総合生命科学部 生命科学セミナー開催(2014.02.18)

日時 2014年2月18日(木)
16:00〜17:00
場所 京都産業大学 15号館1階 15102セミナー室
交通アクセス
世話人 京都産業大学 総合生命科学部 伊藤 維昭
 

【講師】猪子 英俊 博士

東海大学 名誉教授 ジェノダイブファーマ(株)代表取締役
京都大学iPS細胞研究所 アドバイザー


【演題】ゲノム時代の個人差対応医療におけるHLAの重要性とHLAタイピング法の進展

 ヒト主要組織遺伝子複合体であるHLA抗原(Human Leukocyte Antigen)は、細菌やウイルスなどの病原体を構成する蛋白由来のペプチドと特異的に結合し、T細胞を活性化する。この過程は、いわゆる自己と非自己(病原体など、自己の組織とは異なる外来抗原)の識別をT細胞への抗原提示(この場合の抗原は、病原体など外来抗原を意味する)を通じて行い、ペプチドが非自己と判断された場合にはT細胞が活性化され、その結果病原体に対するBリンパ球の抗体産生やキラーTによる細胞免疫の免疫応答が誘導されて、病原体が排除される。この免疫応答に深く関わるHLAをコードする遺伝子領域は第 6 染色体短腕部6p21.3に位置し、3.6 Mb (360万塩基対)よりなる。 我々は、HLA遺伝子を対象として、cDNA 及び遺伝子クローニングに着手し、その後HLA全ゲノム領域3.6 Mbのゲノム解読、HLA多型の機能的解析、HLA多型と疾患の相関の分子基盤などの解明を行っている。
 HLA遺伝子は8,000 種類にも及ぶ、類まれな多型(allele)を有している。これらのalleleを決定するためのHLA DNAタイピングは、1)移植における患者とドナーの適合性、2)HLAが発症要因となる疾患の遺伝子診断、3)ペプチドワクチンによる癌治療、4)薬剤副作用の回避のための遺伝子診断、5)法医学分野における個人識別や親子鑑定、など多種多様な臨床現場において広範に用いられ、いわゆるテーラーメイド医療(個人差対応医療)の先駆けとなり、かつ臨床応用に最も成功している遺伝子検査である。しかしながら、従来、これらの多くのalleleを識別しうるHLA DNAタイピングは困難であったが、我々は最近、これらの問題点を解決する、次世代シーケンサー(NGS: next generation sequencer)を用いた精度の高い、高分解能のHLA DNAタイピング(SS-SBT法)を開発した。

 
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