平成30年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

例年通りイントロ及びイントロ外科目共に、授業満足度、社会との繋がり、学科選択判断などにおいて高い水準を維持している。しかしながら、事前事後学習については、シラバスにおける表記や実際の授業において、担当教員から詳細な指示を出しているにもかかわらず、学生たちの実際の勉学時間は不十分なままであるという印象を受ける。この点については、今後も引き続き、受講人数、科目特徴、評価方法、教員区分、学年などの関係を、データに基づいて綿密に分析するとともに、教員間での問題意識の共有を徹底し、これらの課題の解決に向けて学部を上げて取り組むこととしたい。
なお、本年度から、学部独自の学習成果実感調査項目として、演習2・4を対象に、学生自身の入学後の「伸び」に関する調査を実施した。すなわち、本学部に入学してきた学生が、入学時に比べて書く、「読む」、「書く」、「伝える」、「発表力(プレゼンテーション力)」といった観点から、それぞれの「伸び」を主観的にどのように実感しているかを、本調査の調査することにより、学部教育の現状把握の一環とすることとし、ほぼすべての演習で回答を得ることができた。

また、具体的な設問は以下のとおりである。

設問9「読む力」
あなたは、入学時に比べて、本や記事を読んで理解する力が伸びたと思いますか?

設問10「書く力」
あなたは、入学時に比べて、自分の思いや考えを文章で表現する力が伸びたと思いますか?

設問11「発表する(プレゼンテーション)力」
あなたは、入学時に比べて、プレゼンテーションする力が伸びたと思いますか?

設問12「コミュニケーション力」
あなたは、入学時に比べて、他人とコミュニケーションをとる力が伸びたと思いますか?

本調査の詳細な分析は、今後時間をかけて行うこととなるが、全体を概観した印象では、「発表する力」、「コミュニケーション力」に対しては「伸び」を実感している割合が高いものの、「読む力」、「書く力」に関しては相対的にその割合が引く印象を受けており、本学部教育改善への示唆に富んだ内容であることがうかがえる。今後の継続的実施による、より多くのデータ収集と分析によって、学部授業の改善に対するインプリケーションを得ることが望まれる。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1) 参加人数

  1. 「公開授業」:
    本年度の重点テーマに沿って、春学期の4月から5月の早い時期に、新任教員に見学希望授業を選定してもらい、授業見学・意見交換の場を設けることにより、本学部教育内容を早期に理解させ、教育の質の均質化と教育環境への早い適応を図る。また、公開授業を通じて全教員間で各授業に関する情報共有を徹底し、学部教育環境への理解と教育の質の確保の改善を図る目的から、新任教員3名を対象に、以下の内容の公開授業を実施した。
    春学期:
    ①経営戦略論(久保 亮一 教授)4月27日(金)2限
    ②イノベーションマネジメント論(具 承桓 教授)4月23日(月)2限
    ③マーケティング概論(涌田 龍治 准教授)4月24日(火)4限
    また秋学期には、全教員を対象に、「会計学概論」(伊藤 正隆 准教授、平成30年10月8日(月)3限)の公開授業を実施した(参加教員4名)。
  2. 「ワークショップ」:春学期:全体のワークショップではなく、教員個別に意見収集を行った。 秋学期:平成30年10月8日(月)15時~16時(教員5名参加)

(2) ワークショップでの意見交換内容

春学期のワークショップでは、例年通り、新任の上元亘准教授、大杉卓三准教授、具滋承准教授を対象に、本学部の特徴、授業方法や学生への対応などを見学し今後の授業の参考にしていただいたことをうけて、担当運営委員それぞれが感じたことがらや問題意識について意見を収集した。
秋学期のワークショップでは、「会計の仕組み」をテーマとした当該講義について、伊藤正隆准教授と出席者間で意見交換を行った。教科書を十分に咀嚼したわかりやすい内容に対して参加者から評価する声がある一方で、教科書の内容と講義の関連をどう位置づけるかについての質問があった。これに対しては、教科書の各章末にある「クエスチョン」を活用するなどして振り返りを行わせているとの回答があった。
またこの他、moodleの活用状況や小テストの実施状況などについての質疑もあり、参加者間でそれぞれの問題意識を共有することができた。

3.総括

(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

これまで通り、初年次に経営学への興味を引き起こしつつ、基本諸概念を学ばせるイントロ科目の設置、今後の体系的な授業履修を提示している点。また、各授業では受講生が当該科目に対して興味を持つよう、身近な話題から導入し、かつ具体的な例を出すなど、教員サイドから積極的なアプローチが見られることが長所であると思われる。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

昨年に引き続き、事前事後学習と教育の質の向上を図るため、可能な限り大規模授業の低減を図ることで、事前事後学習を促せる体制を整えて行かねばならない。そのためには、moodleのさらなる積極活用による事前事後学習の実行や、デジタルサイネージを活用した社会状況の変化に対するタイムリーな情報提供を行い、学修意欲の向上に努めたい。

4. 次年度に向けての取り組み

本学部では毎年、「年次計画書」に掲げた上記の「公開授業」、「ワークショップ」の他、次のような教育FDを実施し、授業改善につなげている。

第1回教育FD
日時:平成30年7月18日(水)12時15分~13時15分
報告者:森永泰史
テーマ:ゼミ運営を巡る諸問題について

第2回教育FD
平成30年12月19日(水)12時15分~13時15分
問題提起:久保亮一・森永泰史
テーマ:「先生、この勉強していて何のためになるんですか?」

この第2回目では、教員の意見や考えを引き出すことを企図して、以下の3つの問いについて、参加教員が前もって考えてくるように工夫を凝らした運営を行った。
①「授業に興味が持てない」という学生に、何てフィードバックしてますか?
②学生の思考力を高めることを意識して、ゼミやっていますか? 具体的に、どんなことやってますか?その効果はいかがですか?
③「先生、この勉強していて何のためになるんですか?」、という(ゼミ生からの)質問にみなさん何と答えますか?
さらに、昨年度に引き続き、大学教育における研究能力の重要性に鑑み、また、学部教員間相互の研究活動を認識するために、教授会前のお昼休みに研究FDを(場所はいずれもミーティングルーム2、12時15分から)に、パワーランチと称して以下のように実施した。

第8回 平成30年4月18日(水)
報告者:橋本 武久 教授
テーマ:会計史研究と大学教育(仮題)

第9回 平成30年5月16日(水)
報告者:斎藤 健太郎 教授(経済学部)
テーマ:イギリスのEU離脱と二つのリベラリズムをめぐって

第10回 平成30年6月20日(水)
報告者:諏澤 吉彦 教授
テーマ:公的年金と私的年金保険の機能分担—分離均衡モデルからの分析—

第11回 平成30年9月19日(水)
報告者:福冨 言 教授
テーマ:マーケティング論の新展開

第12回 平成30年10月24日(水)
報告者:金光 淳 教授
テーマ:いまどうしてアート・フェスティバルなのか?

第13回 平成30年11月21日(水)
報告者:柴 孝夫 教授
テーマ:なぜ社歌?

第14回 平成31年2月20日(水)
報告者:中野 幹久 教授
テーマ:SCMに関する研究動向と最近の(中間的な)研究結果

第15回 平成31年3月18日(月)
報告者:近藤 隆史 教授
テーマ:業績評価に関する研究(コンピュー タ・シミュレーションの可能性)の進捗報告

このような現状を踏まえて本学部では、次年度においても、①継続的に公開授業・ワークショップを実施し、回数および参加人数の増加を目標に、その活性化を図る、②ワークショップの議論内容を文書化するなどして学部教員で広く共有し、さらなる授業改善に努める、③少人数授業、とりわけ演習についての意見交換会を継続的に実施する。

日時 平成30年3月22日(木)15時30分~16時30分
場所 ミーティングルーム2
報告者 ①涌田 龍治 准教授、②佐々木 利廣 教授
テーマ ゼミ運営と近年の学生について

なお、この他、特別セミナーとして次のものを実施した。

日時 平成29年10月25日(水)12時15分~13時15分
場所 ミーティングルーム2
報告者 伊吹 勇亮 准教授
テーマ 課題解決型授業における法的課題への対処—伊吹ゼミの事例—

また、大学教育における研究能力の重要性に鑑みて、研究FDを教授会前のお昼休み(場所はいずれもミーティングルーム2、12時15分から)に、パワーランチと称して実施しており、以下報告者のみを示す。 第1回:篠原 健一 教授、第2回:上野 継義 教授、第3回:具 承桓 教授、第4回:森永 泰史 教授×三輪 卓己 教授[ダイアローグ]、第5回:金光 淳 准教授、第6回:伊吹 勇亮 准教授、第7回:植木 真理子 教授、大室悦賀 教授
この他、学部独自に入学後の学生の「伸び」に関する実感調査や、教員評価における学部平均点と個人点を3つの領域、設問項目ごとに3年間分を個別に通知し、教員各自が学部教育の平均とどのくらいの距離にあるかを確認することにより、授業改善に取り組むよう促している。

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