総合生命科学部 生命科学セミナー開催(3月3日)

最先端の生命科学研究に触れてみませんか

森 浩禎 教授(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 システム微生物学)

「大腸菌を用いたシステム生物学」

 発見されて100年以上、20世紀後半の分子生物学における爆発的な研究の発展に大きく貢献した大腸菌であるが、我々はどれほどこの生物を知っているのだろうか。地球上で最も解析の進んだ生物種の一つであるが、生命の完全理解にはほど遠いのが現状である。未だに設計された育種が非常に難しい。
 一遺伝子を欠失させても、通常明確な表現型を示すことは少ない。これは、代替経路などが、その欠失を補償することで、欠失の効果を消してしまう。この問題に迫る方法として、合成致死解析は、その歴史も長く実績のある方法である。合成致死とは、一遺伝子の変異では致死性を示さないが、もう一つの変異が加わることで致死性(遺伝的相互作用)を示す組合せを調べることである。きわめて単純であるが、この解析をシステマティックに網羅的に進めることは非常に難しい。大腸菌は、4000以上の遺伝子を持つ。これらの全組合せによる2重欠失株を作製し、その表現型を解析すると、その数は1600万を超える。この解析を可能にする為に、2種類の遺伝子欠失株ライブラリーを構築し、その欠失を接合により一つのゲノム上にまとめて、2重欠失株を作製する方法の開発を進めてきた(1, 2)。システマティックな2重欠失株作製による遺伝的相互作用解析は、生物学的に豊かな情報をもたらす解析の一つとして、酵母やC. elegans、がん細胞等で勢力的に進められているが、その現状と問題点を紹介しながら、大腸菌を用いた解析の現状と今後の展望を紹介する。
 この目的の為に新たな欠失株ライブラリーを設計したが、分子barcodeとして機能する20塩基の配列を新たに導入した。この配列を用いると、欠失株全てを混合した状態で、それらのpopulation変動を、次世代型シーケンサーで定量的に解析を行うことを可能にした。合わせて紹介する。

1. Butland G, et al.,(2008)eSGA: E. coli synthetic genetic array analysis. Nat Methods 5:789-795.
2. Typas A, et al.,(2008)High-throughput, quantitative analyses of genetic interactions in E. coli. Nat Methods 5:781-787.

 なお、本セミナーは、科研費:基盤研究(C)課題番号:15K07774「てんかん~うつ・不安障害に至る分子発症メカニズムの解明」の助成を受けています。
日 時 2016年3月3日(木) 16:00~17:00(15:45開場)
場 所 京都産業大学 15号館1階15102セミナー室
交 通 ※キャンパス内に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
交通アクセス
備 考 事前申込不要・入場無料
PAGE TOP