高谷康太郎 准教授

理学部 物理科学科

山縣淳子 准教授

もともと「質量」はなかった。その誕生の物語を紡ぐ。

ビッグバン直後、あらゆる素粒子は質量を持たず、光速で自由きままに動き回っていた。そして100億分の1秒後、膨張した宇宙が1000兆度まで冷えたところで突然、「相転移」が起こる。気体から液体に相転移した水がプールを満すように、ヒッグス粒子が空間に溢れ出し、素粒子の行く手を遮り始めた。このヒッグス粒子にまとわりつかれた素粒子の「動きにくさ」が、質量の起源だといわれている。しかし、話はここでは終わらない。実は、ヒッグス理論で説明できるのは物質の質量のほんの1%ほど。実際の原子核は、ヒッグス理論で説明できる質量よりも100倍も重いのだ。では、残り99%の質量はどこからやってくるのだろう?謎に近づく手がかりは、南部陽一郎博士が提唱した「自発的対称性の破れ」に関する理論にある。京都産業大学の山縣准教授は、この理論を証明するため、中間子と原子核の相互作用について研究。世界の加速器実験チームと連携しながら、質量の謎の解明に向けたアプローチを続ける。

もともと「質量」はなかった。
その誕生の物語を紡ぐ。

ビッグバン直後、あらゆる素粒子は質量を持たず、光速で自由きままに動き回っていた。そして100億分の1秒後、膨張した宇宙が1000兆度まで冷えたところで突然、「相転移」が起こる。気体から液体に相転移した水がプールを満すように、ヒッグス粒子が空間に溢れ出し、素粒子の行く手を遮り始めた。このヒッグス粒子にまとわりつかれた素粒子の「動きにくさ」が、質量の起源だといわれている。しかし、話はここでは終わらない。実は、ヒッグス理論で説明できるのは物質の質量のほんの1%ほど。実際の原子核は、ヒッグス理論で説明できる質量よりも100倍も重いのだ。では、残り99%の質量はどこからやってくるのだろう?謎に近づく手がかりは、南部陽一郎博士が提唱した「自発的対称性の破れ」に関する理論にある。京都産業大学の山縣准教授は、この理論を証明するため、中間子と原子核の相互作用について研究。世界の加速器実験チームと連携しながら、質量の謎の解明に向けたアプローチを続ける。

物質が質量をもつ謎の解明に挑む。

いったい、質量を生み出しているものは何だろう? そもそも質量って何? この疑問に正面から答えようとしたのが、南部陽一郎博士の「自発的対称性の破れ」の理論です。自発的対称性の破れとは、時空のエネルギーが低くなることで相転移が起こり、時空がそれまでと異なる性質をもつことを指します。例えば物は、水蒸気中よりも水中の方が動きづらくなります。自発的対称性の破れによって、時空に“水蒸気から水へ”のような相転移が起き、物質がそれまでと異なる性質を持ち動きづらくなる、それが質量の起源です。

原子核が実験室。その中での素粒子を追う。

物質を分子から原子、原子核、さらに陽子や中性子と細かく分割していくと、最後はクォークと呼ぶ素粒子に行き着きます。クォーク自体の質量は、ヒッグス機構で説明できますが、3つのクォークでできている陽子の質量は、ヒッグス機構から導かれるクォーク質量の合計にはなりません。実際には、その100倍も質量が大きいのです。ここには、クォークの持つ「カイラル対称性※1」の自発的破れが関係しています。カイラル対称性が破れることで、その場がクォークと反クォークで満たされ、そのことが陽子、中性子を動きづらくし、大きな質量を生み出しています。

  • ※1:カイラル対称性とは、量子色力学においてクォークのフレーバーを右巻きスピン成分と左巻きスピン成分で独立に変換する近似的な対称性である。

実験施設の性能向上に伴い、見えてきたもの。

原子核を構成するのはアップクォークとダウンクォークのみで、それよりも重いストレンジクォークなどは存在しません。通常原子核中に存在しないストレンジクォークをもつK中間子は、原子核内に束縛させることで原子核の密度を何倍も高密度にすると言われています。そのとき、どんな現象が起こるか ————この研究室では、原子核内部に中間子を束縛させる研究を通して質量の謎の解明に挑んでいます。最近は実験施設の性能向上が著しく、ストレンジクォークよりもさらに重いチャームクォークを原子核に入れる実験なども、国内外の実験施設で可能となってきています。

当たり前を疑い覆すのが、物理学の醍醐味。

もちろん、原子核もクォークも、目で見ることはできません。物理学はいわば、目に見えないものを見るための学問と言えるかもしれません。実際、物理学の歴史は、目で見て当たり前だと思われてきた常識を次々に覆してきました。物理学の醍醐味は、そんな当たり前を覆すところにあります。地球が丸いことも、重力の存在も、素粒子の振る舞いも、物理学者が理論を積み上げ、予測してきました。それは、現在も変わりません。4年次の「特別研究※2」では、最先端の物理学研究に触れるなかで、論理的な思考法、結果を予想していく力を身につけてほしい。世界はまだまだ謎に満ちています。見えない不思議が、あなたの挑戦を待っています。

  • ※2:特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

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