通訳サポート事業参加の感想

イタリア語専修4年生 舩坂 留佳

 今回の通訳サポート事業を通して、日本にいても、普通に日本人として、のほほんと暮らしていたら体験できなかったであろうことを、イタリア語を学んでいたことにより体験することができた。

 

 それは、日本の職人さんとイタリア人デザイナーとの間に入り通訳をして“イタリアと日本の文化交流をする”ということが貴重な体験であることはまず大前提としてあるが、その他に、“日本の伝統工芸に生で触れて学ぶ”ということ、“その道に通じる職人さん達と知り合い・交流する”ということ、そしてデジタル化が進む今日であるが“人と人とが関わる仕事は温かい人間味に溢れ、やはり素晴らしいものである”ということである。

 

 私は以前から陶芸には少しばかり興味があったのだが、ただTVや本などで見て“楽しそう、自分もこんな作品が作ってみたい”と思う程度で、実際に工房に出向くでもなく陶芸体験に参加するでもなく、自ら行動することはなかった。

 

 しかし、この事業を通して、その道では日本一とも言われるベテランの職人さん達と知り合うことができ、陶芸に関する専門的なことを教えていただいて、自分の興味と知識を深めることができた。その他にも、私の中での勝手なイメージで、こういった伝統のある陶芸家の方は頭が固く職人気質で、自分が余計なことをしたら「素人が手を出すな」と言われるのではないかとか、若いイタリア人デザイナーの方がオシャレな私服で工房にやって来て、そのまま作業に取り掛かり「靴が汚れちゃうからビニール袋みたいなものはない?」と言った時は「チャラチャラしているからだ、ちゃんと作業着を着んか」と怒鳴られるのではないかと覚悟をしていたのだが、実際には全くそんなことはなく、職人さん達はみんな物腰が柔らかくやさしい笑顔をしていて、他愛のない会話を通して“こんな素晴らしい人間性を持つ方々だからこそ、素晴らしい作品が出来上がるのだ”ということを感じることができた。

 

 そして“伝統産業を後に伝えていくことがとても大切だ、絶やしてしまってはいけない”という、様々な人々によって何度も言われてきた当たり前のことを、その現場を生で見て、いまさらながら心の奥底からひしひしと感じた。特にそれはベテランの職人さん達や芸術大学の学生さん達と話していて感じたことであるが、私にとって今回の事業で深く考えさせられたことは、“イタリアと日本の文化交流”についてというよりは、“日本の伝統文化産業の今後”についての方が大きかった。

 

 この事業を通して、私がやってきたことは全くもって小さなことであり、本当に彼らの役に立てたかどうかは疑問である。事業が終わって感謝の言葉をかけられた時は、逆に申し訳ないと思ってしまったくらいである。しかし、そんなちっぽけなことでも、日本の伝統文化や日本とイタリアの文化交流に貢献できていれば大変幸せなことであり、そんな大きな成果でなくとも、私の言葉が誰かの心に残っていてくれれば嬉しいと思う。

 
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