総合生命科学部 シンポジウム「しのび寄る感染症の今を識る」開催

 京都産業大学総合生命科学部では、生命科学の研究・教育を通じて「未知なる生命に触れるとともに、実社会を意識した学びで人類と地球の課題に挑む」人材の育成に取り組んでいます。

 本シンポジウムでは、感染症研究の最先端のトピックを、ご紹介いたします。多くの方々のご参加をお待ちいたします。

日時 2015年3月5日(木)
13:30〜17:00 (13:00開場)
会場

京都産業大学 むすびわざ館ホール
むすびわざ館へのアクセス

定員 300名
申込方法 参加無料 事前申込不要

講演1「地球環境の変化とデング熱流行」

国立感染症研究所 ウイルス第一部 室長 高崎 智彦 氏

 デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症で、その病原体であるデングウイルスは日本脳炎ウイルスや黄熱ウイルスと近縁なウイルスである。2010年に初めて200例以上の輸入症例が報告され、2013年には249例が報告された。デング熱は経済発展による都市化と地球温暖化の影響で東南アジアや南アジアなどの流行地域でその流行規模が拡大し、頻度も増加している。デングウイルスを媒介する蚊は、ネッタイシマカとヒトスジシマカであるが、どちらもヒトの住環境で孵化・活動する蚊で、午後から夕方、朝方に活動する蚊である。ヒトスジシマカは広く日本国内に生息し、その北限は岩手県、秋田県にまで北上して夏季には活発に活動している。また2012年以降毎年夏には航空機に紛れ込んで来日?したネッタイシマカが、成田空港において産卵・孵化したという事例も報告されている。デング熱は、第2次世界大戦中の1942年から1945年にかけて西日本で流行した歴史があった。その流行株はデングウイルス1型であった。その後デング熱の国内発生はなかったが、2014年8月に69年ぶりに国内発生が確認された。デングウイルス感染蚊は、代々木公園で発生し、8月に代々木公園でさまざまな活動で訪れた人たちがデングウイルスに感染し、帰宅後各地で発病した。この代々木公園に端を発する流行株はやはりデングウイルス1型であった。この国内流行の詳細と世界のデング熱流行状況、流行拡大の要因について概説する。

講演2「口蹄疫について」

元農林水産省家畜衛生試験場 海外伝染病研究部 部長 徳井 忠史 氏

 口蹄疫は、ピコルナウイルス科アフトウイルス属の口蹄疫ウイルス感染によって引き起こされる偶蹄類動物の感染病である。主な症状は口腔周辺、蹄部周辺に水疱が形成されることにより始まり、糜爛、潰瘍、膿瘍に進行し予後は不良である。口蹄疫ウイルスには7血清型と60以上の血清亜型の存在することが知られている。ウイルスの伝播力は強く、接触感染のほか空気感染することもある。したがって防疫が非常に難しい感染病である。OIE(国際獣疫事務局)では口蹄疫をもっとも重要度の高いリストA疾病に指定しており、日本でも家畜伝染病予防法で家畜伝染病(法定伝染病)に指定している。本病は世界の多くの地域に蔓延しており、特にアジアでは常在化した様相を示している。ここでは、口蹄疫について、疾病の概要、疫学、原因ウイルスの特徴、最近の発生状況及びその特徴、防疫などについて紹介する。

講演3「身近に潜むマダニ由来感染症」

京都産業大学 総合生命科学部 動物生命医科学科 教授 前田 秋彦

 近年、マダニの刺咬による重症熱性血小板減少症候群等新規の感染症が、日本国内で相次いで発生している。これらの感染症の原因となる病原体自体は以前から国内に存在していたが、患者の発生がなかったため認知されていなかった。私たちが居住する京都市は、周囲を山に囲まれた自然豊かな環境にある。したがって、病原体の宿主となる様々な野生動物や、その媒介者である多くのマダニが生息しているものと考えられる。現在、私たちの研究室では、京都市の環境中に生息しているマダニの(病原)微生物保有状況を調べている。この調査の結果、捕獲した約50%のマダニが、日本紅斑熱を引き起こすリケッチアと近縁の病原体を保有していることが明らかとなった。また、日本では報告されていない、人獣共通感染症を引き起こすトゴトウイルスが分離された。これらの結果は、多くの未知の病原体が、私たちの身の周りに潜んでいることを物語っている。

講演4「エボラウイルスとエボラウイルス病」 

長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学分野 教授 安田 二朗 氏

 2014年西アフリカでエボラ出血熱(エボラウイルス病)のアウトブレイクがこれまでにない大きな規模で発生し、現在もまだ終息していません。エボラ出血熱の病原体はエボラウイルスですが、このウイルスがどのように自然界に存在しているのか?なぜ致死性の高い病気を起こすのか?など実は良くわかっていません。適切な感染症対策には正しい知識が必須ですが、その致死率の高さ以外は一般にあまり知られておらず、誤解も多いのが現状です。本講演では、エボラウイルス、エボラ出血熱についての最新の知見をご紹介いたします。

 
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