総合生命科学部 第6・7回バイオフォーラム開催報告

 平成22年10月27日(水)、11月10日(水)に本学15号館15102セミナー室にて、第6回および第7回バイオフォーラムを開催しました(要旨は下記参照)。
 バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、開催しております。今回も盛況のうちに閉会することができ、11月24日(水)開催予定の第8回バイオフォーラムもふるってご参加いただければ幸いです。

第6回

 第6回の講演は、講師として、泉井桂先生(近畿大学先端技術総合研究所客員教授・京都大学名誉教授・理化学研究所客員主管研究員)をお招きし、講演をおこなっていただきました。

第1部 C3植物のC4化

 トウモロコシやサトウキビなどのC4植物はイネやコムギなどのC3植物に比べると1.5〜2倍も光合成能力が高いことが知られている。植物の光合成能を高めるために光合成能力の高いC4植物の光合成に関与する酵素のC3植物への導入に取り組んでいる。単一酵素の導入からはじめ、現在ではC4光合成経路の酵素とその代謝中間体のトランスポーター遺伝子を導入する“C4ミニサイクル”プロジェクトを推進している。

第2部 ホルムアルデヒド固定反応系のカルビン回路への付加

 ホルムアルデヒドは人体に有害な物質であり、シックハウスの原因として知られている。これを効果的に除去するために、ホルムアルデヒドを炭素源として固定する代謝経路を持つバクテリアに注目し、これらの酵素を植物の葉緑体で発現させ、ホルムアルデヒドを光合成のカルビン回路に導入することを試みた。得られた植物はホルムアルデヒド耐性を示しホルムアルデヒドを吸収同化出来ることが明らかになった。

 2つの研究は、現在注目されている遺伝子組み換え植物の有効な利用法を示す良い例であり、同様の研究により植物の効果的な利用がさらに進むことが期待される。

第7回

 第7回の講演は、講師として、本学総合生命科学部生命資源環境学科の河邊昭准教授、同 木村成介准教授が講演をおこないました。

講演要旨

総合生命科学部生命資源環境学科准教授 河邊昭
「シロイヌナズナ近縁種の動原体およびその周辺領域の進化的解析」

 動原体は細胞分裂の際に染色体を正確に娘細胞に伝えるために必要不可欠なものであり、遺伝情報の子孫への伝達という重要な役割を担っています。多くの生物では動原体は全ての染色体で同じ配列が存在することが知られています。しかし、シロイヌナズナの近縁種であるハクサンハタザオ等では、少なくとも3種類の動原体反復配列が存在し、種や地域集団が違うと染色体特異性は異なります。この複数の配列が存在する状態は移行期で有ると考えられ、幾つかの配列が現在その数を増やしていることが示唆されました。また動原体配列の染色体を超えた移動はすでに存在する動原体領域の中で起こることが明らかになりました。

総合生命科学部生命資源環境学科准教授 木村成介
「ガラパゴス諸島に固有の野生トマトに観察される葉形態の自然変異の発生機構」

 進化論で有名なダーウィンはガラパゴス諸島で2種類の野生トマトを見つけました。この2種の野生トマトは近縁であるにも関わらず、葉の形態が大きく異なります。この葉の形態の多様性が生じる仕組みについての研究内容が発表され、 PETROSELINUM (PTS)と呼ばれる新規のホメオボックス遺伝子が強発現し、葉の複雑度を決定している転写因子であるBIPの作用を阻害することで引き起こされていることが明らかとなりました。

 
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