平成27年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

今年度は必修のゼミ科目、1年生対象の「入門セミナー」「京都文化フィールド演習」と2年生対象の「文化基礎演習」で実施した。全29科目中82.76%の実施率、回答者数は246人、回答率86.32%である。
設問1.「出席率」と2-1.「シラバスの確認」については、それぞれ4.80、4.44であり全学平均を上回っている。4.「グループワークの意義」5.「フィールドワーク/調査研究のおもしろさ」についても、4.30、4.33と充分に実感されている。さらに、6.「文化への理解の深まり」や、7.「授業の満足度」を問う設問においても、4.50、4.56という好結果が出た。しかもこれらの設問については全て春学期よりも高い数値であり、1年間の学びの成果を示しているといえる。以上の結果から、ゼミ科目がディプロマ・ポリシーの達成にむけての学部教育の根幹として重要に機能していることがわかる。
設問3.「準備学習等」は3.40(約1時間程度)である。これについては、グループワークやフィールドワーク中心の1年生ゼミの結果が特に低く(出席率80%以上でも「入門」2.85、「京都」2.88)、2年生では3.75(出席率80%以上は3.77)に上昇している。授業時間外学習については、今後も引き続き重点課題として改善策を検討する必要がある。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

参加人数

  1. 「公開授業」:下出祐太郎教授「京都文化フィールド演習B」(平成27年12月24日(木)4限5226演)参加人数2名
  2. 「ワークショップ」:文化学部における初年次ゼミの課題について(平成28年1月20日(水)16時より11号館会議室)参加人数12名

ワークショップでの意見交換内容

京都文化学科の初年次ゼミの公開授業の報告をもとに、国際文化学科の「入門セミナー」の課題について担当者を中心に意見交換を行った。

①フィールドワークの導入について

  • ホンモノの「文化」に触れることで、文化学部での学びのモチベーションを高めることができる。
  • ゼミにおける主体性、協調性を身につけることができる。
  • 文献講読との組み合わせの調整が必要。
  • 実際の運用においては検討すべき課題が多い。時間、場所、引率、実習費等。

②ゼミの活性化について

  • 仲間づくりを目的化することには限界がある。
  • ゼミでの個々の研究を深めることを第一義的目的にすることによって活性化を図ることが可能。
  • 研究発表とディスカッションを指導するスキルを学ぶべき。教育工学の方法論が有効ではないか。教室環境の作り方、質問の仕方等。

③その他

  • 学部の専門教育への導入としての初年次ゼミで学ぶべきアカデミックスキルを明文化するなど、共有することが必要。
  • 2年次ゼミへの接続、他科目との連携が重要。

1年生から3年生までのゼミ担当者の配置/交代を検討。

総括

1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

ゼミは大学生活において最も重要な意義を持つが、特に、多様な学びを提供する文化学部では、ゼミを学部の学びを統括し順次深めてゆく場として、学部教育の根幹に位置づけている。新カリキュラムでは1年から4年までゼミを必修化している。
実学に重点をおいた京都文化学科では、必修化された初年度ゼミの「京都文化フィールド演習」が満足度(4.61)をはじめ高ポイントを示しているように、1年生から学科の学びを順次的に学ぶことのできる体系化されたカリキュラムを整えている。
国際文化学科の「入門セミナー」も、「文化への理解」や「満足度」においては、4.00(出席率80%以上の学生4.15)、4.35(同4.55)という高ポイントであり、文化学への興味を喚起させる導入教育としての役割を果たしているといえる。
2年生の「文化基礎演習」については、旧カリキュラムのゼミではあるが、出席率4.89、文化への理解4.58、満足度(出席率80%以上の学生)4.62という結果が示すように、ゼミが学部の教育目標に合致して成果を挙げていることを認めることができる。
以上のように、文化学部のカリキュラムの長所として、4年間必修科目として開講された少人数のゼミが機能しているといえる。担当教員の指導のもとフィールドワークやグループワークといった主体的な活動によって各自の関心あるテーマを追究することで、学部での学びを各自の視点で捉え直して応用し、深い文化理解に到達する力を身につけることができる。

1. と2. において確認された改善すべき点

改善すべき点は、授業外学習の時間である。全学平均を上回っているとはいえ、もっとも事前準備学習を要するゼミにおいて、学部平均が1時間から1時間半というのは不十分である。しかし、準備学習はゼミの学習内容にかかわる問題であるので、改善策を検討するにあたっては、ゼミのあり方を学部の教育目標にもとづくカリキュラム全体の体系と順次性との関係において検討する必要がある。
京都文化学科においては、フィールドワークの初歩を体験することで、京都文化への効果的な導入がなされているといえるが、準備学習時間の少なさが示す改善点は、体験を活かすための京都学の基礎的知識の学習にも取り組ませることなどが考えられる。
国際文化学科においては、ワークショップや「入門セミナー」担当者会議において、2年生からの専門ゼミへの接続や1年生必修科目「文化学概論」との関連性が今後考慮すべき課題として提議されたように、大学生活への導入というよりも、3コースの専門分野の基礎知識を学習させる、より専門性の強い学習内容へと展開してゆくことが必要である。同時に、文化学の導入として「文化」を実感できるような体験型学習を取り入れることも検討すべきである。
新カリキュラムが始まって初年次ゼミは1年を終えたばかりであるが、文化学部の教育目標である、座学と実学の両輪からなる「生きた文化学」を身につけるためのアカデミックスキルについて明確にする必要がある。

次年度に向けての取り組み

次年度も引き続きゼミを対象に「学習成果実感調査」を実施することで、カリキュラム・ポリシーとの関連性、ディプロマ・ポリシーの達成度を見極めながら、学部教育の根幹となるゼミの充実をはかってゆきたい。同時に、ワークショップ等をとおして、ゼミのあり方を検証することで、学部全体のカリキュラム体系を検証してゆきたい。そのための具体的な方策の一つとして、文化学部のアカデミックスキルとは何かということの共通認識を構築し、明文化する取り組みを継続して行う。
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