数理科学科談話会のご案内(2007年3月1日)
終了致しました
以下の要領で数理科学科談話会を開催いたします。
日時 | 2007年3月1日(木)15時〜16時 |
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場所 | 京都産業大学 2号館3階会議室 |
講師 | 成田宏秋氏(大阪市立大学数学研究所COE) |
講演題目 | 四元数ユニタリー群Sp(1, q) 上の保型形式の具体的構成とその数論的考察 |
講演要旨
保型形式の最も古典的な例は楕円保型形式であり、これは複素上半平面上の正則関数でSL(2,R) の数論的部分群に関する「保型性」という豊富な対称性を持つものとして定義される。この楕円保型形式は楕円関数にその起源があり当初は整数論の研究対象として強く認識されてはいなかったが、戦前戦後辺りのヘッケやジーゲル等の仕事により、そのフーリエ展開の展開係数、つまりフーリエ係数や、フーリエ係数から作られるディリクレ級数、即ち保型L-関数が数論的な興味の対象として本格的に意識されるようになった。他方、これはリー群SL(2,R) 上の関数と見なすことができ、しばしばSL(2,R) の表現論の立場からも研究される。実際、楕円保型形式はSL(2,R) の正則離散系列表現を生成する保型形式と理解できる。
現在は様々なリーマン対称空間あるいはそれに対応する半単純リー群上の保型形式が考えられており、それらについてもフーリエ係数やL-関数の数論的研究を行うことは自然な問題意識である。本講演では、符号(1+, q-) の四元数ユニタリー群Sp(1, q)(あるいは四元数双曲空間) 上の保型形式で、「四元数離散系列表現」を生成するという表現論的特徴づけを持つものを考える。まずこの保型形式の具体的構成をいくつか与える。そしてそのうち、「テータリフト」というテータ級数による保型形式の構成の一般化と言うべき方法で作られるSp(1, 1)上の保型形式に注目し、これに関し村瀬篤氏との共同研究で得たL-関数やフーリエ係数についての最近の研究成果等を概説する。
数理科学科 談話会委員