学生諸君へ(学部長より)

大学での社会科学系の教育は二つの方式から成り立っています。ひとつはいうまでもなく講義形式の授業で、教員が話をし、それを学生諸君が聞くというスタイルです。そうしたレクチャー方式の授業は体系的に知識を伝える、逆に学生諸君の側から言えば、知識を得るという意味では、一定の意義を持っています。しかし、このレクチャー形式の場合、学生諸君はどうしても受け身になりがちです。しかも、対象がどうしても多くなりがちで、なかなか双方向で意見を交わすということは出来にくい欠点をもっています。もちろん、やり方によってはそうした双方向の授業は可能ですし、事実それを行っている講義もあります。しかし、たとえ双方向の授業が出来たとしても、そこには自ずと限界があります。レクチャー形式は、やはり知識を伝えるということを基盤としており、しかも授業の時間も限られていますから、徹底した議論は行いにくいからです。

しかし、大学というのは単に知識だけを得るところではありません。獲得した知識を基にして、自ら考える力を養うところでもあります。したがって、当然、知識を得る場の他に、そうした「自ら考える力を養う」場が必要になります。では、「自ら考える力を養う」場というのは、どういうものなのでしょうか?それは、「議論をする」場です。もちろん、「考える」という行為は個人の行為です。しかし、一人だけで「考えている」だけでは、なかなか「考え」は広がっていきません。他人と「考え」を交流させ、ぶつけ合うことで、個人の「考え」は、広がりを持ち、深まっていくのです。ですから、「自ら考える力を養う」場とは、「議論をする」場なのです。大学の社会科学系の教育のもうひとつの方式は、まさにこの「議論をする」ことを中心に行われます。それを私たちは「演習」形式の授業と呼び、そしてそれを行う場を「演習」と呼んでいます。カタカナで言うとゼミナール、略してゼミです。

この「演習」形式の授業は既に皆さん、1年次の時に経験されていますね。「基礎セミナー」と「外書セミナー」です。しかし、この二つは期間が限られていましたし、また、自分でクラスを選んだわけではありません。その意味で、この二つは「演習」の入門的な授業であると言えます。しかし、これから2年次になると、いよいよ本格的な「演習」に進んでいくことになります。本格的な「演習」ということをはっきりさせるために、2年次以降の「演習」を「専門演習」とも言います。

この「専門演習」では、担当する教員がそれぞれ、その年度のテーマを設定しています。それらのテーマはその教員の専門的な研究領域と密接にリンクしています。学生諸君は、それらのテーマの中から、自分がチャレンジしてみたいものを選ぶことになります。そして、その演習に参加し、教員の指導を受けながら「考える力を養う」ことになります。ほとんどの演習では、演習の大きなテーマの下で、参加した個々の学生諸君がそれぞれ個別のテーマを見いだし、それを研究していくようになっています。その過程で、自分で調べたことを踏まえて、議論を行っていきます。当然、自分の考えを分かってもらうために、プレゼンテーションも行うはずです。そうした議論を通して、自らの考えを深めながら、やがてその研究成果を卒業論文や卒業制作としてまとめることになります。

この「専門演習」は科目としては、「演習1」、「演習2」、「演習3」、「演習4」、「演習5・6」という5つの科目となっています。しかし、「専門演習」としての目的と意味から考えて、これらは一貫したものだと考えてください。形の上では、途中で抜けることも出来ますが、3年間にわたって、同じ仲間と一人の教員から密接な指導を受け、交流することに意味があるのですから、その心構えで参加してください。

とはいえ、この「専門演習」に参加するためには、いくつかの条件があります。

まず、人数です。教員の立場から言えば、演習には参加を希望した学生諸君すべてを受け入れたいのですが、しかし、あまりにも多いときめの細かい指導が出来ませんし、また「議論をする」ことも十分にはできません。ですから、参加してもらう人数は限定されざるを得ません。今年度の場合は、一つの演習が20名位となる予定です。そのため、最初の希望に添えないことがあることを承知しておいてください。その場合は、第二次募集に応募してもらうことになります。

また、「専門演習」に参加するためには、イントロダクトリー科目8単位と「外書セミナー」の2単位を取得しておく必要があります。これも心しておいてください。

その他、経営学部ではゼミ活性化を推進する目的で、「ゼミ研究報告大会」を秋に開催しています。普段の議論や研鑽を公けにする場があることを励みにして、充実したゼミ活動を行うことを期待しています。

以上のように、「専門演習」は「議論」を通じて自分を錬磨する場です。ただ、このように言いますと、演習はずいぶんかた苦しいもののように受け取られるかもしれません。しかし、演習に入ると同じテーマに魅かれた仲間と出会います。それらの仲間と教員を交えながら、議論し、また時には食事を共にしたり旅行をしたり、演習には多くの交流の機会があります。それらに積極的に参加していくことで、諸君の学生生活はますます活き活きとしたものになっていきます。それもまた演習に参加する醍醐味です。

ただ、「専門演習」はあくまで自分を鍛える場であるということは忘れないで下さい。その視点を見失わず、自分がこれから何を身につけていきたいのか、将来どのような方向に行きたいのか、それらの点をじっくりと考えて、演習を選ばれることを願います。
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