生命科学セミナー『私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」セミナー』開催(2013.10.21)

日時 2013年10月21日(月)
16:00〜17:00
場所 京都産業大学 15号館1階 15102セミナー室
交通アクセス
世話人 京都産業大学総合生命科学 生命システム学科 伊藤維昭
共催 京都産業大学総合生命科学部、
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

【講師】堀内 嵩 博士

基礎生物学研究所 名誉教授
東海大学医学部 基礎医学系分子生命科学 研究員

【演題】遺伝子増幅(gene amplification)の話

真核生物では、遺伝子増幅の現象は以前からよく知られた現象であり、「rDNA (リボソームRNA)遺伝子」や「ガン遺伝子」の増幅がその典型な例である。しかしその機構についてはこれまで不明であった。以前、我々は大腸菌の複製阻害点の解析をしていたものの、その生理的機能は知ることができなかった時期に、酵母のrDNAの繰り返し構造内にも、複製阻害点が存在することが明らかにされた。それに興味を持ち、酵母のrDNAの複製阻害の欠損変異株を分離し解析したところ、複製阻害がrDNA の繰り返しコピーの増減に必須であることを見出した。これが遺伝子増幅の出会いだった。そこで、がん遺伝子や薬剤耐性遺伝子の増幅の機構解明にも取り組むことになった。rDNA の繰り返し構造が→→→→であるのに対し、がん遺伝子のそれは→←→←である。我々は、この構造から、増幅がdouble rolling circle 複製(DRCR)でないかと考え、酵母染色体上に人為的にDRCRを誘導したところ、確かにがん遺伝子タイプの→←→←構造を有する増幅が起こった。しかも、驚いたことに、それぞれの矢印は、自由に反転することに気づいた。つまり、矢印どうしが自由に反転することから、DRCRでは相同組み換えが飽和しているとしか考えられなかったのである。このことを仮定すると、以前から知られていた遺伝子増幅の過程で起こる、「evolution」と呼ばれる現象、つまり目的のがん遺伝子以外の部分が、増幅が進むに従って除かれていく現象をも、動物染色体に2〜3割占めるトランスポゾン様因子間の自由な組換えによる消失によって説明できるのではないかと考えている。またこれらの実験の中から、テロメアというものが、遺伝子増幅がその原始型であるのではないかとの示唆を得ており、現在その解析を現在進めているところである。最後に遺伝子増幅が生物の進化にも関係している可能性にも触れたい。

 
PAGE TOP