令和元年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

春学期の結果についてはすでに中間報告書において報告しているため、ここでは秋学期の結果について分析する。前年度と同様、全体としては概して良好な結果が出ている。まず授業への参加率について、演習系の科目を調査対象としていることもあり、非常に高い数値が出ている(設問1(授業参加の程度):15回中12回以上参加した者の割合は82%)。設問2「履修するにあたってシラバスを確認したか」についても、80%の学生が「確認した」と回答しており、全学平均よりも高い数値となっている。一方、設問2-2(シラバスに記載された準備学習等の指示を参考に学習を進めた)の割合は、全学平均よりは高い数値を示しているものの、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を含めて58%となっており、シラバスの活用方法に関しては依然として教員・学生双方にとって改善の余地があると言えるだろう。準備学習等を行った時間について(設問3)については、平均して2時間以上行っている学生の割合が38%と低い数値にとどまっているものの、春学期(30%)に比べると改善が見られる。学部独自の設問においては、設問4(グループワークの意義の実感)が79%(「強くそう思う」と「そう思う」を合わせた数値)、設問5(フィールドワークや調査研究の面白さの実感)が85%、設問6(文化に対する興味・理解の深まり)が94%となっており、科目・学科を問わず肯定的な回答が大半を占めている。昨年度より新たに設定した設問7(本・文献を読むことの大切さの実感)については、「強くそう思う」+「そう思う」の割合が92%(春学期79%)と今学期も高い数値を示している。一方、今年度より新たに設定した設問8(本・文献を読む習慣が身に付いたかどうか)については、「強くそう思う」+「そう思う」の割合が74%(春学期56%)となっており、本を読むことの重要性の認識に加え、読書する習慣も徐々に定着してきていることが見て取れる。今後も、文化学部独自の取り組みである「むすびわざブックマラソン」プロジェクトと連携しながら、初年次から本(文献)を読むことへの動機づけ・意識づけ・習慣づけをさらに推進していくことが望まれるであろう。なお、今年度から新たに導入した自由記述項目「文化学部のカリキュラム改善に向けて、何か意見があれば自由に書いてください」の欄には、実現可能性は別として、カリキュラムの改善を望む多くの声が寄せられた。今後、自由記述の詳細について精査・検討し、学部のカリキュラム改善につなげていきたい。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    10月15日(火)文学・芸術文化演習ⅡB(中西 佳世子 教授)3限、参加教員5名、学生12名
  2. 「ワークショップ」:
    10月15日(火)18:20~19:30、参加教員5名

(2)ワークショップでの意見交換内容

参加者数は5名と少なかったものの、ゼミ形式の授業(特に4年次のゼミ)の進め方・授業内容・授業の改善方法等について、活発な議論が交わされた。主な意見・質問は以下の通りである。

  • 全体的な授業運営や学生からの意見のとりまとめ・総括が見事であった。
  • ディスカッション時に、学生から積極的に意見が出ていたが、これは発表者が最初の質問者を指名し、その質問者が次の質問者を指名するという方法が功を奏しているということであろう。
  • 学生からの発表や質問に対して、教員が適切かつ丁寧にフォローしている。
  • 上記の質問者の指名方法に関して、学生が次に指名する相手を誰にするか考えた上で選んでいる、また質問の仕方・質問のあり方自体も学んでいるように見えたが実際はどうなのか?

【回答】教員が指名しないという点が重要、質問のつなぎ方も学生間で学びあっている。学生には普段から「何かを指摘することは相手を責めることではない」と指導している。

  • 卒業論文のテーマ選びはどのようにさせているのか?

【回答】春学期に書評大賞に応募させ、2,000字程度の文章を書かせる。その後教員との相談・促しを経て、就活開始前に「はじめに」を書かせ、卒業研究を行うにあたっての意識を高めてもらう。これは就活にも有効。

  • 文学理論・批評理論に関して事前のインプットはあるのか?

【回答】2年次の段階で文学理論を教授し、3年次の春学期にも文学理論について学ぶ。特に、ストーリー、プロット、視点、アイロニーなどの文学技法についてフォーカスするようにしている。

3.総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

文化学部の学生数は、京都文化学科と国際文化学科を合わせて一学年270名であるが、他学部と比較してもきめ細かな少人数制教育が実現可能な条件下にあると言える。学部の授業・カリキュラムの長所もこの点に集約されるであろう。具体的には、教員と学生との距離が近いこと、教員と学生また学生同士が密なコミュニケーションをとることができること、教員及び学生の間にフィードバックの機会も数多くあることなどを挙げることができる。総じて、学生が学修成果を実感しやすい環境が整っているとも言える。また、演習系の科目と講義系科目のリンク・連関も概ねしっかり意識されている。

(2)1と2において確認された改善すべき点

二学科間、また各学科のコースの間に履修制限等が存在し、学生の「履修のしやすさ」という観点からすれば、まだまだ障壁が存在する。再来年度より京都文化学科に「観光文化コース」を新設予定であるが、今後科目間の関連性の再確認や体系化をさらに進め、学部全体として一貫性・相関性のあるカリキュラム構築を目指したい。所属するコースによって履修可能な科目が限定されている状況がないか見直した上で、カリキュラムのさらなる改善を図りたい。

4.次年度に向けての取り組み

文化学部では、両学科のカリキュラムの各年次に演習科目を置き、少人数かつ段階的な学びを重視してきたが、来年度も昨年度に引き続き、初年次ゼミ(京都文化学科は「京都文化フィールド演習」、国際文化学科は「入門セミナー」)、2年次ゼミ(基礎演習)、3年次ゼミ(文化演習)、4年次ゼミ(文化演習Ⅱ)を対象にアンケート・公開授業・ワークショップを行い、学生の学びに対する姿勢、本を読むことの重要性の認識、授業・学びに対するモチベーション、満足度などを調査する予定である。また、調査結果について意見交換することを通して、授業及びカリキュラムの改善につなげていきたい。また、国際文化学科ではコース再編(総合文化コース、地域文化コース)が行われ、令和元年度より新カリキュラムが始動し、来年度からは2年次開講の「国際文化基礎演習」も開始される。今後も、従来のカリキュラムを見直すとともに、ゼミを中心とした学びを促すためのカリキュラムの構築及び充実を目指す。また、本学部独自の事業である「むすびわざブックマラソン」プロジェクトとの協働により、本を読むこと(広く言えば学部における読書文化の醸成)とゼミでの学びを連動させる試みにも引き続き取り組んでいきたい。
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