総合生命科学部 バイオフォーラム2013 開催(2013.11.15)

 最先端の生命科学研究に触れてみませんか

日時 2013年11月15日(金)
【開場】14:30〜【開演】15:00〜16:30
場所 京都産業大学 15号館 1階 15102セミナー室
交通 ※キャンパス内に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
交通アクセス
備考 事前申込不要・入場無料・一般の方の参加歓迎
主催 京都産業大学 総合生命科学部

両生類とほ乳類における四肢再生と創傷治癒の関係

講師

東北大学大学院生命科学研究科 教授
田村 宏治 先生

 両生類は、脊椎動物の中でも高い器官再生能力を有する動物群である。四肢は有尾両生類が再生できる器官の一つで、この動物群が四肢を形態ごと再生できることはあまりにも有名である。さらに、四肢のみならず皮膚も高い再生能を持ち、真皮に達する創傷を負っても瘢痕を残さずに分泌腺などの皮膚付属器官を再生する。一方、無尾両生類の一種であるアフリカツメガエルは有尾両生類ほど再生能力が高くなく、変態前のオタマジャクシ期には四肢や尾や脳・脊髄(の一部)など多くの器官を再生できるものの、変態後の成体では多くの再生能力を失ってしまう。ただし、成体になっても皮膚を完全再生することは可能である。

 私たちのグループは長年アフリカツメガエルをモデル動物にして、四肢再生能力が低下する原因を追究してきた。その中で、転写因子Prx1の四肢エンハンサー活性を可視化するトランスジェニック(Prx1-GFP)ガエルを作成し、再生芽形成の初期過程の理解を目指してきた。興味深いことにアフリカツメガエルでは、四肢の発生・再生過程で活性化されるPrx1四肢エンハンサーが、背中の皮膚の創傷治癒過程においても活性化される。このことは、両生類皮膚の創傷治癒が四肢再生の初期過程のそれとメカニズムを共有している可能性を示唆するものである。前述のようにアフリカツメガエルは成体においても瘢痕を残さずに完全に皮膚創傷を治癒(再生)することが可能なので、私たちは、両生類における四肢再生が皮膚の完全創傷治癒の延長上にあるとの仮説を建てて、研究を進めている。

 両生類における完全創傷治癒の理解は、瘢痕形成が避けられない哺乳類の創傷治癒の改善にもつながることが期待される。さらにその先に、哺乳類における四肢再生へとつながる可能性も秘めている。はたして両生類からの知見は哺乳類に応用可能なのか、その論理性と研究の現状について議論したい。

 
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