数理科学科談話会のご案内(2007年10月31日)
以下の要領で数理科学科談話会を開催いたします。
日時 | 2007年10月31日(木)15時30分〜16時30分 |
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場所 | 京都産業大学 2号館 会議室 |
講師 | 山上 敦士(京都産業大学) |
講演題目 | 整数論への複素関数論からのアプローチについて ―定理「すべての自然数は4つの平方数の和で表される」をめぐって |
講演要旨
整数論の研究において, 複素関数論の果たす役割は非常に大きい。扱われる関数でよく知られたものとしては, 楕円関数やテータ関数, あるいは保型形式とよばれる関数がある。
この講演では、整数論への複素関数論からのアプローチが非常に強力で有効であることの紹介として, Lagrange (ラグランジュ) が 1770 年に代数的な方法で証明した「すべての自然数は必ず4つの平方数の和として表される」という定理に対し, 1830 年頃 Jacobi (ヤコビ) が, テータ関数とよばれる複素関数を用いて与えた解析的な別証明について紹介したい。
講演の前半では, Lagrange による代数的な方法を用いた証明を紹介する。ここで用いられるのは, 初等整数論の基本である整数の整除関係と平方剰余の理論であり, 基本的にはある代数方程式を巧みに式変形して定理を証明する。
講演の後半では, テータ関数のフーリエ展開の係数を用いた解析的な証明の概略を述べる。この証明によれば, すべての自然数が4つの平方数の和として表されることだけではなく, その表し方が何通りあるかまでわかってしまう。この事実は代数的な方法では追究できなかったことであり, 整数論の研究にとって, 複素関数論が非常に強力な役割を果たすことを物語っている。
もし時間があれば, 複素関数論 (とくに保型形式論) と関連したものとして, 最近著しく発展している p 進保型形式論についても触れたい。
数理科学科 談話会委員