか、何が求められるか」
  • 7月20日(教授会終了後)
    テーマ「アクティブ・ラーニング仕様の効果的な活用」
    各学科から代表者1名から事例報告
  • 9月1日 教授会前(午前中)
    ・9時30分~ 入試状況の分析結果説明会
    ・11時~ 大学生基礎力レポート結果報告会
  • 11月16日(教授会終了後)
    FD研修会(講師:関西大学 教育進部 森朋子教授)(FDワークショップと同時開催)
  • 3月17日(教授会終了後)
    FD研修会(1年間の総括)
    ・事例報告(関先生(中国語)・朴先生(韓国語)「観光マップ」)
    ・学科・専攻に分かれての「1年間のアクティブ・ラーニングの取り組み」の振り返り

最後の「振り返り」において、少しずつではあるものの、授業にアクティブ・ラーニング的な要素を取り入れる取り組みが行われていることが確認できた。今年度の重点テーマである「アクティブな学びに向けて」を掲げて活動してきた成果と言える。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

1年生から2年生に進むにつれて必修語学に苦労する学生が増えているが、それが満足度の低下にも表れている。この低下を食い止めるように必修語学の授業の方法を考えていく必要があるであろう。来年度は全科目において実感調査を行うので、より詳細な分析をして、改善の参考になる情報を引き出したい。
評価の際立って低い基礎演習についても改善が望まれる。同じシラバスで行われている授業であるにもかかわらず、高い満足度を上げているクラスも存在するので、そこにもヒントがあるであろう。 特別英語の「指定クラス」と「自動登録(特別)クラス」についても、同様に、改善が望まれる。

4. 次年度に向けての取り組み

次の4つの取り組みを柱にして進めていく。

  • キャリア形成支援をも見据えて「研究演習」の充実に向けた研修会等の取り組み
  • 「公開授業&ワークショップ」を中心とした各学科レベルでのFD活動の取り組み
  • 「学習成果実感調査」や聞き取り調査等による現行カリキュラム検証の取り組み
  • カリキュラム改善に役立てるためのルーブリック研究の取り組み
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