生命科学セミナー 開催(2013.07.26)

グルタチオン代謝の制御と抗酸化ストレス応答-GGT 阻害剤の開発とその応用-

演者 平竹 潤 博士
(京都大学化学研究所
生体触媒化学研究領域教授)
日時 2013年7月26日(金)16:00〜17:00
場所 京都産業大学 15号館1階 15102セミナー室
交通アクセス
世話人 京都産業大学 総合生命科学部 生命資源環境学科 寺地徹
共催 京都産業大学 総合生命科学部
京都産業大学植物ゲノム科学研究センター
「核と細胞質のゲノム情報を活用した新しいバイオ技術の開発と作物育種への展開」

要旨

 グルタチオン(γ-L-Glu-L-Cys-Gly, GSH)は、活性酸素種や求電子性薬物など生体異物の解毒に中心的役割を果たす必須の生体成分であり、その枯渇は酸化ストレスの増大を招き、さまざまな病態の原因となる。GSH の加水分解を触媒するγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は、GSH の加水分解を通して細胞にCys を供給する役割を担っており、細胞のGSH レベルを左右することで、細胞の酸化ストレスに影響を与える重要な酵素である。我々は、GSH 代謝におけるGGT の役割に注目し、GGT を特異的に阻害する一連のホスホン酸ジエステル型阻害剤を開発した。その代表的化合物GGsTopTM について、その開発の経緯と応用的価値について述べる。面白いことに、GGsTopTM は10 μM の低濃度で、ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲンやエラスチンの産生を大きく亢進させる活性があり、細胞増殖促進効果や、紫外線による酸化的ダメージの軽減など、さまざまな生理活性が見いだされた。この効果は、GGT の阻害により細胞自身の抗酸化ストレス応答を誘導した結果と考えられる。こうした有用な性質を、新しいアンチエイジング化粧品成分として実用化すべく研究開発を行い、2011年大学発ベンチャー(株)ナールスコーポレーションを設立、機能性化粧品への応用を開始した。アンチオキシダントであるとともに、プロオキシダント酵素としての二面性をもつGGT の創薬標的としての価値についても議論したい。

 
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