理学部 物理科学科セミナーのお知らせ

下記のように物理科学科セミナーを開催します。

日時 2010年2月22日(月)13:30〜
場所 京都産業大学理学部 会議室(2号館3階)
講演者 福村 桂吾 氏 (Research Associate, University of Maryland)
題目 AGN・クエーサー・ブラックホール連星系におけるUV・X線の吸収体:磁気降着円盤風による統一的理解(の試み)
対象 本学学生・教職員

講演概要

 ブラックホールを中心に持つ様々な天体(活動銀河核=AGN、クエーサー、系内ブラックホール連星)で、ブルーシフトした吸収線が一般に検出されている。これらは、比較的高密度な”吸収体プラズマ”が”中心核近傍から噴出され(アウトフロー・ウィンド)、視線上の輻射を(部分)吸収していると解釈されるが、その詳しい物理はよく分かっていない。一方、セイファート1型と呼ばれるAGNのX線吸収スペクトル解析からは、柱密度分布(Absorption Measure Distribution = ADM)がイオン電離度で4桁にも渡りほぼ一定であることが分かっており、これは大局的な吸収体密度分布がn~1/rであることを示唆する。更に、中階電離した鉄イオン(FeXVII)が〜数百km/sec、高階電離した鉄イオン(FeXXV)は〜数千 km/sec程度の典型的な視線速度成分を持つ。今回我々は、これらの天体に対しおそらく普遍的に存在しているとされる磁気降着円盤風(ディスク・ウィンド)を吸収体と見なすことにより、AMDを含めて様々な観測事実や特徴的な現象を再現・予言することを試みた。本質的な物理を探るために、定常・軸対称の自己相似・磁気流体(MHD)円盤風モデルを用いて吸収体構造を2次元モデリングし、その分布を光電離コード・XSTARにカップリングさせることによって、輻射場(中心核からの放射)とプラズマ流(円盤風)の相互作用を1次元的に調べた。その結果、一般的なAGN環境に基づいた計算では、AMDが一定となり、観測される典型的な吸収線データを上手く説明出来ることが分かった(IRAS13349+2438, MCG-6-30-15,NGC3783/5548/7469)。加えて、最近報告されているクエーサー(APM08279+5255など)からの高柱密度・高速度アウトフロー(v/c~0.04-0.6)を伴うUV・X線吸収線もこのモデルで再現可能である。この発表では、これらのUV/X線観測データを踏まえて、「磁気円盤風で解釈する吸収体の物理」について紹介・提案する。

物理科学科 談話会世話人

 
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