物理科学科セミナーご案内(2009年3月11日)
下記のように物理科学科セミナーを開催します。
奮ってご参集下さりますようご案内申し上げます。
日時 | 2009年3月11日(水)13:30〜14:30 |
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場所 | 京都産業大学理学部会議室(2号館3階) |
講演者 | 徳永 正晴 氏(京都産業大学理学部非常勤講師)(北海道大学名誉教授) |
講演題目 | 量子常誘電体SrTi16O3の同位元素18O置換強誘電性相転移 |
対象 | 本学教員・学部生・大学院生 |
講演概要
変位型強誘電性相転移の機構は横波光学格子振動モードのソフト化として理解されている。調和振動だけでは振動数の温度変化は生じないから、ソフト化の理解には非調和振動の導入が必要である。非調和格子振動系において、ソフトモードは高温ではモード間結合により他のモードに支えられて安定化している。ソフト化は、結合した相手モードの振幅が減少することによる力学的不安定化として記述されている。SrTi16O3(STO)の量子常誘電性は、この振幅の減少が極低温で零点振動により抑制され、T=0までソフト化しないと理解することに起因する命名である。最近、STOは同位元素18Oによる置換で強誘電性相転移をすることが発見された。この結果は、これらの概念の延長では、「零点振動数の減少によってこの抑制が緩和される」、と理解される。このセミナーでは、「 以上の零点振動数減少率でSrTi18O3の相転移温度Tc=24Kが説明できるのか?」、を理論的・数値的に調べた結果を報告する。ソフト化の理論としてはSelf-Consistent Phonon(SCP)近似が用いられてきた。徳永は1987年にこのSCP理論を、遍歴電子系の弱強磁性に関する守谷理論をヒントにした形式に書き直した。この形式を使い、実験値として、(1)SrTi16O3の古典相転移温度30K、(2) 18Oの置換率x=xc=0.33での相転移温度Tc=0、を代入することにより、SrTi18O3のTcをパラメータを使わずに数値計算で求めることができる。ただし、換算質量のx依存性は、理論的には決められないので最も単純な仮定を導入した。
物理学科談話会委員