第11〜16回 生命科学セミナー 開催

第11回 生命科学セミナー

演題 大腸菌熱ショック応答の制御機構: 細胞が蛋白質の恒常性維持(品質管理)に関わる基本ストラテジー
演者 由良 隆 博士
京都産業大学客員研究員 京都大学名誉教授
日時 2012年2月22日(水)16時00分から17時30分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 伊藤維昭(075-705-2972)
共催 京都産業大学総合生命科学部
科学研究費補助金・基盤研究A【Nascent chain(合成途上鎖)の分子生物学】

要旨

 熱ショック(ストレス)応答はあらゆる生物に見られる、細胞の基本的な制御機構である。30年余前京大ウイルス研で演者らが遭遇した現象に始まり、特に最近のフィードバック制御に関する解析の展開につき概説する。

世話人からのコメント

 由良先生は熱ショック応答機構の発見者の一人であり、日本における分子遺伝学の創始者の一人です。現在も現役の実験科学者としてご活躍中です。

第12回 生命科学セミナー

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」第5回セミナー

演題 大腸菌ArfA,ArfBによる終止コドン非依存的翻訳終結
演者 阿保 達彦 博士
岡山大学大学院・自然科学研究科・准教授
日時 2012年3月5日(月) 16時00分から17時00分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 伊藤 維昭(075-705-2972)
共催 京都産業大学総合生命科学部
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

要旨

 翻訳はmRNA上の終止コドンで終結する。何らかの理由で終止コドンを持たないmRNAが生じると,それを翻訳するリボソームはその3'末端まで到達し,立ち往生する。リボソームの停滞は生物にとって有害であり,バクテリアはSsrA RNAに依存する特殊な翻訳機構,trans-translationによってリボソームを解放することが知られている。私たちは大腸菌がtrans-translation以外に少なくとも二つのリボソーム解放機構を持つことを見出した。これら二つの機構について,その発見の経緯を踏まえて紹介したい。

第13回 生命科学セミナー

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」第6回セミナー

演題 小胞体膜上で起こるスプライシングの巧妙な仕組み
演者 柳谷 耕太 博士
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科・特任助教
日時 2012年3月8日(木) 14時00分から15時00分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 伊藤維昭(075-705-2972)
共催 京都産業大学総合生命科学部
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

要旨

 真核生物は膜で覆われたオルガネラを有し、生命活動に必要な生化学反応をそれぞれのオルガネラに分担させている。そのため、真核細胞にはオルガネラの状態を監視し、その恒常性を維持させる機構が発達している。オルガネラの一つである小胞体は分泌・膜タンパク質に異常が生じた場合、その情報は小胞体膜上で起こるmRNAスプライシングを介して核に伝わり、恒常性維持機構が活性化される。このスプライシングは小胞体膜上で起こる非常にユニークな反応であるため、独特の未知な分子機構の存在が示唆されていた。我々は、スプライシングされるmRNA(XBP1u mRNA)の細胞内分布に興味を持って解析を行ったところ、そのmRNAは小胞体膜上に積極的に集積されることを見出した。今回の発表では、その後の解析で明らかになったXBP1u mRNAの小胞体局在化の洗練されたメカニズムについてお話しする。

第14回 生命科学セミナー

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」第7回セミナー

演題 哺乳動物細胞小胞体内におけるジスルフィド結合形成を解析する為の新規アッセイ系の作製
演者 門倉 広 博士
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科・国際リサーチフェロー
日時 2012年3月8日(木) 15時00分から16時00分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 伊藤維昭(075-705-2972)
共催 京都産業大学総合生命科学部
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

要旨

 ジスルフィド結合形成は、多くの分泌タンパク質にとって、立体構造形成上重要な反応ステップである。大腸菌においては、ペリプラズムでのジスルフィド結合形成活性や、分泌タンパク質のペリプラズムへの局在化活性が低下すると、β-ガラクトシダーゼ活性を発現する鋭敏なレポーターが開発されている。このレポーターは、大腸菌分泌タンパク質のジスルフィド結合形成過程や局在化過程の解析に大きく寄与している(1-3)。私たちは、哺乳動物小胞体内におけるジスルフィド結合形成機構の解析を促進する為に、哺乳動物細胞の小胞体で働く同様の系を開発したいと考えた。
 今回、私たちは、蛍のルシフェラーゼに様々な変異を導入したものを、分泌のためのシグナル配列と小胞体内残留シグナルを利用して、小胞体内に局在化させた。これにともない、この改変型ルシフェラーゼの分子内にジスルフィド結合が形成されるとともに、このタンパク質の活性は著しく低下した。一方、改変型ルシフェラーゼを発現するHeLa細胞を、ジスルフィド結合形成の非特異的な阻害剤である、DTT存在下培養すると、この細胞は、DTT非存在下、培養した細胞と比較して、20倍以上のルシフェラーゼ活性を発現した。これらの結果から、本タンパク質は、小胞体のジスルフィド結合形成能力の低下をモニターするための、鋭敏なレポーターとして機能しうることがわかった。本レポーターの利用について議論したい。1. Bardwell JC, McGovern K, Beckwith J. Cell 67:581-9 (1991). 2. Tian H, Boyd D, Beckwith J. Proc Natl Acad Sci USA 97:4730-5 (2000). 3. Kadokura H, Tian H, Zander T, Bardwell JC, Beckwith J. Science 303:534-7 (2004).

第15回 生命科学セミナー

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」第8回セミナー

演題 リファンピシン耐性の仕組み
演者 Dipankar Chatterji 博士
Indian Institute of Science (IIS), Bangalore, India
日時 2012年3月2日(金) 16時00分から17時00分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 嶋本伸雄(075-705-3078)
共催 京都産業大学総合生命科学部
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

要旨

 再び猛威をふるい始めている結核の第一選択薬であるリファンピシンは50年の歴史を持ち、細菌RNA polymeraseのβサブユニットに直接結合して阻害する。しかし、多くの耐性菌が出現し治療は困難になりつつある。耐性菌はすべてβサブユニットに変異をもつので、リファンピシン結合のsteric効果と単純化されており、σサブユニット依存性等それでは説明できない現象は無視されてきた。我々は、リファンピシン耐性に関わると思われるMsRbpAを結核菌近縁株(M. sumegma)から発見した。MsRbpAの作用機構の研究を通して、結核菌の薬剤耐性機構の深みを紹介したい。

第16回 生命科学セミナー

第156回細胞生物学セミナー

演題 a1-Antitrypsinの小胞体内における凝集、フォールディングについて考える
演者 山崎 正幸 先生
(京都大学次世代研究者育成センター・白眉プロジェクト特定准教授)
日時 2012年2月21日(火) 16時00分から17時00分
場所 15号館1階 15102セミナー室
世話人 生命システム学科 永田 和宏(075-705-3134)

要旨

 欧米で2000人に1人が抱えるアンチトリプシン欠損症という病気があります。
 主な症状は若年性肝硬変、肺気腫です。その原因となるアンチトリプシン凝集体の形成メカニズムを解明すること、それが私の英国ケンブリッジ大学での仕事でした。結果、20年来の定説を覆す成果を得る事に成功すると共に、タンパク質凝集メカ ニズムとその疾患に関し新たな概念を発見しました。
 その5年間を振り返りながら、アンチトリプシンが小胞体内でどのようにタンパク質 構造を完成するのかについても考えたいと思います。

 
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