総合生命科学部 バイオフォーラム2013 開催(2013.09.06)

 最先端の生命科学研究に触れてみませんか

日時 2013年9月6日(金)
開場 13:30〜
第一部:14:00〜15:30 第二部:15:45〜17:15
場所 京都産業大学 15号館1階15102セミナー室
交通 ※キャンパス内に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
交通アクセス
備考 事前申込不要・入場無料・一般の方の参加歓迎
主催 京都産業大学 総合生命科学部

【第1部】メダカ耳石変異体からバイオミネラル形成の謎に迫る

講師

東京大学大学院理学系研究科 教授 武田 洋幸 氏

 耳石(平衡石、聴砂)は脊椎動物の内耳に存在し、傾斜や加速度の感知に必要なバイオミネラルで、約9割の炭酸カルシウムとわずかな有機成分で構成されている。これまでニジマスなど比較的大きな耳石を持つ魚類の生化学的解析から、基質タンパク質、構造的足場、無機環境を調節するチャネルなどの因子が同定されてきた。一方で、結晶核の実態や結晶化の機構は謎であった。そこで、耳石の結晶化に関連する新規遺伝子の単離を目的として、私はメダカha変異体に着目した。haは平衡感覚に異常をきたす自然突然変異体で、重力感知の研究に古くから用いられてきた。表現型の解析から、haでは耳石が形成されず、耳石の結晶化機構に異常がある可能性が高いと考えられた。ポジショナルクローニングの結果、原因遺伝子が脊椎動物では単離されたことのない酵素をコードする新奇の遺伝子であることが判明した。


【第2部】脂質メディエーター・スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の初期発生における機能

講師

理化学研究所 生命システム研究センター 研究ユニットリーダー 川原 敦雄 氏

 ゼブラフィッシュは、遺伝学的解析に適したモデル脊椎動物です。我々は、心臓発生に異常を示すゼブラフィッシュ変異体の順遺伝学的解析から、その原因遺伝子であるSpns2が脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の輸送体として機能し心臓前駆細胞の移動を制御していることを明らかにしました。Spns2の分子機能は、ゼブラフィッシュからマウス、ヒトまで種を超え保存されていることが示されています。S1Pは、標的細胞膜上に発現するS1P受容体(S1PR1-S1PR5)を活性化することで生物活性を発揮しますが、初期発生におけるS1Pの機能は十分に理解されていません。

 ゼブラフィッシュは、これまで胚性幹細胞が樹立されておらず、目的の遺伝子を破壊し解析する逆遺伝学的手法をとることが難しい状況でした。我々は、人工ヌクレアーゼTALEN(transcription activator-like effector nuclease)を用いた効率的な遺伝子改変ゼブラフィッシュの作製法を開発し、全てのS1P受容体に対するノックアウト・フィッシュの作製に成功しています。また、CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas systemは、TALENに続く新たな人工ヌクレアーゼとして大変注目されていますが、我々のグループもCRISPR/Cas systemがゼブラフィッシュで機能することを見出していますので、モデル生物の内在性遺伝子の機能解析に大変有用なゲノム編集技術の開発状況についても紹介します。

 
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