体験レポート

中小企業の可能性をさぐる(2009年度)

国際関係学科3年 下竹 雅絵

 受身の授業ばかりで飽き飽きしていた私にとって国内フィールドリサーチはとても刺激のある授業でした。どういう授業かを簡単に述べると、自らでテーマを定め、調査し、実際に企業に赴き、実状についてインタービューをし、それらをレポートに纏めるというものです。一見、楽しそうな授業に思えるのですが、実際は孤独な作業ばかりで苦難の連続でした。
 私は国際経済や経営に興味があり、また、家電製品が好きだった事もあって、デジタル製品の部品を作っている製造業、特に中小企業について調査しました。慣れない経済用語が羅列された本や中小企業白書を読み、1から経済や企業について勉強することから始めました。1週間に1度、先生にどういう事を学習したかを報告していたのですが、熟知していない事を話すと、必ず先生に突っ込まれて答えに口篭る事が殆どでした。
 協力して下さった企業にも自らアポイントメントを取りました。まず、商工会議所の紹介サイトで企業を調べ、1社ずつ連絡を取りました。勿論、快く協力して下さる企業はほんの僅かで厳しい事も言われました。しかし、簡単に諦めずに熱意を上手く伝えれば、協力して下さる人はいるという事も実感しました。職場で働いている人の生の声が聴ける実態調査はとても貴重な経験でした。しかし、折角協力して頂いたのに、まだ中途半端な知識しか無かった私は在り来りな事しか質問できず、情けない思いをしました。
 また、レポートにも上手く纏められず、結局何が言いたいのか分からないものに仕上がってしまいました。レポートを先生や協力して下さった企業に提出する時は、私の実力の低さを露呈しているようで、本当に悔しかったです。結果的に、私の国内フィールドリサーチは失敗だったのかも知れません。
 ですが、この悔しさは他の講義では味わえないものでした。そして、私の大学の授業で最も印象に残るものの1つになりました。他の学生よりも早く自分自身の方向性が見つかりますし、気になる問題について真剣に取り組む事が出来ますので、皆さんにも是非挑戦して欲しいと思っています。私は3年の演習ではメーカーの国際競争について研究していますが、やはりこの経験はとても生かされています。

担当教員(鈴井 清巳先生)から

 私の指導する国内フィールドリサーチは、モノ造りの現場を実際に調査して、日本の製造業の現状、問題点、将来について考えようというものでした。履修者は下竹さん一人でしたので、彼女と一対一で話しながら事前準備を進め、事後的な調査のまとめとレポート作成の指導をしました。夏休みに行う一番大変な現場(中小企業)の調査は、訪問企業の選択、連絡、アポイントメント、礼状の送付、出来上がったレポートの送付に至るまで、全て彼女一人で立派に行ったと思います。
 下竹さんは自分に厳しいので、「本当に悔しかったです」、「私のフィールドリサーチは失敗だったかもしれません」と書かれていますが、私の目から見ると、次のステップに向けて大きな跳躍台になったことは間違いないと思います。準備段階からレポート完成に至るまでに、他の講義では決して体験できず、他の学生がやっていないことを、一人で悩みつつもやりとげたのですから、人間として一回りも二回りも大きくなったと思います。
 現在、彼女は私のゼミに所属していますが、国内フィールドリサーチで培った「前に踏み出す力」「問題を発見する力」「考え抜く力」を発揮しつつ、製造業研究グループの中でチームワークの力も身に付けて、更に成長して社会に羽ばたいていくことを期待しています。

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