生命科学セミナー 開催(2012.06.22)

食虫植物における新奇形質の進化:消化酵素と捕虫葉形態

演題 食虫植物における新奇形質の進化:消化酵素と捕虫葉形態
演者 福島 健児 学振特別研究員
(総合研究大学院大学生命科学研究科(基礎生物学研究所))
日時 2012年6月22日 15時00分から16時00分
場所 15号館1階15102セミナー室
世話人 生命資源環境学科 木村 成介(075-705-3113)
共催 京都産業大学総合生命科学部

要旨

 食虫植物は、昆虫捕獲に特化した捕虫葉形態・消化酵素・吸収腺など複合的に機能する新奇形質群を備えることによって、昆虫の栄養源としての利用を可能にしている。被子植物の系統関係は、食虫植物が非食虫植物を祖先として進化したことを示しているが、どのような遺伝的変化が捕虫を可能にした形質群の進化に関与したのかは明らかになっていない。そこで本研究では、消化酵素と捕虫葉形態に焦点を当て、解析結果からこれらの形質の進化過程の推定を試みた。

 これまでの研究で、(1)独立に食虫植物化した分類群間でオルソログ関係にある遺伝子が消化液中の加水分解酵素をコードしており、病害抵抗性遺伝子を祖先として進化した可能性が高いこと、(2)向背軸形成に関与する転写因子のオルソログは袋型捕虫葉において特異な発現様式を示し、向軸側特異的な細胞分裂方向の制御によって袋型捕虫葉独特のパターン形成が引き起こされる可能性が高いことなどを明らかにした。本セミナーでは、これらの形質から見えてきた食虫植物の進化過程について議論したい。

 
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