平成30年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

平成30年度の春学期分については中間報告において分析結果を提示したので、今回は秋学期分の分析結果について報告したい。春学期と同様、全体としては概して良好な結果が出ている。まず第一に授業への参加率であるが、演習系の科目を調査対象としていることもあり、非常に高い数値が出ている(設問1(授業参加の程度):15回中12回以上参加した者の割合は82%)。設問2「履修するにあたってシラバスを確認したか」についても、83%の学生が「確認した」と回答しており、全学平均よりも高い数値となっている。一方、設問2-2(シラバスに記載された準備学習等の指示を参考に学習を進めた)の割合は、全学平均よりは高い数値を示しているものの、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を含めて61%となっており、シラバスの活用方法に関しては教員・学生双方にとって今後改善の余地があると言えるだろう。また準備学習等を行った時間について(設問3)も、全学平均よりは高くなっているものの、平均して2時間以上行っている者の割合が35%と、期待される数値(例えば半期2単位の授業の場合、計3~4時間程度の事前・事後学習が必要)を鑑みると低い数値であると言わざるをえない。しかしながら平成30年度春学期の同設問の調査結果(25%)と比較すると、伸長が見られる。学部独自の設問においては、設問4(グループワークの意義の実感)が76%(「強くそう思う」と「そう思う」を合わせた数値)、設問5(フィールドワークや調査研究の面白さの実感)が84%、設問6(文化に対する興味・理解の深まり)が92%となっており、科目を問わず肯定的な回答大勢を占めていることがわかる。今年度新たに設定した設問7(本・文献を読むことの大切さの実感)においても、「強くそう思う」+「そう思う」の割合が88%と良好な結果が出ており、春学期の調査結果(73%)と比較しても着実な伸びを示している。今後も、文化学部独自の取り組みである「むすびわざブックマラソン」プロジェクトと連携しながら、初年次から本(文献)を読むことへの動機づけ・意識づけをさらに推進していくことが望まれる。なお、自由記述欄の学生からのコメントについては、授業を通じて「視野が広がった」「自分自身の成長を実感できた」「プレゼンテーション、コミュニケーションのスキルが上がった」「レポートや発表資料の作り方がわかった」「自分の考えを形成しそれを他者に伝えることの大切さと難しさを実感した」「専門的な知識を身につけることができた」など、概ね肯定的なものが多かった。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    11月6日(火):学校図書館演習(大平 睦美 教授)参加教員7名
  2. 「ワークショップ」:
    9月19日(水)教授会終了後:「教授パラダイムから学習パラダイムへ」参加教員14名
    スピーカー:宮川康子教授、大平 睦美 教授 モデレーター:鬼塚 哲郎 教授
    11月6日(火)授業終了後、参加教員7名

(2)ワークショップでの意見交換内容

9月19日(水):全体のテーマは、「文化学部において、教授パラダイムから学習パラダイムへの変換はどのように進めていくべきか」というものであった。宮川先生は、江戸時代における学びのあり方について紹介した。江戸期には、伊藤仁斎が主催した懐徳堂など、民間において各所に自由に学問ができる場所があったこと、知識伝授型の講義ではなく学ぼうとする者が主体的に参加する気風があったこと、時間も着席の仕方も謝礼の払い方も参加者次第で自由あったことなどが報告された。参加者からも、昨今教育界で叫ばれている「アクティブ・ラーニング」という概念自体を見直すべきという意見などが出された。大平先生からは、海外における図書館の運営の状況などについて報告があった。現代的な図書館情報学の潮流がある一方で、従来の方法論等も再評価されるべきでないかなどの意見も出され、活発な議論が交わされた。
11月6日(火):『ストーリーの心理学』という本の一部を、参加学生とともに議論をしながら読み進めるという授業であった。参加学生が、難解な語句や専門用語、キー概念、内容の理解の仕方などについて事前に調べたり考えたりしてきており、それを授業の場で共有するという形で進められた。授業後のワークショップでは、教員がすぐに答えを言わないこと、難解なテキストにも果敢に挑戦していくことの重要性など、様々な観点から議論がなされた、また大平先生からも、受講生が悩みながらも自分で問題を解決するというプロセスを重視しているなどのコメントがあった。

3.総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

文化学部の学生数は、京都文化学科と国際文化学科を合わせて1学年270名であるが、他学部と比較してもきめ細かな少人数制教育が実現可能な条件下にあると言える。学部の授業・カリキュラムの長所もこの点に集約されるであろう。具体的には、教員と学生との距離が近いこと、教員と学生また学生同士が密なコミュニケーションをとることができること、教員及び学生の間にフィードバックの機会も数多くあることなどを挙げることができる。総じて、学生が学修成果を実感しやすい環境が整っているとも言える。また、演習系の科目と講義系科目のリンク・連関も概ねしっかり意識されている。

(2)1と2において確認された改善すべき点

2学科間、また各学科のコースの間に履修制限等が存在し、学生の「履修のしやすさ」という観点からすれば、若干障壁が存在する場合がある。今後は、科目間の関連性の再確認や体系化を一層進めると同時に、学部全体として一貫性・相関性のあるカリキュラム構築を目指すべきである。演習系科目について言えば、例えば開講状況により、2年次に基礎演習で学んでいたことを演習Ⅰ・Ⅱで継続して学ぶことができないなどのケースが出てきている。所属するコースによって科目のラインナップが限定されている、もしくは乏しいという状況も今後改善すべきであろう。

4.次年度に向けての取り組み

平成27年4月に行われた文化学部の再編(京都文化学科の新設、国際文化学科のコース再編を含む改革)より、今年度(平成30年度)で4年が経過し完成年度を迎えた。これまでのカリキュラムでも各年次に演習科目を置き、少人数かつ段階的な学びを重視してきたが、来年度も昨年度に引き続き、初年次ゼミ(京都文化学科は「京都文化フィールド演習」、国際文化学科は「入門セミナー」)、2年次ゼミ(基礎演習)、3年次ゼミ(文化演習)、4年次ゼミ(文化演習Ⅱ)を対象にアンケート・公開授業・ワークショップを行い、学生の学びに対する姿勢、本を読むことの重要性の認識、授業・学びに対するモチベーション、満足度などを調査し、意見交換することを通して、授業及びカリキュラムの改善につなげていきたい。また、国際文化学科ではコース再編(総合文化コース、地域文化コース)が行われ、2019年度より新カリキュラムが始動する予定である。そのため、従来のカリキュラムを見直すとともに、ゼミを中心とした学びを促すためのカリキュラムの構築及び充実を目指す。また、本学部独自の事業である「むすびわざブックマラソン」プロジェクトとの協働により、本を読むこと(広く言えば学部における読書文化の醸成)とゼミでの学びを連動させる試みにも取り組んでいきたい。
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