生命科学セミナー 開催(2013.04.26)

精子内卵活性化因子の機能解析と生殖補助医療技術への応用

演者 伊藤 潤哉博士(麻布大学獣医学部)
日時 2013年4月26日(金) 17:00〜18:00
場所 京都産業大学 15号館1階15102セミナー室
世話人 京都産業大学 生命資源環境学科 木村 成介
共催 京都産業大学総合生命科学部
科学研究費補助金・新学術領域研究(24112714)
「細胞膜マイクロドメインを足場とする配偶子間認識と膜融合の分子機構
世話人 生命システム学科 佐藤 賢一教授

要旨

 ほとんどの動物において、受精により精子が卵細胞質内に進入すると卵内Ca2+の上昇が起こる.特に哺乳類では、反復的なCa2+の上昇(Ca2+オシレーション)が起こり、この現象は、表層顆粒の放出等の卵活性化に関わる現象、さらにはmRNAの分解および胚性遺伝子の発現等その後の胚発生に必要であ ると考えられている.Ca2+オシレーションは、精子内に存在する精子内卵活性化因子(Sperm Factor, SF)が卵細胞質内に進入することによりイノシトール3 リン酸(IP3)を産生し、IP3 が小胞体(ER)上のIP3 受容体(IP3R)に結合しER に蓄えられたCa2+を卵細胞質内へ放出させることにより起こる.以前よりSF の正体を突き止めるため、多くの研究が行われてきた.2002 年にSunders らは、マウスにおいて精子特異的に発現しているphospholipase Cξ (PLCξ)がSF であると報告した.その後、多くの動物においてPLCξの存在が確認されるとともに、動物種特異的に局在・活性等が異なることも報告されてきた.本セミナーでは、我々が明らかにしてきた動物におけるPLCξに関する最新の知見を紹介するとともに、他種と比較することで動物種特異的な受精機構について明らかにし、ヒト生殖補助医療技術への応用について考察したい.また、重要な生殖補助 医療技術の一つである生殖細胞の凍結保存、特に未受精卵の保存に関して最近我々がマウスを用いて新たに開発した保存法についても紹介したい。


 
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